「むふん!」

 目の付け所がいいと褒められてヒカリは嬉しそうな顔をする。
 鍛冶職人の女の子に印をつけて一票を投じておく。

「他には……」

 できれば真面目そうな人がいいなと思いながらも、サラサラとステータスを確認していく。

「むむ? 朝見たのだ」

「あっ、ほんとだ」

 ある生徒のところでトモナリは手を止めた。
 見覚えのある女生徒はヒカリも同じく見覚えがあった。

 それは朝にトモナリとぶつかって道を教えてあげた女の子であった。
 アカデミーの生徒なら当然ながらリストのどこかで出てくることもあるだろうが、特進クラスであったのかと少し驚く。

「岸晴香(キシハルカ)……」

 女の子の名前を見て、トモナリはさらに驚いた。
 朝ぶつかった女の子の名前は岸晴香であった。

 それはトモナリも知っている名前だった。
 トモナリは回帰した知識を使って未来予知ができるように装っている。

 ヒカリの能力で不確定なものだと誤魔化しているが、未来予知のスキルは本当に存在している。
 回帰前において未来予知のスキルを有していたのは岸晴香という覚醒者であったのだ。

「どこかで見たことある顔だと思った」

 朝ぶつかった時にハルカの顔をマジマジと見てしまった。
 それはなんだか見たことがあるなと思ったからだった。

 回帰前に見たのだ。
 トモナリはハルカと親しいわけではない。

 しかし同じ日本人の覚醒者であるし顔ぐらいは見たことがある。
 今の顔はもうちょっと幼さがあるのと髪型が違っていたので、その場で気づけなかった。

「ファーストスキルじゃなかったのか」

 ハルカの職業は星読の巫女。
 おそらく世界でも他にいないような希少な職業である。

 他に例がないので星読の巫女がどういった傾向で成長しているのか不明だが、あまり戦闘タイプでもなさそうだ。
 ファーストスキルは星の加護というスキルで魔力の運用を補助してくれる効果がある。

 未来予知のスキルは最初から持っているものじゃなかった。

「印つけとくか」

 初期の能力値は決して高くない。
 星の加護の効果の高さも分からないし、一見して選ぶ理由はない。

 だけどトモナリはハルカが未来予知のスキルを手に入れることを知っている。
 星読の巫女も鍛冶職人も同じようなもので、大器晩成型のような職業である。

 スキルが揃い、経験を積んでいくと目には見えにくい確かな強みを発揮してくれる。
 今からしっかりレベルアップさせていけば早い段階から活躍してくれる可能性も高い。

 他のみんなが選んでくれるとは限らないけど、トモナリは印をつける。

「こいつはどうなのだ?」

「んー、ちょっとスキルが合わないな」

 特進クラスだけでなく一般クラスの方もちゃんとリストがある。
 サクサク確認を進める。

 見ていると色々な人がいる。
 あるステータスだけが突出している人や珍しいスキルを持っている人など様々だ。

 今のステータスとスキルだけで選ぶのは簡単なことではないけれど、トモナリはステータスとスキルを総合的に見て判断を下している。
 ヒカリがある男子生徒を指差した。

 全体的なステータスは高めで悪くなさそうに見える。
 スキルも悪くない。

 しかしスキルとステータスの相乗効果が薄い。
 スキルを使った結果尖らず平凡な感じなってしまう。

 平均的なことが悪く、尖っていることが良いわけではないけれど、ステータスはある程度伸ばせるので尖っている方が面白い。
 こんな人がいるのだなと見ながら感心してしまう。

 特進クラスの一年生とは今後も先輩として関わることもあるのでついつい眺めてしまいがちになる。

「……まあもうこんな時間だ。また明日、考えることにしよう」

 気づけば日も暮れてきていた。
 多くの人がいるために一日じゃ見きれない。

 今日はここで切り上げて数日に分けて見ていくことになった。