「む! ほっ! やあっ!」

 目の前を飛び回るヒカリがうざったいのか、ケイブマンティスはカマを振り回してヒカリを狙う。
 ヒカリは自由に飛び回ってカマを軽々と回避する。

 洞窟の道は戦えるほどの広さはあっても、自由自在になんでもできるような広くはない。
 しかしヒカリほどのサイズならば洞窟の道の広さでも十分であった。

「んん!」

 サーシャを先頭にしてケイブマンティスと距離を詰める。
 近づいてくるトモナリたちに気づいたケイブマンティスがカマを振り下ろしてサーシャは盾で受け止める。

 ただ今度は完全に受け止めようとせず、体をねじってカマを受け流す。

「はあっ!」

 トモナリは炎をまとったルビウスでケイブマンティスのカマを弾き返す。
 レベル的にはトモナリもDクラスに挑むのに足りていない。

 しかしレベルアップ時のステータスの伸びも良く、ここまで徹底的にトレーニングで能力値を上げてきたトモナリのステータスは、すでにDクラスゲートに入っても遜色ないものである。
 同ランク帯のモンスターの攻撃としてケイブマンティスは軽い方だ。

 正面から挑んでもトモナリは力負けしなかった。

「おりゃー!」

 ミズキが飛び上がってケイブマンティスに斬りかかる。

「ヒカリ、コウ!」

「まぁーかせるのだ!」

「待ってたよ!」

 ミズキの攻撃はカマに防がれる。
 そのまま弾き返されるが、分かっていたミズキは体を一回転させて上手く着地する。

 続いて攻撃するのはヒカリとコウ。
 完全に注意が逸れた隙にヒカリはケイブマンティスの横に回り込んでいた。

「ボーッ!」

 ヒカリが炎のブレスを放つ。
 頭の横で熱を感じてケイブマンティスは羽を広げて炎を避けようとした。
 
 狭い洞窟の道なので場所の余裕がなく、ケイブマンティスは壁にぶつかりながらなんとか炎をかわした。

「ファイヤーランス!」

 コウは炎を槍のように長く伸ばして放った。
 壁にぶつかってバランスを崩しているケイブマンティスの頭に炎の槍が直撃する。

 頭に火がついてケイブマンティスが叫び声を上げる。
 バタバタとカマを振り回すが、それで火を消すのは無理だろうなとトモナリは思う。

「むふふぅ〜追加でボーッ!」

 頭を振って火を消そうとしているところに、ヒカリが悪い顔をして近づく。
 ヒカリが炎を口から放ち、ケイブマンティスの頭の火と混ざり合う。

 より勢いよく頭が燃え上がってケイブマンティスは壁にぶつかりながら炎を消そうと足掻く。

「いい調子だな」

 上手く連携をとれている。
 トモナリは振り回されるカマをかわして、カマを斬り落とす。

「ミズキ、トドメだ!」

「やああああっ!」

 カマもなく、炎で周りも見えていない。
 完全に隙だらけのケイブマンティスにミズキが刀を振り下ろす。

 ケイブマンティスはカマ以外に硬さもなく、防御力そのものは低い。
 ミズキの刀はケイブマンティスを斬り裂き、ケイブマンティスはデロリとした体液を垂れ流しながら地面に倒れた。

「……やったぁ!」

「ん、ミズキナイス」

 Dクラスのモンスターを倒した。
 自分たちの実力以上の相手を倒せたことにミズキは飛び上がって喜ぶ。

 サーシャもほんのりと笑ってミズキとハイタッチを交わす。

「ふう、なんとかなったね」

 コウはホッと息を吐く。
 ヒカリの攻撃で大きく動いたケイブマンティスに、上手く魔法を当てられてよかったと安心していた。

 思っていたよりも回避の行動が大きくて狙いを修正するのが大変だった。

「トーモナリー!」

 ヒカリが笑顔でトモナリの胸に飛び込んできた。

「ヒカリもよくやったな」

「うっへへぇ〜」

 トモナリも笑顔でヒカリを受け止めて頭を撫でてやる。
 ブンブンと尻尾が振られていて可愛らしい。

「モンスターは一応回収していこう」

 ケイブマンティスのカマはそのまま武器として利用できる。
 買い取ってもらえる素材なのでインベントリに入れておく。

「モンスターは復活しているようだな」

 モンスターが全くいないことも期待していたのだけど、そう簡単にはいかないようである。

「気をつけて進んでいこう」

 一体ずつなら問題もなさそうだとトモナリは戦いを見ていて思った。
 洞窟の道はそんなに広くないが、むしろトモナリたちの方に有利に働く。

 ケイブマンティスの方が大きいために道の広さで戦うならトモナリたちの方が立ち回りやすいのだ。
 道で戦う限りケイブマンティスの大きさなら複数と同時に戦うこともないだろう。

 今回は先手を取れたというところも大きいが、ケイブマンティスに先手を取られなければ大きく不利になることもない。

「いくのだ〜。僕の力を見せつけるのだ〜」

 心配もあったけれど、一体倒して勢いづいた。
 ヒカリが先に飛んでいってケイブマンティスがいないか偵察する。

「いないのだ!」

 洞窟の中は迷路状に道が広がっている。
 意外と曲がり角も多いので警戒すべきポイントはあるのだ。

「えっと……二階への入り口はこの先……」

「むっ! トモナリいるのだ!」

 最初に一体遭遇したあとケイブマンティスはいなかった。
 頭の中に入れてある地図を参考に最短距離で進んできて、二階への入り口も目の前のところまで来ていた。

 地図上では入り口があるのは部屋状の広い空間となっている。
 先に様子を見てきたヒカリが戻ってきて、ケイブマンティスがいることを教えてくれた。