「‘素敵な提案だと思います。ただ俺は日本が好きなんです’」
日本のシステムも悪くはない。
ここまで築いてきた関係や家族、友達はこれから先に活きてくることにもなるし、日本の方が自由に動ける。
アメリカに移住するメリットもあるが、総合的な利益は小さくて情を振り切るほどのものではない。
「‘ただ俺が活動する時にアメリカと協力できたらと思っています’」
それでもアメリカの力は強大だ。
関係を築いておいて悪いことはない。
「‘……そうか。君のような将来性のある覚醒者と友人になれればこちらとしてもありがたいよ’」
ジェレミーは断られてもわずかに目を細めただけだった。
小国ならともかく、日本のような豊かな国から移ってくる人が少ないことは分かりきっていた。
それでもスカウトする姿勢を見せておけば悪い関係にはなりにくい。
上手くスカウトできればラッキーだし、できなかったからと怒ることもなかったのである。
「‘これからもよろしく頼むよ’」
なんにしてもアメリカが目をつけていることも伝えられた。
むしろホイホイとついてくる方が人として信頼もできないので、断られたことにも好感が持てるほどである。
「‘ちなみに中国からはどんなスカウトをされたんだ?’」
アメリカが目をつけるほどなのだから、中国が目をつけないはずがない。
すでに中国と接触したことは分かっている。
スカウトもされただろうことも分かりきっている。
どんな条件を提示したのか気になった。
「‘メイリンとの結婚です’」
「‘ゲホッ! えっ!?’」
トモナリはサラリと答えたが、思いもしなかった答えにジェレミーは咳き込んでしまう。
金、地位、名誉、アイテムとさまざま考えられる中でまさか結婚だとは誰も考えつかない。
中国がそんな提案をしたというよりメイリンが勝手にした提案のような気もするが、仮に受けていたら本当に実現していただろう。
「‘断ったのか?’」
「‘よく知りもしない女性と結婚する気はないので’」
メイリンとの結婚をだしてくるなんて、かなり荒々しい提案である。
しかし同時に中国の提案の大きさをジェレミーは感じていた。
これから中国を支えることが確実視されているメイリンの伴侶になってもいいとトモナリのことを見ている。
それだけトモナリの能力を買っていると捉えることもできる。
流石に女性を差し出すことはしなくとも、トモナリを取られるわけにはいかないかもしれないと感じ始めた。
「‘モンスターが出たぞ!’」
トモナリが何を気にいるのか。
ジェレミーが会話の糸口を探っていると、先頭を歩いていたブラジルの覚醒者がモンスターを見つけた。
「‘ラットマンだ!’」
現れたモンスターはラットマンと呼ばれる種類のものだった。
大きなネズミのモンスターであるが、特徴として二足歩行で立ち上がってやや人にも近い形態をしていることが挙げられる。
故にマンとついている。
森の奥から二足歩行のネズミが走ってくる。
見えている大きな前歯や毛の生えていない尻尾、造形的に可愛くない顔など、嫌悪を感じさせる見た目をしていた。
「‘モンスターと戦う用意を!’」
ジェレミーが指示を出す。
全くの素人という人はこの場にいない。
みんな素早く武器を構えてラットマンに備える。
「‘俺たちに任せろ!’」
飛び出していったのはブラジルの覚醒者たちだった。
ジェレミーは何か言いたげだったが、違う国の覚醒者を完全に統制することは難しいと諦めた。
難易度的には低いゲートなので、ラットマンもそんなに強くない。
ここは勢いを大切にしようとジェレミーも動き出した。
ブラジルの覚醒者は見ていると自由な感じが強い。
態度だけではなく戦い方も型にとらわれていない。
「‘ちょりゃー!’」
色黒で髪を短く刈り込んだブラジルの覚醒者がラットマンの爪をかわして、剣で胴体を斬りつける。
「‘危ない!’」
ブラジルの覚醒者に後ろからラットマンが迫った。
両手の爪を振り下ろそうとしたラットマンにキュリシーが噛み付いて、そのまま地面に叩きつける。
「‘おっと、助かった!’」
ブラジルの覚醒者はニコッと笑ってアルケスとキュリシーに手を振る。
「かなり荒削りだけど……悪くはないかな」
ブラジルの覚醒者を中心にして、それぞれが立ち回っている。
戦い方としてはとても荒々しいやり方であるが、勢いとリズムがあっていい。
他の国のみんながうまくフォローしているので思ったほど危なさもなかった。
トモナリは全体を見ながらいつでも動けるようにしていた。
ただトモナリが動くまでもなくラットマンは倒されてしまった。
「‘これ解体するのか?’」
「‘うぇ、気持ち悪い……’」
ラットマンは素材として使えない。
肉は臭くてまずいし、皮は柔らかくて加工にも向かない。
なので持ち帰らずその場で魔石だけ抜き取るのが正しい処理である。
しかし戦ってただ殺すだけならともかく、目の前に転がるラットマンは気色悪くて手を出す気にはならない。
みんな解体することをためらっている。
トモナリも気持ちは分からなくない。
日本のシステムも悪くはない。
ここまで築いてきた関係や家族、友達はこれから先に活きてくることにもなるし、日本の方が自由に動ける。
アメリカに移住するメリットもあるが、総合的な利益は小さくて情を振り切るほどのものではない。
「‘ただ俺が活動する時にアメリカと協力できたらと思っています’」
それでもアメリカの力は強大だ。
関係を築いておいて悪いことはない。
「‘……そうか。君のような将来性のある覚醒者と友人になれればこちらとしてもありがたいよ’」
ジェレミーは断られてもわずかに目を細めただけだった。
小国ならともかく、日本のような豊かな国から移ってくる人が少ないことは分かりきっていた。
それでもスカウトする姿勢を見せておけば悪い関係にはなりにくい。
上手くスカウトできればラッキーだし、できなかったからと怒ることもなかったのである。
「‘これからもよろしく頼むよ’」
なんにしてもアメリカが目をつけていることも伝えられた。
むしろホイホイとついてくる方が人として信頼もできないので、断られたことにも好感が持てるほどである。
「‘ちなみに中国からはどんなスカウトをされたんだ?’」
アメリカが目をつけるほどなのだから、中国が目をつけないはずがない。
すでに中国と接触したことは分かっている。
スカウトもされただろうことも分かりきっている。
どんな条件を提示したのか気になった。
「‘メイリンとの結婚です’」
「‘ゲホッ! えっ!?’」
トモナリはサラリと答えたが、思いもしなかった答えにジェレミーは咳き込んでしまう。
金、地位、名誉、アイテムとさまざま考えられる中でまさか結婚だとは誰も考えつかない。
中国がそんな提案をしたというよりメイリンが勝手にした提案のような気もするが、仮に受けていたら本当に実現していただろう。
「‘断ったのか?’」
「‘よく知りもしない女性と結婚する気はないので’」
メイリンとの結婚をだしてくるなんて、かなり荒々しい提案である。
しかし同時に中国の提案の大きさをジェレミーは感じていた。
これから中国を支えることが確実視されているメイリンの伴侶になってもいいとトモナリのことを見ている。
それだけトモナリの能力を買っていると捉えることもできる。
流石に女性を差し出すことはしなくとも、トモナリを取られるわけにはいかないかもしれないと感じ始めた。
「‘モンスターが出たぞ!’」
トモナリが何を気にいるのか。
ジェレミーが会話の糸口を探っていると、先頭を歩いていたブラジルの覚醒者がモンスターを見つけた。
「‘ラットマンだ!’」
現れたモンスターはラットマンと呼ばれる種類のものだった。
大きなネズミのモンスターであるが、特徴として二足歩行で立ち上がってやや人にも近い形態をしていることが挙げられる。
故にマンとついている。
森の奥から二足歩行のネズミが走ってくる。
見えている大きな前歯や毛の生えていない尻尾、造形的に可愛くない顔など、嫌悪を感じさせる見た目をしていた。
「‘モンスターと戦う用意を!’」
ジェレミーが指示を出す。
全くの素人という人はこの場にいない。
みんな素早く武器を構えてラットマンに備える。
「‘俺たちに任せろ!’」
飛び出していったのはブラジルの覚醒者たちだった。
ジェレミーは何か言いたげだったが、違う国の覚醒者を完全に統制することは難しいと諦めた。
難易度的には低いゲートなので、ラットマンもそんなに強くない。
ここは勢いを大切にしようとジェレミーも動き出した。
ブラジルの覚醒者は見ていると自由な感じが強い。
態度だけではなく戦い方も型にとらわれていない。
「‘ちょりゃー!’」
色黒で髪を短く刈り込んだブラジルの覚醒者がラットマンの爪をかわして、剣で胴体を斬りつける。
「‘危ない!’」
ブラジルの覚醒者に後ろからラットマンが迫った。
両手の爪を振り下ろそうとしたラットマンにキュリシーが噛み付いて、そのまま地面に叩きつける。
「‘おっと、助かった!’」
ブラジルの覚醒者はニコッと笑ってアルケスとキュリシーに手を振る。
「かなり荒削りだけど……悪くはないかな」
ブラジルの覚醒者を中心にして、それぞれが立ち回っている。
戦い方としてはとても荒々しいやり方であるが、勢いとリズムがあっていい。
他の国のみんながうまくフォローしているので思ったほど危なさもなかった。
トモナリは全体を見ながらいつでも動けるようにしていた。
ただトモナリが動くまでもなくラットマンは倒されてしまった。
「‘これ解体するのか?’」
「‘うぇ、気持ち悪い……’」
ラットマンは素材として使えない。
肉は臭くてまずいし、皮は柔らかくて加工にも向かない。
なので持ち帰らずその場で魔石だけ抜き取るのが正しい処理である。
しかし戦ってただ殺すだけならともかく、目の前に転がるラットマンは気色悪くて手を出す気にはならない。
みんな解体することをためらっている。
トモナリも気持ちは分からなくない。

