「どりゃー!」
キュリシーの噛みつき攻撃をかわしたヒカリは縦に大きく一回転して、キュリシーのアゴを尻尾で殴りあげる。
「ほっ! やっ!」
今度はキュリシーがヒカリを追いかける。
噛みつきや爪の攻撃をヒカリは上手くかわして、手に汗握る攻防を演じる。
「なんというか可愛い戦いだな……」
戦っている当人たちは大真面目なのかもしれないけれど、ヒカリとキュリシーの戦いは可愛い。
モンスターを見慣れている覚醒者からすれば大きなオオカミであるキュリシーもそんなに怖くは見えない人が多い。
「くらうのだー!」
「‘キュリシー!’」
ヒカリがキュリシーに体当たりする。
重たい衝撃に耐えきれなかったキュリシーは真横に弾き飛ばされて転がる。
戦いはヒカリ優位で進んでいる。
飛べるという点での機動力や素早さそのものもヒカリの方が高い。
なかなかキュリシーはヒカリに攻撃を届かせるところまでいかないのだ。
「ふふ、まだやるのだな?」
キュリシーにもアーティファクトはつけられている。
まだアーティファクトは効果を保っていて、キュリシー自身も戦意を失っていない。
「勝ってトモナリに褒めてもらうのは僕なのだ!」
ヒカリがキュリシーに向かって飛んでいく。
「むぅ!?」
キュリシーが大きく咆哮した。
魔力が込められた方向をまともに浴びたヒカリは、一瞬体が動かなくなった。
「にょわー!」
「おっと?」
『まだまだ甘い戦いをするな』
キュリシーが前足を振り上げてヒカリを叩きつけた。
ちょっとガサガサとした、穀物臭のする肉球に殴られてヒカリが床にバウンドする。
相手の手の内もまだ分からないのに、すぐに油断してしまうのはヒカリの悪い癖である。
「そっちがそうくるなら、こうなのだ! ボーッ!」
追撃しようと飛びかかってくるキュリシーに対してヒカリがブレスを使う。
手札がまだあるのはヒカリも同じなのである。
「‘くっ……キュリシー……’」
ブレスによって押し返されたキュリシーは再び床をゴロゴロと転がった。
アルケスは助けに行きたそうにしていたが、キュリシーはまだ諦めていない目をして立ち上がる。
ここで水をさすことはできない。
拳を握りしめてアルケスは助けに行きたい気持ちをグッと堪える。
「そう……ここで特訓の成果をみせるのぉだぁ!」
ヒカリはバッと翼を広げる。
赤々と燃える火の玉がヒカリの周りに浮かび上がる。
「あれは……」
『ふっふーん、どうだ? 妾があやつに教えてやったのだよ』
驚くトモナリの頭の中でルビウスの声が響く。
若干のドヤ感が声に感じられる。
ヒカリはトモナリとのトレーニングだけでなく、ドラゴンとしての力の使い方をルビウスから習っていた。
炎を得意とするレッドドラゴンなので、当然ながら火の扱いを中心としてヒカリは練習していた。
何かの練習をしていることは知っていたけれど、まさかここまで力を扱えているとはトモナリも知らなかったのである。
「くらうのだ!」
ヒカリが火の玉を発射する。
立派な魔法であり、これはまた戦略幅が広がるなとトモナリは思った。
「こっちなのだ!」
飛んでくる火の玉をかわしている間に、ヒカリはキュリシーの横に回り込んでいた。
「ビーッ!」
「おおぅ!?」
「‘キュリシー!!!’」
完全に隙をついたヒカリはブレスを放った。
しかしブレスもこれまでと違っていた。
これまでのブレスは大きく広がる炎を出していたのだが、今ヒカリが放ったブレスは圧縮されて、まるでビームのようなまとまった炎になっていた。
一瞬、回帰前のブラックドラゴンのブレスを思い出させる、質の違うブレスなのであった。
キュリシーもかわそうとはしたけれど、かわしきることができずにビームブレスが直撃する。
アーティファクトのバリアが割れて、キュリシーはステージの外まで吹き飛んでいく。
「‘キュリシー! 僕は降参だ!’」
慌ててアルケスがステージから降りてキュリシーに駆け寄る。
「‘大丈夫かい、キュリシー?’」
アーティファクトの効果によってキュリシーは無事であった。
ただ負けたことが悔しいのか、アルケスを見てキューンと悲しげに鼻を鳴らした。
「‘君はよくやったよ。戦ってる姿、カッコよかったよ’」
アルケスは微笑んでキュリシーを撫でる。
するとキュリシーは体をウニウニと動かしてアルケスに擦り寄る。
「‘次があったら勝とう。僕ももっとレベル上げて君のためになるスキルを手に入れるからさ’」
アルケスのファーストスキルはテイムのための契約スキルである。
まだレベル20に達していないのでセカンドスキルもない。
こうした条件ではトモナリと同じとも言えるが、トモナリと違ってアルケスはテイマーである。
契約した魔獣を強化するスキルなんかを手に入れられる可能性が高い。
もっと自分のレベルが高ければキュリシーを強化してあげられたのかなとアルケスも思っていた。
実力不足だったのはキュリシーもアルケスも同じ。
次はもっと強くなろうとアルケスとキュリシーは思ったのだった。
「どうなのだ〜! どう〜なのだぁ〜!」
一方でヒカリは満面の笑顔でトモナリの胸に飛び込んだ。
勝った喜びを抑えきれずに、トモナリの胸に顔を擦り付ける。
キュリシーの噛みつき攻撃をかわしたヒカリは縦に大きく一回転して、キュリシーのアゴを尻尾で殴りあげる。
「ほっ! やっ!」
今度はキュリシーがヒカリを追いかける。
噛みつきや爪の攻撃をヒカリは上手くかわして、手に汗握る攻防を演じる。
「なんというか可愛い戦いだな……」
戦っている当人たちは大真面目なのかもしれないけれど、ヒカリとキュリシーの戦いは可愛い。
モンスターを見慣れている覚醒者からすれば大きなオオカミであるキュリシーもそんなに怖くは見えない人が多い。
「くらうのだー!」
「‘キュリシー!’」
ヒカリがキュリシーに体当たりする。
重たい衝撃に耐えきれなかったキュリシーは真横に弾き飛ばされて転がる。
戦いはヒカリ優位で進んでいる。
飛べるという点での機動力や素早さそのものもヒカリの方が高い。
なかなかキュリシーはヒカリに攻撃を届かせるところまでいかないのだ。
「ふふ、まだやるのだな?」
キュリシーにもアーティファクトはつけられている。
まだアーティファクトは効果を保っていて、キュリシー自身も戦意を失っていない。
「勝ってトモナリに褒めてもらうのは僕なのだ!」
ヒカリがキュリシーに向かって飛んでいく。
「むぅ!?」
キュリシーが大きく咆哮した。
魔力が込められた方向をまともに浴びたヒカリは、一瞬体が動かなくなった。
「にょわー!」
「おっと?」
『まだまだ甘い戦いをするな』
キュリシーが前足を振り上げてヒカリを叩きつけた。
ちょっとガサガサとした、穀物臭のする肉球に殴られてヒカリが床にバウンドする。
相手の手の内もまだ分からないのに、すぐに油断してしまうのはヒカリの悪い癖である。
「そっちがそうくるなら、こうなのだ! ボーッ!」
追撃しようと飛びかかってくるキュリシーに対してヒカリがブレスを使う。
手札がまだあるのはヒカリも同じなのである。
「‘くっ……キュリシー……’」
ブレスによって押し返されたキュリシーは再び床をゴロゴロと転がった。
アルケスは助けに行きたそうにしていたが、キュリシーはまだ諦めていない目をして立ち上がる。
ここで水をさすことはできない。
拳を握りしめてアルケスは助けに行きたい気持ちをグッと堪える。
「そう……ここで特訓の成果をみせるのぉだぁ!」
ヒカリはバッと翼を広げる。
赤々と燃える火の玉がヒカリの周りに浮かび上がる。
「あれは……」
『ふっふーん、どうだ? 妾があやつに教えてやったのだよ』
驚くトモナリの頭の中でルビウスの声が響く。
若干のドヤ感が声に感じられる。
ヒカリはトモナリとのトレーニングだけでなく、ドラゴンとしての力の使い方をルビウスから習っていた。
炎を得意とするレッドドラゴンなので、当然ながら火の扱いを中心としてヒカリは練習していた。
何かの練習をしていることは知っていたけれど、まさかここまで力を扱えているとはトモナリも知らなかったのである。
「くらうのだ!」
ヒカリが火の玉を発射する。
立派な魔法であり、これはまた戦略幅が広がるなとトモナリは思った。
「こっちなのだ!」
飛んでくる火の玉をかわしている間に、ヒカリはキュリシーの横に回り込んでいた。
「ビーッ!」
「おおぅ!?」
「‘キュリシー!!!’」
完全に隙をついたヒカリはブレスを放った。
しかしブレスもこれまでと違っていた。
これまでのブレスは大きく広がる炎を出していたのだが、今ヒカリが放ったブレスは圧縮されて、まるでビームのようなまとまった炎になっていた。
一瞬、回帰前のブラックドラゴンのブレスを思い出させる、質の違うブレスなのであった。
キュリシーもかわそうとはしたけれど、かわしきることができずにビームブレスが直撃する。
アーティファクトのバリアが割れて、キュリシーはステージの外まで吹き飛んでいく。
「‘キュリシー! 僕は降参だ!’」
慌ててアルケスがステージから降りてキュリシーに駆け寄る。
「‘大丈夫かい、キュリシー?’」
アーティファクトの効果によってキュリシーは無事であった。
ただ負けたことが悔しいのか、アルケスを見てキューンと悲しげに鼻を鳴らした。
「‘君はよくやったよ。戦ってる姿、カッコよかったよ’」
アルケスは微笑んでキュリシーを撫でる。
するとキュリシーは体をウニウニと動かしてアルケスに擦り寄る。
「‘次があったら勝とう。僕ももっとレベル上げて君のためになるスキルを手に入れるからさ’」
アルケスのファーストスキルはテイムのための契約スキルである。
まだレベル20に達していないのでセカンドスキルもない。
こうした条件ではトモナリと同じとも言えるが、トモナリと違ってアルケスはテイマーである。
契約した魔獣を強化するスキルなんかを手に入れられる可能性が高い。
もっと自分のレベルが高ければキュリシーを強化してあげられたのかなとアルケスも思っていた。
実力不足だったのはキュリシーもアルケスも同じ。
次はもっと強くなろうとアルケスとキュリシーは思ったのだった。
「どうなのだ〜! どう〜なのだぁ〜!」
一方でヒカリは満面の笑顔でトモナリの胸に飛び込んだ。
勝った喜びを抑えきれずに、トモナリの胸に顔を擦り付ける。

