「四人しか入れないから……このメンバーなんだね」

 ゲートに入るとは聞いていた。
 なのに四人だけなのはコウも少し不思議に思っていた。

「ユウトとかマコトじゃなくてよかったの?」

「ああ、ミズキは攻撃力があるし、サーシャは防御力、コウは遠距離攻撃でバランスがいい」

 四人というのは少人数であるが、一つのチームとしては成り立つ人数である。
 三年生の先輩はスケジュールが確保できるか分からない上に経験を積むためという側面やレベル的な制限があるので、どうしても二年生でメンバーを考える必要があった。

 Dクラス難易度のゲートということを考えれば中途半端な力の人は連れていけない。
 となるとメンバーは課外活動部の二年生に絞られる。

 ミズキ、コウ、サーシャの他にもマコトやユウト、クラシマもいる。
 どうしてこの三人だったのか。

 やはりバランスが一番よかった。
 タンク役のサーシャと魔法が使えるコウはトモナリの中でほぼ確定だった。

 後一人をどうするかと考えた時に攻撃役が欲しかった。
 マコトたちも接近アタッカータイプである。

 しかし細かく見ていくとその中でも種類がある。
 マコトは奇襲タイプのアタッカーだ。

 速度とスキルを活かして相手の不意を打つことを得意としている。
 メインのアタッカーというよりサブアタッカーという感じである。

 ユウトはバランスタイプだ。
 全体的な能力のバランスが良くてどんな役割でもそつなくこなせる。

 ただやはり攻撃力としてもバランスタイプなりな能力にはなってしまう。
 それが悪いわけではないけれど、人数が限られる今はもうちょっと攻撃力が欲しい。

 残るはクラシマかミズキである。
 どちらも攻撃力が高いことに大きな違いはないが、この二人にもそれぞれ異なった特徴がある。

 よりパワータイプなのはクラシマだ。
 ハンマーを振り回して戦うクラシマの攻撃はまさしくメインアタッカーとなる。

 対してミズキは刀を使う。
 鋭く研ぎ澄まされた一撃の攻撃力もバカにはならない。

 どこでミズキを選んだか。
 親しさというポイントももちろんある。

 クラシマよりも、同じ班でやってミズキの方が関係性があるからという理由はあるのだが、攻撃力以外のところでミズキだった。
 攻撃力、能力値として力が高いことはいいのだけど、次点で高いものは何か。

 クラシマの場合は体力である。
 タンク役にはなれなくとも多少の攻撃ぐらいは耐え抜ける頑丈さがあるのだ。

 ただその分速度や器用さが低い。
 つまりクラシマの攻撃力を最大限に発揮するのには周りのサポートも必要になる。

 ミズキの場合は速度が高い。
 体力が低くて相手の攻撃を食らうと弱いものの、単体で高い攻撃力を発揮することができる。

「お前が一番相応しかったんだ」

「んん……ありがとう」

 認められような感じがして、ちょっと嬉しくて、ちょっと恥ずかしくてミズキは顔を赤くする。
 考えられる中で最もバランスが良くて対応力も高いメンバー編成である。

 ゲート内に出現するモンスターの種類によってはマコトやユウトがハマる場合もある。
 どんな場合でもベストではないが、多くの場面に対応できる四人であることは間違いない。

「それにユウトだとな……」

「ユウトだと?」

「授業が心配だから……」

「あー、なるほどね……」

 トモナリたちは平日にゲートまで来ている。
 もちろん来ていないみんなは授業を受けている。

 アカデミーは特殊で、こうしたゲート攻略なんかも授業に代えて評価してもらえる。
 あまり授業に出ないのもいけないが、少しぐらいなら成績評価に影響を及ぼさない。

 ただし全く問題ないのでもない。
 授業に出られないという問題があるのだ。

 トモナリは授業に出なくともあまり問題はない。
 勉強もそれなりに頑張っているので学年トップを取っている。

 コウも頭が良くて、サーシャも実はかなり要領がいい。
 ミズキはトモナリをライバル視しているので勉強にもやる気を燃やして、そこそこのところには食い込んでいる。

 マコトは頭も悪くないが、ユウトはギリギリの人だ。
 授業を受けないなんて、下手すると進級のピンチに陥る行為である。

 だからユウトは選択肢に入らなかったなんてところもあるのだった。

「ともかくDクラスゲートは今の俺たちのレベルからすると一つ上の難易度になる」

 Dクラスならレベル41からレベル60ぐらいが攻略適正とされる。
 クラスとレベルの関係はあくまでも目安ではあるが、これまで人類が攻略してきた経験値から導き出されている。

 経験則でもあながち大きく外れたものではない。

「これまでの中でも一番厳しい戦いになるかもしれない」

 トモナリはミズキたち三人のことを見る。
 死のゲートのことを聞いた時にはトモナリも流石に厳しいだろうと感じた。

 しかし頼もしい仲間たちのことを見ると意外といけるかもしれない、なんてことも思い始めてしまうのだから不思議だ。

「みんなの力が頼りだ。頼むぞ?」

「トモナリ君にそんなに頼られたらしょうがないなぁ!」

 ミズキは嬉しそうに胸を張る。
 トモナリのことをライバル視しているけれど、それも力を認めているからだ。

 こうして頼られると悪い気はしない。
 むしろ一人でなんでもやってしまうトモナリが頼ってくれることが嬉しいぐらいである。