「このままでは一般人に被害が及ぶ。死体を倒すのだ!」
状況把握も大事だが、周りにいる覚醒者ではない一般の人たちを守ることも大事である。
車だけではなく狭い路地や、これから襲撃しようとしているビルからも死体が出てきていた。
トモナリたちはすぐに戦闘に入る。
元がよほど強い人でない限り、死体そのものはそんなに強くないことは分かっている。
爆発はあったけれど、襲撃は死体によるものだ。
これぐらいの相手ならそれほど被害が出るものではないはずだ。
きっとこれで終わりではないとトモナリは思った。
「……連絡が入った! 敵の逃走を防ぐために目の前の敵を処理し終わった第一チームから突入するようだ!」
今回の襲撃チームは大きく分けて三カ所で待機していた。
協力してくれる覚醒者ギルドやアメリカを始めとして、襲撃に積極的な教員たちは第一チームと呼ばれ、ビルに比較的近い位置にいる。
次に復讐に積極的な交流戦参加者たちは第二チームとして、第一チームの後方に配置されていた。
そしてトモナリたち消極的ではあるものの参加している組は第三チームとしてさらに後方にいた。
第三チームの役割はバックアップ的なものである。
他のチームの状況はトモナリたちには分かっていないが、どうやら第一チームは早々と死体の襲撃を片付けてビルに突入するようだ。
「早すぎるな……」
まだ襲撃されてからさほど時間も経っていない。
それなのにもう反撃に出るなんて早すぎるとトモナリは思った。
第一チームは攻撃を行うメインなので、強い覚醒者が集まっていて人数も多い。
その点から考えると早くてもおかしくはないが、ビルに近いことなどを考えるに第三チームに差し向けられたよりも多くの敵が向かっているだろう。
結果的に第一チームも他のチームと同じぐらいの時間がかかってもいいはずなのだ。
多少早いぐらいなら疑問も持たないが流石に早すぎるのだ。
チラリとビルの方に視線を向けると第一チームはビル前の死体と戦い始めている。
「狙われるならどこだ……」
ビルに入った第一チームが狙われるだろうと思い込んではいけない。
警戒の薄い第二チーム、第三チームが狙われる可能性だって十分にある。
終末教ならば何をしてもおかしくない。
むしろ覚醒者を誘拐することを考えれば第二チームを狙うことも可能性が大きい。
「どこが狙いだ……どこに罠が……」
「アイゼン! 後ろだ!」
「後ろ?」
「初めまして」
マサヨシの声に反応して振り向いたトモナリ。
その後ろには白い女の子がいた。
陶磁器のように白い肌をしているだけでなく、髪も眉もまつ毛でさえも白い。
その中で薄いブルーの瞳がトモナリのことを見上げていた。
知らない子である。
第三チームの中にこのような目立つはいなかった。
それどころか近くにいればすぐに気づくような女の子が、広く周りを警戒している戦闘中に真後ろにいたことにトモナリは驚いた。
「うっ!?」
「あなたと会ってみたかったの」
まるで平時のように女の子は微笑みを浮かべ、困惑するトモナリの頭を両手で挟み込むように掴んだ。
「トモナリィ!」
トモナリが危ないかもしれない。
ヒカリが女の子に飛びかかる。
「あなたにも会いたかった」
「にょわ!?」
飛んでくるヒカリの頭を女の子は鷲掴みにした。
「少しお話ししましょう」
「トモナリ!」
「アイゼン!」
「な……」
女の子の胸から何か四角いものが広がり、トモナリたちを包み込んだ。
「……消えた」
黒い魔力の箱にトモナリたちは閉じ込められた。
助けようとイリヤマが箱を破壊したけれど、中にトモナリもヒカリも、女の子もいなかった。
ーーーーー
「離れろ!」
箱に包まれたトモナリは嫌な予感を覚えた。
剣を振ると女の子は飛び退き、黒い箱はガラスでも割れるような音を立てて壊れた。
「……ここは」
「どこなのだ、ここ?」
町中で戦っていた。
それなのに気づくとトモナリとヒカリは見知らぬ部屋の中にいた。
何かの執務室のようで、大きな机や椅子が置いてあり、机の上には書類のようなものがあった。
「高い建物の上……」
窓があるので外が見える。
近くに建物は見えず、遠く下の方にビルがある。
どこかの高い建物の上層階にいる。
もしかしてここは襲撃しようとしていたビルの中なのではないかとトモナリは思った。
「……あんた、何者だ?」
「ふふ、名乗る時はまず自分からって言わない?」
「俺は……愛染寅成だ」
今のところ敵意は感じない。
女の子は笑顔を浮かべながら大きな椅子に座った。
対話ができるなら、少し話し合いを試みてみる。
「私は……そうね、スラーサと呼んで」
「あんたは何者で、なんでこんなことをする?」
「私はあなたたちが終末教と呼んでいる存在よ。あなたとお話がしたくてここに招待したの」
「俺にあんたと話したいことなんてないぞ」
「ふふ、そう怖い顔しないで」
スラーサに敵意は感じないが、なぜか妙な雰囲気を感じる。
何もない時なら少しぐらい会話してもいいのかもしれないけれど、今は戦闘中である。
みんなのことも心配だし、きっとみんなも心配しているはずだ。
状況把握も大事だが、周りにいる覚醒者ではない一般の人たちを守ることも大事である。
車だけではなく狭い路地や、これから襲撃しようとしているビルからも死体が出てきていた。
トモナリたちはすぐに戦闘に入る。
元がよほど強い人でない限り、死体そのものはそんなに強くないことは分かっている。
爆発はあったけれど、襲撃は死体によるものだ。
これぐらいの相手ならそれほど被害が出るものではないはずだ。
きっとこれで終わりではないとトモナリは思った。
「……連絡が入った! 敵の逃走を防ぐために目の前の敵を処理し終わった第一チームから突入するようだ!」
今回の襲撃チームは大きく分けて三カ所で待機していた。
協力してくれる覚醒者ギルドやアメリカを始めとして、襲撃に積極的な教員たちは第一チームと呼ばれ、ビルに比較的近い位置にいる。
次に復讐に積極的な交流戦参加者たちは第二チームとして、第一チームの後方に配置されていた。
そしてトモナリたち消極的ではあるものの参加している組は第三チームとしてさらに後方にいた。
第三チームの役割はバックアップ的なものである。
他のチームの状況はトモナリたちには分かっていないが、どうやら第一チームは早々と死体の襲撃を片付けてビルに突入するようだ。
「早すぎるな……」
まだ襲撃されてからさほど時間も経っていない。
それなのにもう反撃に出るなんて早すぎるとトモナリは思った。
第一チームは攻撃を行うメインなので、強い覚醒者が集まっていて人数も多い。
その点から考えると早くてもおかしくはないが、ビルに近いことなどを考えるに第三チームに差し向けられたよりも多くの敵が向かっているだろう。
結果的に第一チームも他のチームと同じぐらいの時間がかかってもいいはずなのだ。
多少早いぐらいなら疑問も持たないが流石に早すぎるのだ。
チラリとビルの方に視線を向けると第一チームはビル前の死体と戦い始めている。
「狙われるならどこだ……」
ビルに入った第一チームが狙われるだろうと思い込んではいけない。
警戒の薄い第二チーム、第三チームが狙われる可能性だって十分にある。
終末教ならば何をしてもおかしくない。
むしろ覚醒者を誘拐することを考えれば第二チームを狙うことも可能性が大きい。
「どこが狙いだ……どこに罠が……」
「アイゼン! 後ろだ!」
「後ろ?」
「初めまして」
マサヨシの声に反応して振り向いたトモナリ。
その後ろには白い女の子がいた。
陶磁器のように白い肌をしているだけでなく、髪も眉もまつ毛でさえも白い。
その中で薄いブルーの瞳がトモナリのことを見上げていた。
知らない子である。
第三チームの中にこのような目立つはいなかった。
それどころか近くにいればすぐに気づくような女の子が、広く周りを警戒している戦闘中に真後ろにいたことにトモナリは驚いた。
「うっ!?」
「あなたと会ってみたかったの」
まるで平時のように女の子は微笑みを浮かべ、困惑するトモナリの頭を両手で挟み込むように掴んだ。
「トモナリィ!」
トモナリが危ないかもしれない。
ヒカリが女の子に飛びかかる。
「あなたにも会いたかった」
「にょわ!?」
飛んでくるヒカリの頭を女の子は鷲掴みにした。
「少しお話ししましょう」
「トモナリ!」
「アイゼン!」
「な……」
女の子の胸から何か四角いものが広がり、トモナリたちを包み込んだ。
「……消えた」
黒い魔力の箱にトモナリたちは閉じ込められた。
助けようとイリヤマが箱を破壊したけれど、中にトモナリもヒカリも、女の子もいなかった。
ーーーーー
「離れろ!」
箱に包まれたトモナリは嫌な予感を覚えた。
剣を振ると女の子は飛び退き、黒い箱はガラスでも割れるような音を立てて壊れた。
「……ここは」
「どこなのだ、ここ?」
町中で戦っていた。
それなのに気づくとトモナリとヒカリは見知らぬ部屋の中にいた。
何かの執務室のようで、大きな机や椅子が置いてあり、机の上には書類のようなものがあった。
「高い建物の上……」
窓があるので外が見える。
近くに建物は見えず、遠く下の方にビルがある。
どこかの高い建物の上層階にいる。
もしかしてここは襲撃しようとしていたビルの中なのではないかとトモナリは思った。
「……あんた、何者だ?」
「ふふ、名乗る時はまず自分からって言わない?」
「俺は……愛染寅成だ」
今のところ敵意は感じない。
女の子は笑顔を浮かべながら大きな椅子に座った。
対話ができるなら、少し話し合いを試みてみる。
「私は……そうね、スラーサと呼んで」
「あんたは何者で、なんでこんなことをする?」
「私はあなたたちが終末教と呼んでいる存在よ。あなたとお話がしたくてここに招待したの」
「俺にあんたと話したいことなんてないぞ」
「ふふ、そう怖い顔しないで」
スラーサに敵意は感じないが、なぜか妙な雰囲気を感じる。
何もない時なら少しぐらい会話してもいいのかもしれないけれど、今は戦闘中である。
みんなのことも心配だし、きっとみんなも心配しているはずだ。

