『ダンジョン階数:二階
ダンジョン難易度:F+クラス
最大入場数:68人
入場条件:レベル7以上
攻略条件:全てのモンスターを倒せ』
「ゲートとしての難易度は高くないな」
改めて攻略するゲートの情報を確認する。
二階層のF+ダンジョンゲートが今回トモナリたちが合同で攻略するゲートである。
ゲート情報では特に怪しいところもない。
レベルや入場数の数字が半端ではあるが、別に半端な数字も珍しくはないので気にならない。
ただ最大入場数からすると、交流戦に来ている覚醒者たち全員で入ればいっぱいになってしまう。
引率の教員なんかは一緒に入ることが厳しい。
一部の人は外の警戒で残り、上限人数ギリギリでゲートに挑むことになった。
日本は経験になるだろうと一年生は全員中に入り、二年生の先輩数人が外に残る。
「‘僕も入ることになったから……よろしくね’」
「‘ああ、よろしく’」
アルケスもゲート攻略に参加するようだ。
キュリシーに色々と暴露されて落ち込んでいたが、キュリシーもアルケスが好きであるという事実で気持ちを立て直している。
「‘それでは入っていくぞ’」
今回アメリカが一番初めに入る役割を担った。
やはり開催国としてのプライドがあるのかもしれない。
ただドローンなどでもチェックしているので最初に入る役割もあまり危険ではない。
昔なら最初に入ることにはリスクがあったが、今は人を危険に晒さなくとも先に中を調べる方法があるのでリスクはだいぶ小さくなった。
アメリカに続いてトモナリたちも中に入っていく。
「……広そうな感じがあるな」
ゲートの中は森だった。
木々の間隔がやや広めで明るめだが、木が生えている分視界はやや悪い。
少しひんやりとした空気をしていて、ゲートの中らしく静けさが広がっている。
「‘事前に話していた通りに行動しよう’」
アメリカの覚醒者であるジェレミー・カルトンが中心となって指示を出す。
背の高いガッチリとした体格の男性で、腰の背中側に幅の広い剣を横に差している。
六十人もいる覚醒者たちが一斉に動けば戦いは楽かもしれないが、流石に人数が多くて戦いの経験としては十分なものでなくなってしまう。
今回はそれぞれの国の覚醒者を四つに分けてチームとして、四方向に分かれて攻略していくことになっていた。
「‘ここでも一緒みたいだね’」
「‘そうみたいだな。よろしく、アルケス、キュリシー’」
トモナリはカエデやマコトと一緒で、さらにはドイツのアルケスもトモナリのグループと同じになった。
アルケスもなんだかんだとトモナリのことを気に入ってくれていて、尻尾でも振っていそうな笑顔を浮かべている。
アメリカとブラジルの覚醒者の子とも軽く挨拶をして任された方角に移動していく。
「‘君がアイゼントモナリ君だね?’」
同じグループになったジェレミーがトモナリに声をかけてきた。
一歳違いとは思えないほどジェレミーの身長は高い。
トモナリも低くはないはずなので、ジェレミーの身長が高いのだ。
「‘何かありますか?’」
「‘少し君とは話してみたかったんだ。個人戦でも優勝し、あのメイリンを倒した君とね’」
「‘メイリンのあれは……’」
「‘分かっているとも。だが全く実力もない相手に勝ちを譲る人でもないだろう’」
メイリンに勝ったなんて口が裂けても言えない。
あの勝利はあくまでもメイリンのお遊びのようなものである。
トモナリが困惑しているとジェレミーは笑顔を浮かべた。
「‘それにしても中国側と接触した、という話を聞いたけれど本当かい?’」
「‘えっ? ああ、はい’」
交流が目的で人を呼んでいるが、何もかも自由とはいかない。
ひっそりと監視がついている。
トモナリがメイリンに呼び出されていたこともアメリカは把握していた。
「‘何の話をしたのか聞いてもいいかな?’」
「‘ちょっとプライベートな話なので……’」
気に入ったから婿に来ないかとプロポーズされたと話す勇気はなかった。
トモナリが話を濁すとジェレミーは一瞬だけ険しい目をした。
「‘アメリカは常に優秀な覚醒者を求めている。今活躍している覚醒者でもアメリカに属している者は多い’」
「‘そう……ですね’」
アメリカの覚醒者として活躍している人は確かに多い。
交流戦も提案したのはアメリカが発端であったし、覚醒者の教育やスカウトにも積極的である。
今回の交流戦では中国やカナダといった勢力に押されているが、すでに活動している覚醒者を見ればアメリカは覚醒者大国だ。
「‘もちろん他の国の覚醒者も受け入れている’」
トモナリにもジェレミーが何となく何が言いたいのか分かってきた。
「‘単刀直入に言おう。アメリカに来るつもりはないか? 君ほどの才能があるならば将来は約束されたも同然だ。国も支援を惜しまないし、将来的に大きなギルドを紹介することもできる’」
「‘……魅力的なお誘いですね’」
急なスカウトに驚くばかりだが、アメリカに行くこと自体は悪くないとトモナリは思う。
覚醒者の数が多いというだけではなく、アメリカは国としての影響力も多い。
島国の日本よりも試練ゲートが現れるし、他のゲートを攻略する上でもアメリカの覚醒者や影響力はありがたい。
覚醒者として活動する上での金銭的なリターンも大きい。
ただ競争が激しかったり、覚醒者による犯罪も多かったりと問題が多いこともある。
ジェレミーの言葉はきっと独断でのものではない。
誰かからの指示があってのことだろう。
アメリカ側からのスカウトならばきっと悪いようにはならない。
トモナリは英語も話せるし、デメリット的なものは決して大きくはないといえる。
ダンジョン難易度:F+クラス
最大入場数:68人
入場条件:レベル7以上
攻略条件:全てのモンスターを倒せ』
「ゲートとしての難易度は高くないな」
改めて攻略するゲートの情報を確認する。
二階層のF+ダンジョンゲートが今回トモナリたちが合同で攻略するゲートである。
ゲート情報では特に怪しいところもない。
レベルや入場数の数字が半端ではあるが、別に半端な数字も珍しくはないので気にならない。
ただ最大入場数からすると、交流戦に来ている覚醒者たち全員で入ればいっぱいになってしまう。
引率の教員なんかは一緒に入ることが厳しい。
一部の人は外の警戒で残り、上限人数ギリギリでゲートに挑むことになった。
日本は経験になるだろうと一年生は全員中に入り、二年生の先輩数人が外に残る。
「‘僕も入ることになったから……よろしくね’」
「‘ああ、よろしく’」
アルケスもゲート攻略に参加するようだ。
キュリシーに色々と暴露されて落ち込んでいたが、キュリシーもアルケスが好きであるという事実で気持ちを立て直している。
「‘それでは入っていくぞ’」
今回アメリカが一番初めに入る役割を担った。
やはり開催国としてのプライドがあるのかもしれない。
ただドローンなどでもチェックしているので最初に入る役割もあまり危険ではない。
昔なら最初に入ることにはリスクがあったが、今は人を危険に晒さなくとも先に中を調べる方法があるのでリスクはだいぶ小さくなった。
アメリカに続いてトモナリたちも中に入っていく。
「……広そうな感じがあるな」
ゲートの中は森だった。
木々の間隔がやや広めで明るめだが、木が生えている分視界はやや悪い。
少しひんやりとした空気をしていて、ゲートの中らしく静けさが広がっている。
「‘事前に話していた通りに行動しよう’」
アメリカの覚醒者であるジェレミー・カルトンが中心となって指示を出す。
背の高いガッチリとした体格の男性で、腰の背中側に幅の広い剣を横に差している。
六十人もいる覚醒者たちが一斉に動けば戦いは楽かもしれないが、流石に人数が多くて戦いの経験としては十分なものでなくなってしまう。
今回はそれぞれの国の覚醒者を四つに分けてチームとして、四方向に分かれて攻略していくことになっていた。
「‘ここでも一緒みたいだね’」
「‘そうみたいだな。よろしく、アルケス、キュリシー’」
トモナリはカエデやマコトと一緒で、さらにはドイツのアルケスもトモナリのグループと同じになった。
アルケスもなんだかんだとトモナリのことを気に入ってくれていて、尻尾でも振っていそうな笑顔を浮かべている。
アメリカとブラジルの覚醒者の子とも軽く挨拶をして任された方角に移動していく。
「‘君がアイゼントモナリ君だね?’」
同じグループになったジェレミーがトモナリに声をかけてきた。
一歳違いとは思えないほどジェレミーの身長は高い。
トモナリも低くはないはずなので、ジェレミーの身長が高いのだ。
「‘何かありますか?’」
「‘少し君とは話してみたかったんだ。個人戦でも優勝し、あのメイリンを倒した君とね’」
「‘メイリンのあれは……’」
「‘分かっているとも。だが全く実力もない相手に勝ちを譲る人でもないだろう’」
メイリンに勝ったなんて口が裂けても言えない。
あの勝利はあくまでもメイリンのお遊びのようなものである。
トモナリが困惑しているとジェレミーは笑顔を浮かべた。
「‘それにしても中国側と接触した、という話を聞いたけれど本当かい?’」
「‘えっ? ああ、はい’」
交流が目的で人を呼んでいるが、何もかも自由とはいかない。
ひっそりと監視がついている。
トモナリがメイリンに呼び出されていたこともアメリカは把握していた。
「‘何の話をしたのか聞いてもいいかな?’」
「‘ちょっとプライベートな話なので……’」
気に入ったから婿に来ないかとプロポーズされたと話す勇気はなかった。
トモナリが話を濁すとジェレミーは一瞬だけ険しい目をした。
「‘アメリカは常に優秀な覚醒者を求めている。今活躍している覚醒者でもアメリカに属している者は多い’」
「‘そう……ですね’」
アメリカの覚醒者として活躍している人は確かに多い。
交流戦も提案したのはアメリカが発端であったし、覚醒者の教育やスカウトにも積極的である。
今回の交流戦では中国やカナダといった勢力に押されているが、すでに活動している覚醒者を見ればアメリカは覚醒者大国だ。
「‘もちろん他の国の覚醒者も受け入れている’」
トモナリにもジェレミーが何となく何が言いたいのか分かってきた。
「‘単刀直入に言おう。アメリカに来るつもりはないか? 君ほどの才能があるならば将来は約束されたも同然だ。国も支援を惜しまないし、将来的に大きなギルドを紹介することもできる’」
「‘……魅力的なお誘いですね’」
急なスカウトに驚くばかりだが、アメリカに行くこと自体は悪くないとトモナリは思う。
覚醒者の数が多いというだけではなく、アメリカは国としての影響力も多い。
島国の日本よりも試練ゲートが現れるし、他のゲートを攻略する上でもアメリカの覚醒者や影響力はありがたい。
覚醒者として活動する上での金銭的なリターンも大きい。
ただ競争が激しかったり、覚醒者による犯罪も多かったりと問題が多いこともある。
ジェレミーの言葉はきっと独断でのものではない。
誰かからの指示があってのことだろう。
アメリカ側からのスカウトならばきっと悪いようにはならない。
トモナリは英語も話せるし、デメリット的なものは決して大きくはないといえる。

