「みんな、相手を交代だ!」

 トモナリがドラゴンズコネクトでナインを相手にするのは難しい。
 だが素手で戦うイレブンならばドラゴンズコネクトの武器がない状態でも戦える。

 ならば戦う相手を交換すればいい。
 トモナリがイレブンと戦い、カエデたちにナインと戦ってもらえばいいのである。

「いくぞ、ルビウス! ドラゴンズコネクトだ!」

『任せおれ!』

 トモナリはスキルであるドラゴンズコネクトを発動させる。
 ルビウスがトモナリの胸に吸い込まれていく。

 トモナリの体が淡く光を放って変化が起こる。
 瞳が金に染まり、体に赤い鱗と背中に翼が生えてくる。

 服が破けるからよほどのことがないと使いたくないけど仕方ない。

「いくぞ!」

『はははっ! やはりこのスキルは気分がいいな!』

 トモナリは一気に走り出す。
 ナインがグッと身構えたけれど、狙う相手はナインではない。

 トモナリはナインの横を通り過ぎてそのままイレブンに向かった。

「おらーっ!」

 完全に油断していたイレブンの横っ面にトモナリの拳がめり込んだ。

「あいつを頼む!」

「……分かった!」

 なし崩し的にトモナリが一人で、相手の強者一人を相手取っている。
 本来下級生にそんなことをさせてはいけないが、今はそんなことも言ってられない。

 トモナリを追いかけてくるナインをカエデたちが相手にする。

「うっ……はぁっ!」

 トモナリはイレブンと戦う。
 ただイレブンも強い。

 トモナリの顔スレスレをかすめた拳は風圧で頬が切れそうになる。
 当たれば大きなダメージは避けられないだろう。

 ドラゴンズコネクトを使って能力を引き上げて戦っているのに、それでもイレブンの方が能力が高い。
 だが戦っていて分かったことが一つある。

 ジョンに操られている死体はスキルを使わない。
 純粋な能力の高さと生前の経験のみを使って戦っていた。

 トモナリの記憶ではスキルを使う戦いもしていたはずだが、死体からスキルを引き出すのもまたジョンのスキルであった可能性がある。
 もしかしたらまだジョンは死体からスキルを引き出すスキルを持っていないのかもしれない。

 イレブンとナインがスキルを使えてしまうと勝ち目はなかったが、スキルがないからまだ戦える。
 加えて死体のせいなのか、やや判断が遅い。

 やはり生前の能力全てを活かせているわけではなさそうだ。

「どりゃーなのだー!」

 ヒカリも隙を見てイレブンを爪で斬りつける。
 小さいが、確実に相手の体に傷を増やしていく。

 トモナリも拳ではなく、爪で斬り裂くような戦いにシフトした。
 ドラゴンズコネクト状態のトモナリはヒカリと同じく意識するとシュッと爪が鋭く出てくるのだ。

 ギリギリの戦いを繰り広げる。
 一撃でも喰らうと危ない攻撃をなんとか回避しながら爪で反撃する。

「チッ……らちが明かないな!」

 イレブンの体に傷は増えている。
 普通の人なら影響があるはずのダメージを与えているのに、イレブンの攻撃の激しさには全く衰えがない。

 大きなダメージを与える一撃が必要そうだ。
 けれども強い一撃を放つには、どうしても攻撃前のタメや攻撃後の隙を覚悟せねばならない。

「……どうする」

 状況は刻一刻と悪くなっている。
 新たな終末教も駆けつけて人数不利は大きくなっていて、倒した終末教が死体として起き上がって戦っても相手が減らない。

 加えて戦えば戦うほどに体力や魔力を消耗する。
 相手はたとえ消耗しても、死んでしまえば消耗を気にしない操り人形となってしまう。

「やるしかない……」

 ここでトモナリがイレブンに負ければ戦況はあっという間に傾くことになる。
 多少の無理をしてもイレブンを倒さねばならない。

「やってやる!」

 トモナリはかわしたイレブンの拳に自分の腕を巻きつけるようにして拘束する。

「そう……くるか!」

 普通の人なら腕を引き抜こうとするだろう。
 しかしイレブンはそんなことお構いなしにトモナリを殴りつけた。

「うっ! ……だけど放さないぞ!」

 拘束した腕はそのままに体を逸らした。
 密着状態なのでかわすことはできずに肩を殴られた。

 肩のみならず全身に駆け抜けるような衝撃を受けてトモナリは顔をしかめる。
 それでもトモナリは腕を手放さず、歯を食いしばって殴りつけてきた腕も掴む。

 爪を立てて簡単には振り解かれないようにする。

「くらえ!」

 トモナリは口を大きく開く。
 イメージするのはちょっと前にヒカリが見せたビームのようなブレス。

 力を圧縮して、一気に放出する。
 防御なのか、回避なのかイレブンがトモナリの拘束を逃れようとしたが、トモナリもイレブンを逃さない。

 トモナリの口からビームのようなブレスが放たれてイレブンの胸から上に直撃する。
 突き抜けるように放たれたブレスは、工場の天井も突き破って消えていく。

 これを耐え抜かれたらもうトモナリに勝ち目はない。

「…………やった」

 そのまま少し皮膚がただれただけの顔が現れたらどうしようと思っていたが、イレブンの胸から上はトモナリのブレスによって消し飛んでいた。

「くっ……まだだ……」

 トモナリが手を離すとイレブンが倒れる。
 トモナリもブレスの使用によってかなり力を消耗しているが、ここで弱っている姿は見せられないと踏ん張る。