「まあいいか」
なんだか直接声をかけるのもの怖くて、トモナリはメイリンのことを気にしないことにした。
ルドンアカデミーには大きなスタジアムも併設されていて、そこで交流戦は行われる。
スタジアムは真ん中に大きなステージがあって、観客席もある立派な設備である。
最初の試合は中国とオーストラリアでの戦いとなった。
戦いを観戦することは自由であるので、見ないということももちろん可能である。
けれども優勝候補の中国の試合とあってはどこの国も観戦に来ていた。
もちろんトモナリたちも観客席から試合を観るつもりである。
「タン・ハオレンが先鋒か」
十六歳も一人は出さねばならないというルールがある。
そのためにとの国も大体先鋒は十六歳の子となる。
トモナリが出ることになったら当たる可能性があるのは先鋒だ。
凛々しい顔をした青年で、中国の武闘服に身を包んでいる。
手に持っているのは長い柄に湾曲した大きな刃のついた武器である。
「あれか? 青龍偃月刀とかいうかな?」
「あー、なんかそんなのあるな。槍……刀というからには太刀の分類なのか?」
ハオレンも身長のある人だが、そんなハオレンの身の丈ほども青龍偃月刀の大きさはある。
パッと見では槍だけど、名前には刀とついているからには刺突をメインとした武器ではないのかもしれないとトモナリは考えた。
対戦相手のオーストラリアの子も別に弱そうというわけではないのだけど、服装も武器もばっちりのハオレンと比べると地味に見えてしまう。
「ん?」
「むっ、なんだアイツ!」
なんだかハオレンに睨まれた気がするとトモナリは思った。
国としても近いし意識されているのかなと解釈したけれど、ヒカリは睨まれたことで睨み返していた。
「‘アーティファクトを起動させて’」
互いに腕輪のアーティファクトを起動させる。
体が一瞬ホワッとした光に包まれて、アーティファクトの起動が目に見えて分かった。
「‘始め!’」
審判の号令で試合が始まった。
先に動いたのはハオレン。
大きな青龍偃月刀を棒切れのように持ち上げて、一気に振り下ろした。
「あー……」
経験不足、そんな言葉がトモナリの頭に浮かんだ。
ハオレンの動きは速かった。
咄嗟の判断を求められてオーストラリアの先鋒は剣で青龍偃月刀を受け止めてしまう。
しかし軽く扱っているように見えていても、青龍偃月刀はどう見ても重い。
受け流すならともかくまともに受けちゃダメだろうと思った。
つまり経験不足なのはオーストラリアの先鋒である。
「‘そこまでだ!’」
剣が真っ二つに切り裂かれ、そのまま振り下ろされた青龍偃月刀は頭に当たった。
剣が折れる音に続いて何かが割れる音が響いた。
アーティファクトのバリアが耐えきれずに砕け散ったのである。
追撃を繰り出そうとしたハオレンを審判が止める。
「一撃か」
アーティファクトでも防ぎきれなくて頭が軽く切られて、大慌てで医療チームがステージに上がる。
回避か、せめてもう少し受け流すように防ぐべきだった。
あるいはもっと剣に魔力を込めるとか、やりようはあっただろう。
あっさりと勝負がついてしまったのでハオレンの実力もほとんど分からなかった。
「おっ? アイツ、僕とやるのか?」
勝ち残り戦なのでハオレンはまだ戦う。
再び開始位置に戻ったのだが、まだトモナリのことをハオレンは睨みつけた。
トモナリが膝の上に抱えているヒカリは自分が睨まれたと怒っているが、トモナリは自分に向けてだろうなと感じている。
なんだか知らないが中国の覚醒者は変に見てきたり、睨んできたりとおかしなものであるとため息をつく。
ハオレンは次鋒の覚醒者と戦ったが負けた。
なんとなくだけど手を抜いていたように思えた。
まるで実力を隠しているようにも見えてしまった。
「圧倒的だったな」
中国対オーストラリアの戦いは中国が勝った。
中国の次鋒の覚醒者がオーストラリアの次鋒と中堅を倒した。
そして体力温存するように中国の中堅に譲って、中堅がそのままオーストラリアの副将と大将を倒してしまった。
全体的に力を温存したまま勝ってしまったのである。
メイリンは中国の副将になるので出てすらいない。
「あんなのに勝てるのか?」
全体的に質が高いことは今の話でも聞いているし、回帰前でも戦いに残っている人が多くて知っていた。
国をあげて強力に支援をもしているし、強くなればさらに国からいろいろ褒賞も貰えるので頑張る。
かなり熾烈な競争もあるようだが、結果は確実に現れている。
「次は私たちだ。行くぞ」
交流戦が始まって会場も熱が高まってきたように感じる。
日本の出番になったので、出場者となるトモナリたち七人と監督となるマサヨシはステージに向かう。
「じゃあ、ジャンケンだな」
先鋒は十六歳のトモナリか、もう一人の覚醒者となる。
しかしどちらが出るのかはまだ決まっていない。
選ばれたもう一人の子は唐沢歩(カラサワアユム)という青年で、アカデミーには通っておらずもうすでにギルドに所属して活動している。
レベル的にはトモナリよりも高いのだけど、能力でいえばトモナリの方が高いだろう。
なんだか直接声をかけるのもの怖くて、トモナリはメイリンのことを気にしないことにした。
ルドンアカデミーには大きなスタジアムも併設されていて、そこで交流戦は行われる。
スタジアムは真ん中に大きなステージがあって、観客席もある立派な設備である。
最初の試合は中国とオーストラリアでの戦いとなった。
戦いを観戦することは自由であるので、見ないということももちろん可能である。
けれども優勝候補の中国の試合とあってはどこの国も観戦に来ていた。
もちろんトモナリたちも観客席から試合を観るつもりである。
「タン・ハオレンが先鋒か」
十六歳も一人は出さねばならないというルールがある。
そのためにとの国も大体先鋒は十六歳の子となる。
トモナリが出ることになったら当たる可能性があるのは先鋒だ。
凛々しい顔をした青年で、中国の武闘服に身を包んでいる。
手に持っているのは長い柄に湾曲した大きな刃のついた武器である。
「あれか? 青龍偃月刀とかいうかな?」
「あー、なんかそんなのあるな。槍……刀というからには太刀の分類なのか?」
ハオレンも身長のある人だが、そんなハオレンの身の丈ほども青龍偃月刀の大きさはある。
パッと見では槍だけど、名前には刀とついているからには刺突をメインとした武器ではないのかもしれないとトモナリは考えた。
対戦相手のオーストラリアの子も別に弱そうというわけではないのだけど、服装も武器もばっちりのハオレンと比べると地味に見えてしまう。
「ん?」
「むっ、なんだアイツ!」
なんだかハオレンに睨まれた気がするとトモナリは思った。
国としても近いし意識されているのかなと解釈したけれど、ヒカリは睨まれたことで睨み返していた。
「‘アーティファクトを起動させて’」
互いに腕輪のアーティファクトを起動させる。
体が一瞬ホワッとした光に包まれて、アーティファクトの起動が目に見えて分かった。
「‘始め!’」
審判の号令で試合が始まった。
先に動いたのはハオレン。
大きな青龍偃月刀を棒切れのように持ち上げて、一気に振り下ろした。
「あー……」
経験不足、そんな言葉がトモナリの頭に浮かんだ。
ハオレンの動きは速かった。
咄嗟の判断を求められてオーストラリアの先鋒は剣で青龍偃月刀を受け止めてしまう。
しかし軽く扱っているように見えていても、青龍偃月刀はどう見ても重い。
受け流すならともかくまともに受けちゃダメだろうと思った。
つまり経験不足なのはオーストラリアの先鋒である。
「‘そこまでだ!’」
剣が真っ二つに切り裂かれ、そのまま振り下ろされた青龍偃月刀は頭に当たった。
剣が折れる音に続いて何かが割れる音が響いた。
アーティファクトのバリアが耐えきれずに砕け散ったのである。
追撃を繰り出そうとしたハオレンを審判が止める。
「一撃か」
アーティファクトでも防ぎきれなくて頭が軽く切られて、大慌てで医療チームがステージに上がる。
回避か、せめてもう少し受け流すように防ぐべきだった。
あるいはもっと剣に魔力を込めるとか、やりようはあっただろう。
あっさりと勝負がついてしまったのでハオレンの実力もほとんど分からなかった。
「おっ? アイツ、僕とやるのか?」
勝ち残り戦なのでハオレンはまだ戦う。
再び開始位置に戻ったのだが、まだトモナリのことをハオレンは睨みつけた。
トモナリが膝の上に抱えているヒカリは自分が睨まれたと怒っているが、トモナリは自分に向けてだろうなと感じている。
なんだか知らないが中国の覚醒者は変に見てきたり、睨んできたりとおかしなものであるとため息をつく。
ハオレンは次鋒の覚醒者と戦ったが負けた。
なんとなくだけど手を抜いていたように思えた。
まるで実力を隠しているようにも見えてしまった。
「圧倒的だったな」
中国対オーストラリアの戦いは中国が勝った。
中国の次鋒の覚醒者がオーストラリアの次鋒と中堅を倒した。
そして体力温存するように中国の中堅に譲って、中堅がそのままオーストラリアの副将と大将を倒してしまった。
全体的に力を温存したまま勝ってしまったのである。
メイリンは中国の副将になるので出てすらいない。
「あんなのに勝てるのか?」
全体的に質が高いことは今の話でも聞いているし、回帰前でも戦いに残っている人が多くて知っていた。
国をあげて強力に支援をもしているし、強くなればさらに国からいろいろ褒賞も貰えるので頑張る。
かなり熾烈な競争もあるようだが、結果は確実に現れている。
「次は私たちだ。行くぞ」
交流戦が始まって会場も熱が高まってきたように感じる。
日本の出番になったので、出場者となるトモナリたち七人と監督となるマサヨシはステージに向かう。
「じゃあ、ジャンケンだな」
先鋒は十六歳のトモナリか、もう一人の覚醒者となる。
しかしどちらが出るのかはまだ決まっていない。
選ばれたもう一人の子は唐沢歩(カラサワアユム)という青年で、アカデミーには通っておらずもうすでにギルドに所属して活動している。
レベル的にはトモナリよりも高いのだけど、能力でいえばトモナリの方が高いだろう。

