「トモナリ、起きるのだ!」
「起きてるよ……」
ヒカリのせいで窒息しかけた。
岩の手に引き込まれたトモナリのところにヒカリが来てくれたのはいいけれど、ヒカリがしがみついたのはトモナリの出ているところである。
体は岩の手に掴まれているので、出ているところは頭しかない。
あろうことか必死だったヒカリはトモナリの顔面にしがみついたのだ。
岩の手はそんなに負担にならないように握ってくれていたのに、ヒカリが顔面にしがみついたものだから呼吸ができなくて死にかけたのである。
「くっ……」
深呼吸すると空気が吸いにくい。
空気に含まれる魔力が濃いのだなとすぐに気づいた。
岩の手はそっとトモナリを床に下ろすとボロボロと崩れて消えてしまった。
「ここはどこだ?」
穴の中に引きずり込まれたことは分かっている。
ただ引きずり込まれた後はかなりの速度で移動したので、穴から遠いのか近いのかも分からない。
トモナリは腰に差していたルビウスを抜いて周りを警戒する。
「なんで俺が……」
「待っていたぞ」
「え……うわっ!?」
声がして振り向くと、正面に何かが迫っていてトモナリはとっさに飛び退いた。
「なんだ!?」
巨大な何か、ということはすぐに分かった。
トモナリが視線を上げると薄暗い中にそれは立っていた。
「デッカいのだ!」
透き通るような紫の目をトモナリに向けているそれは、デカサウルスよりもさらに大きなデカサウルスであった。
いうならばメガサウルスとでもいうべきサイズをしている。
「あ、あんたが俺を呼んだのか?」
ただデカいだけじゃない。
押しつぶされるような魔力を感じる。
息苦しさすらある魔力は目の前のメガサウルスから漏れていたものだとトモナリは察した。
今のトモナリではとてもじゃないが勝てる相手じゃない。
ただ声が聞こえた。
これまで頭の中で聞こえていたのに今は耳で聞こえたのだ。
メガサウルスが話した。
そう思ったトモナリは話しかけてみることにした。
「そうだ、不思議な雰囲気を持つ人の子よ」
「あなたは一体……なんですか?」
『其奴はドラゴンじゃ』
ルビウスの声が頭に響いた。
「ドラゴン?」
「その剣も何かを宿しているな?」
メガサウルスは紫の瞳をトモナリが持っているルビウスに向けた。
今のところ視線から敵意のようなものは感じない。
「この中にはドラゴンがいます。あなたのことをドラゴンだと」
「ほう……」
メガサウルスが鼻先をトモナリに近づける。
軽く口を開けるだけでもトモナリのことを食べれてしまう。
「そう。我はドラゴンだ。誇り高きアースドラゴン。それが我……だった」
「だった……?」
「見よ、この姿を」
ティラノサウルスにも近いような姿をしたメガサウルスの体を見てみる。
トモナリの胴体ほどの太さもありそうな巨大なモリが何本もメガサウルスには突き刺さっている。
モリには太い鎖が繋がれていてメガサウルスの体に幾重にも巻き付いていた。
よく見ると鎖の表面はうっすらと青く光っていて何かの模様のようなものが見受けられた。
「我は今力を封じられている。魔力はただ漏れになって久しく、もはやドラゴンたる威厳もない。ここに来たということは我から作り出された偽物と戦ってきたのだろう?」
「あのモンスターは……あなたから生み出された?」
「そうだ。我の体を使い、我の力を模倣するように作られた偽物の生命体だ。禁忌の行いだ」
目的こそ分からないが、今いる研究所が何をしていた研究所なのかうっすらと分かってきた。
「ともかく我は捕まり、研究の対象となった。そして我は何かの奴隷になった」
「奴隷?」
さっきから何が言いたいのか、イマイチわからない。
「頭の中で声が響く……お前を殺せと」
「えっ?」
「全てを破壊しろ、人間を殺せと抗いがたい声がしておるのだ。もうすぐ我はただの化け物になる。今はこの鎖が……忌々しい鎖が我の理性をも繋いでくれているが、解き放たれる時は近い。鎖が解き放たれれば我は声に支配された奴隷として暴れることだろう」
「そんな……」
「我を殺してくれ。戦いたくもないのに戦わされ、何かに支配され続けることはイヤだ」
ふと鎖が一本引きちぎれた。
「礼はしよう。頼む」
「それは……いいですが……どうやってあなたを倒せば」
正直トモナリにはメガサウルスを倒す自信がなかった。
たとえ全力を持って攻撃してもほんのわずかにダメージを与えられる程度だろう。
「お主には仲間がいるようだな。仲間と協力しろ。そして一つ良いことを教えてやる。我の後ろには小さな部屋がある。そこには緊急用の装置がある。装置を発動させると我を弱体化させる魔法が発動する。ついでにお膳立てもしてやる。……あとは分かるな?」
流石にトモナリ一人で倒せと言っているのではなかった。
トモナリがメガサウルスの後ろに目を向けると確かに扉のようなものがある。
「お主が連れているのは……ブラックドラゴンか……」
一本、また一本と鎖がちぎれていく。
「ドラゴンの気配を持つ人間よ。頼むぞ……」
「トモナリ君!」
「アイゼン君!」
「イヌサワさん、ミヤノさん!」
イヌサワとミヤノがトモナリのところに駆けつけた。
「起きてるよ……」
ヒカリのせいで窒息しかけた。
岩の手に引き込まれたトモナリのところにヒカリが来てくれたのはいいけれど、ヒカリがしがみついたのはトモナリの出ているところである。
体は岩の手に掴まれているので、出ているところは頭しかない。
あろうことか必死だったヒカリはトモナリの顔面にしがみついたのだ。
岩の手はそんなに負担にならないように握ってくれていたのに、ヒカリが顔面にしがみついたものだから呼吸ができなくて死にかけたのである。
「くっ……」
深呼吸すると空気が吸いにくい。
空気に含まれる魔力が濃いのだなとすぐに気づいた。
岩の手はそっとトモナリを床に下ろすとボロボロと崩れて消えてしまった。
「ここはどこだ?」
穴の中に引きずり込まれたことは分かっている。
ただ引きずり込まれた後はかなりの速度で移動したので、穴から遠いのか近いのかも分からない。
トモナリは腰に差していたルビウスを抜いて周りを警戒する。
「なんで俺が……」
「待っていたぞ」
「え……うわっ!?」
声がして振り向くと、正面に何かが迫っていてトモナリはとっさに飛び退いた。
「なんだ!?」
巨大な何か、ということはすぐに分かった。
トモナリが視線を上げると薄暗い中にそれは立っていた。
「デッカいのだ!」
透き通るような紫の目をトモナリに向けているそれは、デカサウルスよりもさらに大きなデカサウルスであった。
いうならばメガサウルスとでもいうべきサイズをしている。
「あ、あんたが俺を呼んだのか?」
ただデカいだけじゃない。
押しつぶされるような魔力を感じる。
息苦しさすらある魔力は目の前のメガサウルスから漏れていたものだとトモナリは察した。
今のトモナリではとてもじゃないが勝てる相手じゃない。
ただ声が聞こえた。
これまで頭の中で聞こえていたのに今は耳で聞こえたのだ。
メガサウルスが話した。
そう思ったトモナリは話しかけてみることにした。
「そうだ、不思議な雰囲気を持つ人の子よ」
「あなたは一体……なんですか?」
『其奴はドラゴンじゃ』
ルビウスの声が頭に響いた。
「ドラゴン?」
「その剣も何かを宿しているな?」
メガサウルスは紫の瞳をトモナリが持っているルビウスに向けた。
今のところ視線から敵意のようなものは感じない。
「この中にはドラゴンがいます。あなたのことをドラゴンだと」
「ほう……」
メガサウルスが鼻先をトモナリに近づける。
軽く口を開けるだけでもトモナリのことを食べれてしまう。
「そう。我はドラゴンだ。誇り高きアースドラゴン。それが我……だった」
「だった……?」
「見よ、この姿を」
ティラノサウルスにも近いような姿をしたメガサウルスの体を見てみる。
トモナリの胴体ほどの太さもありそうな巨大なモリが何本もメガサウルスには突き刺さっている。
モリには太い鎖が繋がれていてメガサウルスの体に幾重にも巻き付いていた。
よく見ると鎖の表面はうっすらと青く光っていて何かの模様のようなものが見受けられた。
「我は今力を封じられている。魔力はただ漏れになって久しく、もはやドラゴンたる威厳もない。ここに来たということは我から作り出された偽物と戦ってきたのだろう?」
「あのモンスターは……あなたから生み出された?」
「そうだ。我の体を使い、我の力を模倣するように作られた偽物の生命体だ。禁忌の行いだ」
目的こそ分からないが、今いる研究所が何をしていた研究所なのかうっすらと分かってきた。
「ともかく我は捕まり、研究の対象となった。そして我は何かの奴隷になった」
「奴隷?」
さっきから何が言いたいのか、イマイチわからない。
「頭の中で声が響く……お前を殺せと」
「えっ?」
「全てを破壊しろ、人間を殺せと抗いがたい声がしておるのだ。もうすぐ我はただの化け物になる。今はこの鎖が……忌々しい鎖が我の理性をも繋いでくれているが、解き放たれる時は近い。鎖が解き放たれれば我は声に支配された奴隷として暴れることだろう」
「そんな……」
「我を殺してくれ。戦いたくもないのに戦わされ、何かに支配され続けることはイヤだ」
ふと鎖が一本引きちぎれた。
「礼はしよう。頼む」
「それは……いいですが……どうやってあなたを倒せば」
正直トモナリにはメガサウルスを倒す自信がなかった。
たとえ全力を持って攻撃してもほんのわずかにダメージを与えられる程度だろう。
「お主には仲間がいるようだな。仲間と協力しろ。そして一つ良いことを教えてやる。我の後ろには小さな部屋がある。そこには緊急用の装置がある。装置を発動させると我を弱体化させる魔法が発動する。ついでにお膳立てもしてやる。……あとは分かるな?」
流石にトモナリ一人で倒せと言っているのではなかった。
トモナリがメガサウルスの後ろに目を向けると確かに扉のようなものがある。
「お主が連れているのは……ブラックドラゴンか……」
一本、また一本と鎖がちぎれていく。
「ドラゴンの気配を持つ人間よ。頼むぞ……」
「トモナリ君!」
「アイゼン君!」
「イヌサワさん、ミヤノさん!」
イヌサワとミヤノがトモナリのところに駆けつけた。

