「出入り口の方だな」

 光が見えているのはゲートがある方向のように見えた。
 トモナリたちは光の方向に移動する。

「おっ、トモナリ、ヒカリ!」

 出入り口となっているゲートの横に二階への扉が出現していた。
 トモナリたちよりも先にユウトたちのグループが到着していて、トモナリとヒカリに向かって手を振っている。

 見た感じでは怪我人もいないし、雰囲気も悪くなさそうだ。
 討伐に問題はなかったようである。

「おっ、ユウトなのだ!」

 ヒカリも両手をフリフリと振りかえす。

「そっちも問題なさそうだな」

「ああ、こっちは怪我人もなし!」

 ユウトは親指を立てる。
 ラットマンの強さなら他のグループも問題はないだろうと思っていた。

 ひとまず、ユウトたちのグループも怪我すらなく討伐を進められたようだ。

「お嬢、ご無事ですか?」

「お嬢と呼ぶな」

「失礼しました……」

「私に怪我はない。あんたも無事そうだね」

 ユウトのグループにはヤマザトもいた。
 チラリと聞いた話ではヤマザトとカエデは生まれた時からの付き合いらしい。

 いわゆる幼馴染といった関係である。
 ヤマザトの父親はオウルグループが抱える覚醒者のリーダーで、フクロウ家とは昔からの付き合いがあった。

 たまたまヤマザトとカエデは同じ年に生まれたために、一緒にいることも多かった。
 ヤマザトが時々カエデのことをお嬢と呼ぶのはそうした関係があるからなのだ。

 なんとなく二人には幼馴染以上のものがあるのではないかとトモナリは見ていた。

「他のグループもきたな」

 先に二階に行くなんてことはない。
 残る二つのグループを待っていると、問題もなく扉の前に分かれたグループが集まった。

 改めて怪我などの状況を確認し、水分補給をしっかり行って二階に向かう。

「変わり映えしないね」

「森のなっかなのだぁ〜」

 二階も一階と変わらず森の中だった。
 変な環境で戦うよりはいいのだけど、少しだけつまらないという感想をミズキは抱いた。

 一階と同じ四グループに分けて攻略を開始する。

「武器持ちか。ただモンスターそのものは変わらなそうだな」

 二階で現れたモンスターもラットマンであった。
 ただ一階との違いもある。

 装備を身につけているのだ。
 錆びた剣や槍、ボロボロの胸当てやヘルムといった、どこから見つけてきたのか謎の古びた装備である。

 大きな変化ではない。
 しかし武器や防具を身につけていることを考慮してちょっと慎重に戦う。

「‘武器の扱いも武器そのものの質も酷いものだな’」

 ラットマンの首をはね飛ばしてジェレミーはため息をついた。
 せっかく武器を持っているのに全くそれを生かせていない。

 扱いが上手くて苦戦させられるのは嫌であるが、振り回すだけでなくもう少し武器らしく扱えないものかと目を細める。
 武器そのものも見た目通りに質が悪い。

 剣ではあるが切れ味が悪くてほとんど鉄の棒のような状態である。
 かなり耐久力も下がっていて、防御するだけでもラットマンの武器は折れてしまったりした。

 戦う側としては粗悪な装備であることに全く問題はない。
 しかし粗悪な装備であることに苛立ちを覚えるような人もいる。

『ゲートが攻略されました!
 間も無くゲートの崩壊が始まります!
 残り1:00』

「早かったな」

 ボスモンスターの出現も無しに、目の前に攻略を終えた表示が現れた。
 想像していたよりも、はるかに攻略が早かった。

「もう終わりなのだ?」

「終わりなのだ」

「らくしょーだったのだ!」

 ラットマンの魔石を回収したトモナリたちはゲートの外に向かう。

「‘忘れたものはないな?’」

 先に進む時は危険があるので他を待ったが、危険もない外に出るのに他のグループを待つ必要はない。
 出入り口となっているゲートに辿り着いた。

「‘では外に出るぞ’」

 忘れ物なんてほとんどすることはないが確認は大事である。
 トモナリたちはゲートを通って外に出る。

「‘おっ、次のお客さんだ’」

「……ここはどこだ?」

 しかし外に出た瞬間に見えた景色は知らないものであった。