「ふぅ……」
「アイゼン?」
誰がやるか。
互いに顔色を窺っているので、トモナリはため息をついて前に出る。
トモナリは剣を抜くとラットマンの体を斬り裂いた。
腹より上、胸からやや下の胴体を真っ二つにしたのだ。
そして頭がある方の胴体の切り口にルビウスを突っ込む。
『ううむ……あまり気分は良くないな』
ラットマンの体に差し込まれてルビウスの微妙そうな感情の声が聞こえてくる。
特に剣の感覚を感じることはないし、戦っている最中なんかは何も思わない。
しかし冷静な状況でラットマンの体の中に差し込まれるのはルビウスも何だかちょっと嫌だった。
トモナリはそれでも軽く剣を剣を動かしてラットマンの体の中を探る。
すると剣先に何か硬いものが当たるのを感じた。
トモナリはさらに剣を差し込んで硬いものをほじくり出す。
「魔石だ!」
ラットマンの体の中から拳ほどの大きさの石が転がり出してくる。
モンスターの魔力が集まって結晶化した魔石であった。
「‘別に丁寧に解体する必要なんてないんだよ’」
解体というと必要な部位を傷つけないように、丁寧にモンスターの体を分解していくイメージが強い。
みんなもそんなイメージでラットマンを解体するというから嫌に感じるのだ。
だが今回は別に丁寧な解体など必要ない。
ラットマンの魔石さえあればいい。
魔石がある意味はモンスター、あるいはモンスターの中でも個体によってまちまちなこともある。
しかし多くの場合、魔石は心臓の近くにある。
魔石が欲しいだけなら他の部分がどうなってもいいので、ざっくりと斬り裂いて魔石だけを取り出せばいいのだ。
最悪の場合はラットマンをバラバラにしたっていい。
「‘そうか……たしかにそうだな’」
トモナリのやり方を見て、みんなハッと気づく。
各々ラットマンをバラバラに解体して魔石を取り出す。
「ほっ」
トモナリはいくつかの魔石を集めるとインベントリから水の入ったペットボトルを取り出す。
魔石に水を振りかけて簡単に血を流すと、ビニール袋を取り出して魔石を入れる。
「‘どうしてわざわざ袋に入れるんだい?’」
アルケスがトモナリの手元を覗き込んで不思議そうな顔をする。
そのままインベントリに入れてしまえばいいのにと思った。
「‘数が多いと面倒だろ’」
モンスターの死体ならば一つずつインベントリに収納することが多い。
それはまとめられないからであり、自体そのものに価値があって必要だからそうするのだ。
今回死体は必要ない。
魔石だけあればよくて、魔石サイズならばまとめることができる。
袋に入れてひとまとまりにすれば袋一つとしてインベントリに収納できてしまう。
一個一個魔石を出し入れする手間も省けるし、インベントリの容量は有限なのでこうしてまとめることでインベントリを圧迫せずに済むのだ。
人数がいるので魔石一つ一つインベントリに入れていっても大丈夫かもしれないが、人数が少ない時などはこうして多くのものを持ち帰る工夫も必要である。
「‘僕のも入れてくれるかな?’」
「‘構わないぞ’」
アルケスは持っていた魔石をトモナリの袋に入れる。
本来こうした戦利品は倒した人のもの、あるいは倒したギルドや国のものとなるのだが、今回争いを避けるために誰がどれほど倒そうが全て回収して各国に均等に分配されることになっている。
「‘それにしてもベテランの覚醒者のようだな’」
ジェレミーが感心したようにトモナリのことを見ている。
ラットマンの解体といい、魔石を集めてインベントリに入れることといい、かなりゲートの攻略に慣れているようだと感じた。
考えや行動に移るまでが自然で、思考が身についている。
ジェレミー自身もラットマンの解体は嫌だと思っていたので、斬り裂いて終わりの方法はありがたいものであった。
「‘日本ではこうしたことも教えるのか?’」
「‘……まあ、そうかな’」
トモナリ以外のマコトも同じくビニール袋に魔石を集めている。
戦う以外での細かな教えというものも習えるならば、トモナリが日本にこだわる理由も理解できるとジェレミーは思った。
トモナリは曖昧に笑って誤魔化した。
実際アカデミーで教えてもらったことではない。
回帰前の経験から知っていてやっていたことである。
マコトがトモナリと同じようにしているのはトモナリが教えたからやっているのだ。
知っていたのでやっています、だと説明も面倒なので習ったことにしておいた。
それからも何回かラットマンと戦った。
変化もなく、特別難しい相手でもなかったので怪我人もなくラットマンを倒すことができた。
「+といっても所詮はFクラスだな」
おそらく十六歳組の実力でも問題ないぐらいの難易度である。
一年先を行く十七歳組にとっては楽なぐらいだ。
「おっと、終わったようだな」
『モンスターが全滅しました。二階への扉が開かれます!』
ラットマンを解体して魔石を取り出していると目の前に表示が現れた。
どうやら他の方向に向かった覚醒者たちが倒したモンスターが最後だったようである。
このゲートは二階があるので次の階層に移動しなければならない。
トモナリが周りを見回すと光の柱が見えた。
そちらに二階への入り口があるようだ。
「アイゼン?」
誰がやるか。
互いに顔色を窺っているので、トモナリはため息をついて前に出る。
トモナリは剣を抜くとラットマンの体を斬り裂いた。
腹より上、胸からやや下の胴体を真っ二つにしたのだ。
そして頭がある方の胴体の切り口にルビウスを突っ込む。
『ううむ……あまり気分は良くないな』
ラットマンの体に差し込まれてルビウスの微妙そうな感情の声が聞こえてくる。
特に剣の感覚を感じることはないし、戦っている最中なんかは何も思わない。
しかし冷静な状況でラットマンの体の中に差し込まれるのはルビウスも何だかちょっと嫌だった。
トモナリはそれでも軽く剣を剣を動かしてラットマンの体の中を探る。
すると剣先に何か硬いものが当たるのを感じた。
トモナリはさらに剣を差し込んで硬いものをほじくり出す。
「魔石だ!」
ラットマンの体の中から拳ほどの大きさの石が転がり出してくる。
モンスターの魔力が集まって結晶化した魔石であった。
「‘別に丁寧に解体する必要なんてないんだよ’」
解体というと必要な部位を傷つけないように、丁寧にモンスターの体を分解していくイメージが強い。
みんなもそんなイメージでラットマンを解体するというから嫌に感じるのだ。
だが今回は別に丁寧な解体など必要ない。
ラットマンの魔石さえあればいい。
魔石がある意味はモンスター、あるいはモンスターの中でも個体によってまちまちなこともある。
しかし多くの場合、魔石は心臓の近くにある。
魔石が欲しいだけなら他の部分がどうなってもいいので、ざっくりと斬り裂いて魔石だけを取り出せばいいのだ。
最悪の場合はラットマンをバラバラにしたっていい。
「‘そうか……たしかにそうだな’」
トモナリのやり方を見て、みんなハッと気づく。
各々ラットマンをバラバラに解体して魔石を取り出す。
「ほっ」
トモナリはいくつかの魔石を集めるとインベントリから水の入ったペットボトルを取り出す。
魔石に水を振りかけて簡単に血を流すと、ビニール袋を取り出して魔石を入れる。
「‘どうしてわざわざ袋に入れるんだい?’」
アルケスがトモナリの手元を覗き込んで不思議そうな顔をする。
そのままインベントリに入れてしまえばいいのにと思った。
「‘数が多いと面倒だろ’」
モンスターの死体ならば一つずつインベントリに収納することが多い。
それはまとめられないからであり、自体そのものに価値があって必要だからそうするのだ。
今回死体は必要ない。
魔石だけあればよくて、魔石サイズならばまとめることができる。
袋に入れてひとまとまりにすれば袋一つとしてインベントリに収納できてしまう。
一個一個魔石を出し入れする手間も省けるし、インベントリの容量は有限なのでこうしてまとめることでインベントリを圧迫せずに済むのだ。
人数がいるので魔石一つ一つインベントリに入れていっても大丈夫かもしれないが、人数が少ない時などはこうして多くのものを持ち帰る工夫も必要である。
「‘僕のも入れてくれるかな?’」
「‘構わないぞ’」
アルケスは持っていた魔石をトモナリの袋に入れる。
本来こうした戦利品は倒した人のもの、あるいは倒したギルドや国のものとなるのだが、今回争いを避けるために誰がどれほど倒そうが全て回収して各国に均等に分配されることになっている。
「‘それにしてもベテランの覚醒者のようだな’」
ジェレミーが感心したようにトモナリのことを見ている。
ラットマンの解体といい、魔石を集めてインベントリに入れることといい、かなりゲートの攻略に慣れているようだと感じた。
考えや行動に移るまでが自然で、思考が身についている。
ジェレミー自身もラットマンの解体は嫌だと思っていたので、斬り裂いて終わりの方法はありがたいものであった。
「‘日本ではこうしたことも教えるのか?’」
「‘……まあ、そうかな’」
トモナリ以外のマコトも同じくビニール袋に魔石を集めている。
戦う以外での細かな教えというものも習えるならば、トモナリが日本にこだわる理由も理解できるとジェレミーは思った。
トモナリは曖昧に笑って誤魔化した。
実際アカデミーで教えてもらったことではない。
回帰前の経験から知っていてやっていたことである。
マコトがトモナリと同じようにしているのはトモナリが教えたからやっているのだ。
知っていたのでやっています、だと説明も面倒なので習ったことにしておいた。
それからも何回かラットマンと戦った。
変化もなく、特別難しい相手でもなかったので怪我人もなくラットマンを倒すことができた。
「+といっても所詮はFクラスだな」
おそらく十六歳組の実力でも問題ないぐらいの難易度である。
一年先を行く十七歳組にとっては楽なぐらいだ。
「おっと、終わったようだな」
『モンスターが全滅しました。二階への扉が開かれます!』
ラットマンを解体して魔石を取り出していると目の前に表示が現れた。
どうやら他の方向に向かった覚醒者たちが倒したモンスターが最後だったようである。
このゲートは二階があるので次の階層に移動しなければならない。
トモナリが周りを見回すと光の柱が見えた。
そちらに二階への入り口があるようだ。

