「そんな犠牲を強いるつもりはない。強いなくてもいいように今回はこうしてみんなで来ているのだからな」
回帰前がどうだったのか知る術はない。
トモナリですら断片的な情報しか持ち合わせていない。
だが回帰前がどうであれ、今回は回帰前と違うと言い切ってもいい。
五十嵐ギルドはゲート攻略に全力をあげている。
さらに助っ人にミヤノまでいる。
Cクラスということで最初に派遣された攻略隊を失い、ミヤノといない中でも五十嵐ギルドはゲートを攻略した。
全力をあげて、助っ人もいる万全の体制の今ならば犠牲者を出すことなく攻略できる可能性も高い。
「ただここからの危険はこれまでとは比にならない。研修生はここで引き返すんだ」
Cクラス程度ならば五十嵐ギルドで保護しつつ戦うこともさほど難しいことではない。
しかしさらに難易度が上がってくるとトモナリたちを守ることも難しくなる。
爆発を予見し、ゲート事故の発生を言い当てたトモナリは役割を十二分に果たしたと言えるだろう。
「ゲートの攻略そのものは終わっているから道中モンスターは出ないはずだ。戻って状況の報告をするんだ」
本当にゲート事故が発生したと報告しにいく人も必要である。
これ以上連れていくことが危ないトモナリたち研修生にその役割を任せようとイガラシは考えた。
「分かりました」
一応トモナリたち四人の中ではフウカがリーダー的な役割を果たす。
フウカも足手まといになることは望まないので素直に役割を受け入れる。
「では時間もないしこのまま変異ゲートの攻略に移る」
今回起きたゲート事故は大きな分類ではゲートの変異や変容と呼ばれるものになる。
新たなゲートが出現したわけではなく、ゲートの環境はそのままでさらに新しい場所が解放されたためにゲートが変異を起こしたなどと言われるのだ。
詳細な調査が行われれば細かな現象名もつけられるのだろうが、今はそんな余裕もない。
「じゃあ行こう」
トモナリたちは来た道を引き返してゲートからの脱出を図ろうとした。
『お前は……来るのだ……』
「また声がするな……」
「なんだ! みんな避けるのだ!」
トモナリが穴に背を向けた時だった。
穴の中から手が飛び出してきた。
岩でできたような巨大な手はぐんと伸びてトモナリの方に向かう。
「アイゼン君!」
素早い反応をみせたミヤノが剣を抜いて巨大な手を切りつける。
けれども手はミヤノの想像よりも硬くて表面を刃が滑ってしまう。
「ぐっ!」
トモナリも巨大な手をかわそうと飛び上がったが、巨大な手はトモナリを追尾してきた。
巨大な手が大きく開いてトモナリのことを鷲掴みにした。
「なっ……うわああああっ!」
叩きつけられたり握りつぶされることも覚悟してトモナリは体に力を入れて備える。
しかしトモナリを掴んだ巨大な手はそのまま穴の中にトモナリを引きずり込んで戻っていく。
「トモナリーー!」
「ヒカリちゃん!」
巨大な手から逃れていたヒカリはトモナリを追いかけて穴の中に飛び込んでいく。
「早くアイゼン君を追いかけるぞ!」
「待て、イガラシ」
「なんだ、シノハラ?」
ヒカリと同じく穴に飛び込もうとするイガラシをシノハラが止めた。
「罠かもしれない。ここは慎重になるべきだ」
「しかし研修生のアイゼン君が連れて行かれたのだぞ! たとえ罠だとしても助けに行かねばならない!」
「分かってる。見殺しにしようなんて言わない。だがここは一呼吸置いて冷静になるべきだと言ってるんだ」
トモナリを助けに行こうとする気持ちは理解できる。
だからといって焦るのはいけない。
相手の方からアクションを起こしてきた以上、待ち受けている可能性や罠の可能性も考慮に入れて動くべきである。
トモナリ一人のために五十嵐ギルド全体が危機にさらされることはあってはならないとシノハラは冷静だった。
「僕が先に行くよ」
トモナリを守りきれなかったことに責任を感じたイヌサワが前に出る。
「僕も行こう。二人なら何があっても対処できるはずだ」
ミヤノも動けたのに守れなかったと先に穴に入ることを志願する。
「君が来てくれるなら心強いね」
「アイゼン君には良いところを見せないといけないしね」
「分かった。二人とも頼むぞ」
イガラシも二人ならば大丈夫だろうと先に入ってもらうことにした。
イヌサワはサングラスを能力で空中に浮かせる。
「中に入って何かがあれば能力を解除してサングラスを落とします。大丈夫ならサングラスが浮き上がって、警戒している間は状態をキープということで」
「了解した。油断するなよ」
「もちろんです」
イヌサワとミヤノは穴の縁に立つ。
魔法で炎を投げ込んでも中の様子が分からないのはゲートの力が働いているからだろう。
穴がどれほど深いのかも分からないけれど、S級覚醒者の二人はそんなに大きく心配もしていない。
「行くよ」
「ああ、行こう!」
二人は同時に穴の中に飛び込んだ。
「トモナリ君、大丈夫かな?」
「大丈夫だよ、きっと」
似た雰囲気で無表情のサーシャとフウカも内心ではちゃんとトモナリのことを心配していた。
ーーーーー
回帰前がどうだったのか知る術はない。
トモナリですら断片的な情報しか持ち合わせていない。
だが回帰前がどうであれ、今回は回帰前と違うと言い切ってもいい。
五十嵐ギルドはゲート攻略に全力をあげている。
さらに助っ人にミヤノまでいる。
Cクラスということで最初に派遣された攻略隊を失い、ミヤノといない中でも五十嵐ギルドはゲートを攻略した。
全力をあげて、助っ人もいる万全の体制の今ならば犠牲者を出すことなく攻略できる可能性も高い。
「ただここからの危険はこれまでとは比にならない。研修生はここで引き返すんだ」
Cクラス程度ならば五十嵐ギルドで保護しつつ戦うこともさほど難しいことではない。
しかしさらに難易度が上がってくるとトモナリたちを守ることも難しくなる。
爆発を予見し、ゲート事故の発生を言い当てたトモナリは役割を十二分に果たしたと言えるだろう。
「ゲートの攻略そのものは終わっているから道中モンスターは出ないはずだ。戻って状況の報告をするんだ」
本当にゲート事故が発生したと報告しにいく人も必要である。
これ以上連れていくことが危ないトモナリたち研修生にその役割を任せようとイガラシは考えた。
「分かりました」
一応トモナリたち四人の中ではフウカがリーダー的な役割を果たす。
フウカも足手まといになることは望まないので素直に役割を受け入れる。
「では時間もないしこのまま変異ゲートの攻略に移る」
今回起きたゲート事故は大きな分類ではゲートの変異や変容と呼ばれるものになる。
新たなゲートが出現したわけではなく、ゲートの環境はそのままでさらに新しい場所が解放されたためにゲートが変異を起こしたなどと言われるのだ。
詳細な調査が行われれば細かな現象名もつけられるのだろうが、今はそんな余裕もない。
「じゃあ行こう」
トモナリたちは来た道を引き返してゲートからの脱出を図ろうとした。
『お前は……来るのだ……』
「また声がするな……」
「なんだ! みんな避けるのだ!」
トモナリが穴に背を向けた時だった。
穴の中から手が飛び出してきた。
岩でできたような巨大な手はぐんと伸びてトモナリの方に向かう。
「アイゼン君!」
素早い反応をみせたミヤノが剣を抜いて巨大な手を切りつける。
けれども手はミヤノの想像よりも硬くて表面を刃が滑ってしまう。
「ぐっ!」
トモナリも巨大な手をかわそうと飛び上がったが、巨大な手はトモナリを追尾してきた。
巨大な手が大きく開いてトモナリのことを鷲掴みにした。
「なっ……うわああああっ!」
叩きつけられたり握りつぶされることも覚悟してトモナリは体に力を入れて備える。
しかしトモナリを掴んだ巨大な手はそのまま穴の中にトモナリを引きずり込んで戻っていく。
「トモナリーー!」
「ヒカリちゃん!」
巨大な手から逃れていたヒカリはトモナリを追いかけて穴の中に飛び込んでいく。
「早くアイゼン君を追いかけるぞ!」
「待て、イガラシ」
「なんだ、シノハラ?」
ヒカリと同じく穴に飛び込もうとするイガラシをシノハラが止めた。
「罠かもしれない。ここは慎重になるべきだ」
「しかし研修生のアイゼン君が連れて行かれたのだぞ! たとえ罠だとしても助けに行かねばならない!」
「分かってる。見殺しにしようなんて言わない。だがここは一呼吸置いて冷静になるべきだと言ってるんだ」
トモナリを助けに行こうとする気持ちは理解できる。
だからといって焦るのはいけない。
相手の方からアクションを起こしてきた以上、待ち受けている可能性や罠の可能性も考慮に入れて動くべきである。
トモナリ一人のために五十嵐ギルド全体が危機にさらされることはあってはならないとシノハラは冷静だった。
「僕が先に行くよ」
トモナリを守りきれなかったことに責任を感じたイヌサワが前に出る。
「僕も行こう。二人なら何があっても対処できるはずだ」
ミヤノも動けたのに守れなかったと先に穴に入ることを志願する。
「君が来てくれるなら心強いね」
「アイゼン君には良いところを見せないといけないしね」
「分かった。二人とも頼むぞ」
イガラシも二人ならば大丈夫だろうと先に入ってもらうことにした。
イヌサワはサングラスを能力で空中に浮かせる。
「中に入って何かがあれば能力を解除してサングラスを落とします。大丈夫ならサングラスが浮き上がって、警戒している間は状態をキープということで」
「了解した。油断するなよ」
「もちろんです」
イヌサワとミヤノは穴の縁に立つ。
魔法で炎を投げ込んでも中の様子が分からないのはゲートの力が働いているからだろう。
穴がどれほど深いのかも分からないけれど、S級覚醒者の二人はそんなに大きく心配もしていない。
「行くよ」
「ああ、行こう!」
二人は同時に穴の中に飛び込んだ。
「トモナリ君、大丈夫かな?」
「大丈夫だよ、きっと」
似た雰囲気で無表情のサーシャとフウカも内心ではちゃんとトモナリのことを心配していた。
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