「そういえばあれもあるんだよな……」

 ただ防具についてもアテがある。
 五十嵐ギルドでの研修の時にアースドラゴンの精髄を手に入れた。

 加工の仕方は自由であるが、回帰前の記憶ではアースドラゴンの精髄は防具に加工された。
 とんでもない性能を発揮する防具になる可能性が高く、加工ができるかもしれない職人の連絡先ももらっている。

「サブの武器についてもなぁ……」

 やっぱりルビウス以外の武器かなとは思うものの、神切という選択肢もトモナリにはある。
 使わない、使えない可能性はあるものの、神切は強力な武器である。

「まあ剣にこだわることもないしな」

 ひとまずサブの武器が有力候補になる。
 サブの武器も剣にこだわる必要はない。

 槍といった多少距離も取れる武器や、ドラゴンズコネクトの身体能力を活かしてガントレットや鉤爪などの素手に近い武器というのもあり得る。
 もちろん剣でもいいし、斬撃によらず打撃武器なんてものも選択肢には入ってくる。

 回帰前の終末期には武器にこだわっていられないような時もあった。
 武器を直せる職人もおらず、壊れれば近くにあるものを武器として使ったり死んだ人のを仕方なく拝借したりと色々だった。

 トモナリは特にこだわってわがまま言える立場ではなかったので、どの武器も多少は扱える。
 空を飛んで上から攻撃できるという利点があるなら攻撃距離の長い槍がいいかな、なんて思う。

「アースドラゴンの精髄も早く使いたいけどな……」

 武器も必要だが防具も欲しい。
 せっかく手に入れたアースドラゴンの精髄を使いたいところではあるのだけど、さっさと使うわけにもいかない理由がある。

 大きな問題としてはやはりお金だ。
 アースドラゴンの精髄を加工するのには一流の職人の腕が必要となる。

 だが一流の職人の腕を欲する人は多くいる。
 そして一流の職人の腕を欲する人は大体レベルの高い覚醒者であって、つまりはお金を持っているということになる。

 否が応でも一流の職人に依頼するためのお金は高くなってしまう。
 トモナリも学生身分にしては金を持っている方だとは思う。

 しかし一流の職人に依頼するような、現役で活躍している覚醒者の資金力には到底敵わないのだ。
 いざ依頼してお金足りません、なんて情けない話はできない。

「まあ今回はオウルグループにお願いするわけだしな」

「僕も何か欲しいのだ〜」

 ヒカリはいつの間にか起きていてキラキラした目でトモナリのことを見ている。

「ヒカリの装備も面白そうだな」

 一応ヒカリもヘルムを身につけていたりするけれど、その他の装備はない。
 ヒカリも接近戦をすることが多い。

 簡単な装備ぐらいあっても助かる場面はあるかもしれない。
 
「まあ色々あるだろうがよく考えておくように」

 ーーーーー

「……8……9……10! ふぅ!」

「お疲れなのだー」

「ありがとう」

 トモナリはバーベルを置いて、ヒカリからタオルを受け取る。
 最近アカデミーの中でもトモナリとヒカリは目立つようになってきてしまった。

 元々ヒカリの存在は目立っていたのだけど、トレーニングをしていても多少落ち着かない感じになってきた。
 そこでトモナリは課外活動部の部室にもしっかりしたトレーニング機材を置いてもらうことにした。

 あまり使っていなかった倉庫がわりの部屋を片付けて課外活動部専用のトレーニングルームを作ってもらったのだ。
 一年もの間トレーニングをしてきた。

 回帰したばかりの時の体は細くて見ていられないぐらいだったが、今のトモナリはかなりがっしりとしている。
 あまり筋肉を大きくするつもりはないけれど、少し見栄えのする体になったものだと鏡の前で腕に力を込めてみる。

「むん!」

 ヒカリもトモナリの真似をして力こぶを作ってみようとする。
 体の作りが違うので力こぶはできずに、可愛らしいポーズというだけである。

「アイゼンはいるか?」

「お疲れ様です、フクロウ先輩」

 課外活動部トレーニングルームにカエデが入ってきた。
 二年生の時にはよく顔を出していた先輩方も、三年生になって忙しくなったのか顔を出す頻度が少し減った。

 カエデは覚醒者としてオウルグループに行くことがもう決まっているから三年生の中でも余裕がある。
 だからちょいちょい顔を出して見にきてくれる。

「アイゼン、少し話があるんだけどいいか?」

「ええ、大丈夫ですよ」

 カエデについて行って会議室に場所を移す。
 ヒカリは移動の間に持ってきたリンゴジュースを飲んでいる。

「お前に少し頼みたいことがあってな」

「頼みですか? 先輩の頼みならできることはしますよ」

 カエデにはお世話になっている。
 魔力抑制装置のこともそうだし、課外活動部の活動でもチラチラとオウルグループの資金力の後ろ盾が見えていた。

 カエデがいるからこその支援であることは間違いない。
 お世話になっていることは確かなので、トモナリができることならお願いぐらい聞くつもりである。

「ふっ、頼もしいな」

 ただオウルグループが後ろにいるはずのカエデが自分で解決できずに、お願いしてくることとはなんだろうとトモナリは思う。