「‘くそっ! スキルステータスアップ!’」
「おっ、なかなかいいもん持ってるな」
ハオレンがスキルを発動させた。
ステータスアップはかなり地味なスキルであるが、トモナリとしては結構評価の高いものだ。
魔力、運を除いた力、素早さ、体力、器用さの四つの能力値を上げてくれるものである。
上昇幅は低いものの、全体的な能力が向上する恩恵は確実に得られる。
消費魔力も少なく、継続的な戦闘を行う上ではスキルの使用者を助けてくれる良スキルなのだ。
ただし、派手な効果は期待できない。
安定性と確実性、少ない消耗のスキルである代わりに、一発逆転を狙えるような効果はないのである。
スキルによって能力を底上げしたけれど、まだトモナリの方が強い。
ハオレンに反撃を許さないようにトモナリは攻め立てる。
「ふほほー!」
ハオレンとしてはどうにか反撃の機会を狙っているのだが、トモナリだけでなく隙を狙って攻撃してくるヒカリもいて防戦を強いられている。
大きな青龍偃月刀を巧みに使ってトモナリの攻撃を防いでいるところを見れば、ハオレンも青龍偃月刀をしっかり扱う技術を持っていることが分かる。
「‘……猛虎襲来!’」
「‘ハオレン! それはダメだ!’」
このまま戦えばジリジリと追い詰められる。
防御が完全に間に合わなくて、アーティファクトも時々弱く発動し始めている。
少しずつ削られて負けるなんて、負け方としても情けない。
ハオレンはもうすでにレベルが20に達した覚醒者であり、二つ目のスキルも解放されていた。
実戦ではない以上使うつもりもなかったけれど、トモナリ相手に情けない負け方などできないとハオレンはスキルを使った。
「なんなのだ?」
ハオレンの瞳の色が金褐色に変わっていき、頬に黒い模様が浮かび上がる。
トモナリも聞いたことがないスキルだなと思っていると、ハオレンが一気にトモナリに飛びかかった。
「速い……!」
重鈍ではないもののハオレンはスピードを重視するタイプではなく、能力としても力に比べて低そうであった。
けれども様子が変わったハオレンは確実に速くなっていた。
「トモナリ君!」
容赦なく振り下ろされた青龍偃月刀をトモナリは受け止める。
思いの外に力が強くて額ギリギリでようやく止められた。
周りで見ていたみんなもヒヤリとして、ほっと息を吐き出す。
「狂化系強化スキルか」
振り回される青龍偃月刀をかわしながらトモナリはハオレンのスキルを分析する。
力や素早さが大幅に強化された一方で、攻撃がかなり大雑把になった。
ここまではヒカリの攻撃もしっかり警戒していたのにワンテンポ遅れてしまうようになった。
トモナリはこれを狂化系強化スキルだと推測した。
ステータスアップも能力強化のスキルである。
ただわずかな魔力を消費する他にデメリットはない。
しかしスキルの中には大きく能力が強化される代わりに、デメリットもあるスキルが存在している。
その代表が狂化というスキルだ。
大きく力や素早さが伸びることと引き換えに理性を失う。
ハオレンの猛虎襲来も狂化と同じく理性的な冷静さを失って、その代わりに力を得ているようだった。
「それでもまだ……俺の方が強いな!」
力はだいぶ迫っている。
素早さもかなり上がっているけれど、元より素早さが低めなためにまだトモナリの方が速い。
その分、攻撃が大雑把になっている。
「それがあんたの全てなら……勝たせてもらうぞ!」
トモナリはルビウスに炎をまとわせる。
振り上げられた青龍偃月刀を前髪数本が切れてしまうほどギリギリで回避する。
ハオレンを横から斬りつける。
ルビウスから炎が吹き出して、ハオレンが下がりつつも炎を払う。
「‘やるね’」
切り裂かれた炎の向こうからトモナリの拳が飛んできた。
回避も防御もできずにハオレンの顔面に拳がめり込んで、メイリンは目を細めて笑った。
「トドメなのだー!」
倒れて転がるハオレンの真上からヒカリが急降下する。
「‘ぐふぅっ!’」
回転まで加えたヒカリの足がハオレンの腹に突き刺さる。
バリアが割れる音がして、ハオレンはそのまま気を失ってしまう。
スキルが解除されて顔の虎のような模様が消えていく。
「‘そこまで! 勝者アイゼントモナリとヒカリ!’」
アーティファクトが効果を失ったのでトモナリの勝利が確定した。
「‘ヒカリー!’」
「‘可愛いよ!’」
ヒカリに対して歓声が上がる。
歓声を受けるヒカリの方も観客席に手を振りかえす。
国を越えてヒカリのファンが形成されつつある。
「まあなんとか勝ったな」
ハオレンは強かった。
他の国なら先鋒以外でも通じそうなぐらいの力があった。
「スキルをコントロールできるようになったらより強くなれるだろうな」
狂化系スキルによる理性を失う程度にも差がある。
敵味方が分からなくほどのものから、それなりに理性を保ったままでいられるものもある。
理性を失ってしまうのも練習すれば理性を保つことが可能となるので、スキルを練習して理性を保つことができれば攻撃の乱雑さも解消されるだろう。
「おっ、なかなかいいもん持ってるな」
ハオレンがスキルを発動させた。
ステータスアップはかなり地味なスキルであるが、トモナリとしては結構評価の高いものだ。
魔力、運を除いた力、素早さ、体力、器用さの四つの能力値を上げてくれるものである。
上昇幅は低いものの、全体的な能力が向上する恩恵は確実に得られる。
消費魔力も少なく、継続的な戦闘を行う上ではスキルの使用者を助けてくれる良スキルなのだ。
ただし、派手な効果は期待できない。
安定性と確実性、少ない消耗のスキルである代わりに、一発逆転を狙えるような効果はないのである。
スキルによって能力を底上げしたけれど、まだトモナリの方が強い。
ハオレンに反撃を許さないようにトモナリは攻め立てる。
「ふほほー!」
ハオレンとしてはどうにか反撃の機会を狙っているのだが、トモナリだけでなく隙を狙って攻撃してくるヒカリもいて防戦を強いられている。
大きな青龍偃月刀を巧みに使ってトモナリの攻撃を防いでいるところを見れば、ハオレンも青龍偃月刀をしっかり扱う技術を持っていることが分かる。
「‘……猛虎襲来!’」
「‘ハオレン! それはダメだ!’」
このまま戦えばジリジリと追い詰められる。
防御が完全に間に合わなくて、アーティファクトも時々弱く発動し始めている。
少しずつ削られて負けるなんて、負け方としても情けない。
ハオレンはもうすでにレベルが20に達した覚醒者であり、二つ目のスキルも解放されていた。
実戦ではない以上使うつもりもなかったけれど、トモナリ相手に情けない負け方などできないとハオレンはスキルを使った。
「なんなのだ?」
ハオレンの瞳の色が金褐色に変わっていき、頬に黒い模様が浮かび上がる。
トモナリも聞いたことがないスキルだなと思っていると、ハオレンが一気にトモナリに飛びかかった。
「速い……!」
重鈍ではないもののハオレンはスピードを重視するタイプではなく、能力としても力に比べて低そうであった。
けれども様子が変わったハオレンは確実に速くなっていた。
「トモナリ君!」
容赦なく振り下ろされた青龍偃月刀をトモナリは受け止める。
思いの外に力が強くて額ギリギリでようやく止められた。
周りで見ていたみんなもヒヤリとして、ほっと息を吐き出す。
「狂化系強化スキルか」
振り回される青龍偃月刀をかわしながらトモナリはハオレンのスキルを分析する。
力や素早さが大幅に強化された一方で、攻撃がかなり大雑把になった。
ここまではヒカリの攻撃もしっかり警戒していたのにワンテンポ遅れてしまうようになった。
トモナリはこれを狂化系強化スキルだと推測した。
ステータスアップも能力強化のスキルである。
ただわずかな魔力を消費する他にデメリットはない。
しかしスキルの中には大きく能力が強化される代わりに、デメリットもあるスキルが存在している。
その代表が狂化というスキルだ。
大きく力や素早さが伸びることと引き換えに理性を失う。
ハオレンの猛虎襲来も狂化と同じく理性的な冷静さを失って、その代わりに力を得ているようだった。
「それでもまだ……俺の方が強いな!」
力はだいぶ迫っている。
素早さもかなり上がっているけれど、元より素早さが低めなためにまだトモナリの方が速い。
その分、攻撃が大雑把になっている。
「それがあんたの全てなら……勝たせてもらうぞ!」
トモナリはルビウスに炎をまとわせる。
振り上げられた青龍偃月刀を前髪数本が切れてしまうほどギリギリで回避する。
ハオレンを横から斬りつける。
ルビウスから炎が吹き出して、ハオレンが下がりつつも炎を払う。
「‘やるね’」
切り裂かれた炎の向こうからトモナリの拳が飛んできた。
回避も防御もできずにハオレンの顔面に拳がめり込んで、メイリンは目を細めて笑った。
「トドメなのだー!」
倒れて転がるハオレンの真上からヒカリが急降下する。
「‘ぐふぅっ!’」
回転まで加えたヒカリの足がハオレンの腹に突き刺さる。
バリアが割れる音がして、ハオレンはそのまま気を失ってしまう。
スキルが解除されて顔の虎のような模様が消えていく。
「‘そこまで! 勝者アイゼントモナリとヒカリ!’」
アーティファクトが効果を失ったのでトモナリの勝利が確定した。
「‘ヒカリー!’」
「‘可愛いよ!’」
ヒカリに対して歓声が上がる。
歓声を受けるヒカリの方も観客席に手を振りかえす。
国を越えてヒカリのファンが形成されつつある。
「まあなんとか勝ったな」
ハオレンは強かった。
他の国なら先鋒以外でも通じそうなぐらいの力があった。
「スキルをコントロールできるようになったらより強くなれるだろうな」
狂化系スキルによる理性を失う程度にも差がある。
敵味方が分からなくほどのものから、それなりに理性を保ったままでいられるものもある。
理性を失ってしまうのも練習すれば理性を保つことが可能となるので、スキルを練習して理性を保つことができれば攻撃の乱雑さも解消されるだろう。

