「き、岸晴香です! よろしくお願いします!」

 スカウトを終えて今年の課外活動部のメンバーが確定した。
 ミヤマエやハルカを始めとして個性豊かな子が集まった。

「丹野菜々(タンノナナ)です。よろしくお願いします。職業は鍛冶職人です」

 トモナリが推していた子はハルカの他にもう一人いた。
 それは鍛冶職人を職業に持つ覚醒者のナナだった。

 表面上のステータスにおいて、ハルカもナナもそんなに変わりがない。
 ハルカを誘ってナナを誘わないような理由もなかったので、両者を誘うことになった。

 声をかけるとナナはかなり迷ったようだった。
 数日間考えた末に、最終的には課外活動部に入ることにしてくれた。

 ハルカは小柄で大人しそうな子という印象で、ナナは背が高くて凛とした印象だ。

「自分はアイゼン先輩とヒカリ先輩の舎弟、宮前慶太といいます! よろしくお願いします!」

 結局ミヤマエは勝手にトモナリとヒカリの舎弟を名乗っている。
 別にそんなつもりはないと説明したのだけど、勝手に言うのだから止めようもない。

 自己紹介を聞いた三年生たちが何をしているんだという視線をトモナリに向ける。

「むふー!」

 ヒカリはドヤ顔で腕を組んでいる。
 初めてできた従順な後輩、舎弟に満足そうである。

「それじゃあ腕試し……といこうか」

 カエデがニヤリと笑う。
 入ってきた一年生と腕試しで手合わせするのは、トモナリの時にもやった伝統のようなものである。

 奥のトレーニングルームに場所を移す。

「じゃあまずは俺が行く!」

 緊張したような面持ちの一年生の中でもミヤマエは肝がすわっている。
 誰がやると互いに顔色をうかがう空気を打ち破って前に出てきた。

 ミヤマエは木で作られた剣を手に取った。
 トモナリと戦った時には武器は持たなかったが、ミヤマエの職業は双剣魔師である。

 なかなか字面では分かりにくいけれど、要するに双剣使いがミヤマエに与えられた職業なのである。
 ただ魔師とあるように剣を扱うだけでなく魔法も扱える職業なのだ。

 今はまだ剣の扱いも魔法の扱いも未熟である。
 加えて慣れない双剣もミヤマエはまだ使えない。

 なのでとりあえず今は剣一本だけを手に取っている。

「こっちは誰が行く?」

 去年と同じく二年生から相手になる。
 トモナリが目を向けると、一年生と違って二年生は誰でもいけるという顔をしている。

「俺が行こうか」

 条件は違うものの、トモナリはすでにミヤマエと一度戦っている。
 だから戦うつもりはない。

 トモナリがいかなさそうなのでユウトが志願する。

「おっ、頼むよ」

「去年はボコボコにされたからな」

 ニタリと笑うユウトは去年の恨みを一年生にぶつけてやろうと意地悪なことを考えていた。

「アイゼン」

「なんですか、先輩?」

 ユウトとミヤマエが戦い始めた横でトモナリはカエデに声をかけられた。

「魔力抑制装置が課外活動部分できたんだ」

「量産に成功したんですか?」

「実戦向きにはまだだ。だけど日常の訓練や軽く手合わせで使うぐらいなら軽量化もしながは耐久性も確保できた。課外活動部に導入するのは性能テストみたいなものだ」

 トモナリは普段のトレーニングで魔力抑制装置を使っている。
 他のみんなも使えればなと思っていた。

 ただトモナリが使っているものは試作品であり、正式なものでもない。
 今はより軽くて邪魔にならないように改良をしている最中であった。

 妥協しない姿勢のために時間がかかっていたのだけど、ある程度形になったようだ。

「一年生も入りましたし、いいタイミングですね」

 トモナリも悪い顔で笑う。

「あまり無茶はするなよ? 壊すと高いんだから……」

「もちろんですよ」

「ク、クソー!」

 いい戦いをしていたものの、やはりレベル差があるユウトには敵わずミヤマエは負けていた。

「も、もう一度!」

「ダメ〜」

「なっ……」

「じゃあ次は私がやろうかな」

 次はミズキが前に出る。
 早めにトモナリ以外からも鼻をへし折られておけば調子に乗らなくていいだろう。

「賑やかなやつが入ってきたものだな」

 カエデは思わずフッと笑う。
 鼻はへし折られるけれどミヤマエはめげなくて伸びそうだなとトモナリも思った。