五十嵐ギルドでの研修は中々楽しくて、あっという間に日々は過ぎていった。
高レベルの覚醒者たちが相手をしてくれるのでトモナリとしてもいい鍛錬になったと思う。
フウカの世話しててもいいからもうちょっといたいな思うほどだった。
「ミニサウルスのゲートを攻略する」
三年生が研修に慣れるまでのサポートであるトモナリはフウカよりも短い時間しか研修に参加できない。
日程も残り少なくなってきたある日のミーティングでイガラシは新たに現れたゲートの攻略を開始することを告げた。
ゲートについて危険性を教えて以降音沙汰無かったのでどうしているのか気になっていたが、準備を進めていたようである。
「ゲートの攻略は必要な保安維持の人数だけを残して全力で攻略する」
「Cクラスのゲートですよね? 全力を出す必要なんてないじゃないですか?」
当然の疑問が出てくる。
他の人とも鍛錬していて分かったがイヌサワやイガラシだけでなく他の人たちも全体的にレベルが高い。
複数のゲートがブレイクを起こしてモンスターに支配された地にいるので戦うモンスターには事欠かない。
レベル上げという側面でも五十嵐ギルドは強く、Cクラスゲートなら全力を傾けなくても攻略できるとみんなが思っていた。
「懸念事項がある」
「何を心配しているんですか? 事前の調査でも特に問題はないようですが……」
ゲートを攻略しなければ大丈夫だろうというトモナリのアドバイスを受けて、イガラシはゲートの中に人を送って軽く調べさせていた。
その結果なんの変哲もないゲートであった。
ゲートであって、モンスターがいる以上警戒を怠るわけではないが、そこまで警戒する要因は見つけられない。
「とある筋……覚醒者協会からの情報だ」
「覚醒者協会からですか?」
「そうだ。ゲート事故が起こる可能性があるとの情報が入った」
ゲート事故とは二重ゲートも含め、通常のゲートでは起きないような現象がゲートで起こることを指す。
トモナリが最初に挑んだゴブリンゲートでゴブリンキングが出てきたこともゲート事故の一種である。
みんながざわつく。
ゲート事故の可能性があるということもそうだが、どうして覚醒者協会がゲート事故の可能性を予見できるのかということもまた不思議なのだ。
「もちろん確実に起こるとは言えない。しかし危険性があるのなら俺は警戒すべきだと考えた」
他でもない覚醒者協会からの情報である。
ギルドを惑わす嘘ではないだろうとみんな分かっている。
「仮にゲート事故が起こらず何事もなければそれでそれでいいだろう」
「まあ確かにそうですね……」
ゲート事故が起こって困ることはあるが、起こらなかったとしても杞憂に終わるだけで困るものでない。
「ゲート事故が起こらないならさっさと終わっていいじゃないか」
腕を組んで座るシノハラがフッと笑う。
全力を投じて攻略に挑めば早く終わっていい。
「そうだな」
「起こらない可能性もあるしな」
全力で挑むことに驚いただけでみんなも否定的なわけではない。
「それに研修生の四人も連れていく」
「えっ!?」
「なんでですか?」
全力で挑むことには納得がいく。
しかし研修生であるトモナリたちを連れていくのは話が違う。
「研修生を連れていくのは全力ではないんじゃないか?」
本人たちがいる前でもシノハラは思った意見を口にした。
ギリギリ三年生なら戦力として見られるかもしれない。
けれども一年生のトモナリとサーシャは論外である。
三年生だって単純な力で見れば戦力になっても、経験が浅くてゲート事故に適切に対応できるかもわからない。
全力でというのなら連れていくべきではない。
「仮にゲート事故が起こった時に研修生たちが何かの鍵になるかもしれない」
「何かの鍵? それも覚醒者協会からか?」
「その通りだ」
もちろん鍵とはトモナリのことだ。
中に入ればまた未来予知が発動する可能性があるとトモナリはイガラシに伝えてある。
トモナリを連れていくことのリスクはあるけれど、未来予知でより大きなリスクに対処することができる可能性もある。
イガラシも悩んだ。
けれどトモナリもそれなりに実力はあるので無理をさせなければ大概のことは対処できるだろうと考えた。
だがトモナリだけを連れていくこともできない。
トモナリが未来予知の力を持つ覚醒者だとバレないようにするためには研修生の四人全員を連れていく必要がある。
「……言えないが、必要なんだな?」
「その通りだ」
シノハラも察しの悪い男ではない。
イガラシが無駄なことをするとは思えないので裏に何かしらの理由があるのだろうと考えた。
「それに今回は協力者を呼ぶことにした」
「協力者?」
「入ってくれ」
イガラシが声をかけると男が一人、会議室に入ってきた。
「あの人は……」
トモナリも協力者が来るとは聞いていなかったけれど、入ってきた人には見覚えがあった。
「宮野祐介だと!」
「どうもみなさん、協力者のミヤノです」
入ってきた男は宮野祐介であった。
大和ギルドという大型ギルドに所属している覚醒者で、以前終末教と戦った時に覚醒者協会から助けとして送られきた人である。
かなり有名な覚醒者で職業からミヤノは剣聖と呼ばれていた。
高レベルの覚醒者たちが相手をしてくれるのでトモナリとしてもいい鍛錬になったと思う。
フウカの世話しててもいいからもうちょっといたいな思うほどだった。
「ミニサウルスのゲートを攻略する」
三年生が研修に慣れるまでのサポートであるトモナリはフウカよりも短い時間しか研修に参加できない。
日程も残り少なくなってきたある日のミーティングでイガラシは新たに現れたゲートの攻略を開始することを告げた。
ゲートについて危険性を教えて以降音沙汰無かったのでどうしているのか気になっていたが、準備を進めていたようである。
「ゲートの攻略は必要な保安維持の人数だけを残して全力で攻略する」
「Cクラスのゲートですよね? 全力を出す必要なんてないじゃないですか?」
当然の疑問が出てくる。
他の人とも鍛錬していて分かったがイヌサワやイガラシだけでなく他の人たちも全体的にレベルが高い。
複数のゲートがブレイクを起こしてモンスターに支配された地にいるので戦うモンスターには事欠かない。
レベル上げという側面でも五十嵐ギルドは強く、Cクラスゲートなら全力を傾けなくても攻略できるとみんなが思っていた。
「懸念事項がある」
「何を心配しているんですか? 事前の調査でも特に問題はないようですが……」
ゲートを攻略しなければ大丈夫だろうというトモナリのアドバイスを受けて、イガラシはゲートの中に人を送って軽く調べさせていた。
その結果なんの変哲もないゲートであった。
ゲートであって、モンスターがいる以上警戒を怠るわけではないが、そこまで警戒する要因は見つけられない。
「とある筋……覚醒者協会からの情報だ」
「覚醒者協会からですか?」
「そうだ。ゲート事故が起こる可能性があるとの情報が入った」
ゲート事故とは二重ゲートも含め、通常のゲートでは起きないような現象がゲートで起こることを指す。
トモナリが最初に挑んだゴブリンゲートでゴブリンキングが出てきたこともゲート事故の一種である。
みんながざわつく。
ゲート事故の可能性があるということもそうだが、どうして覚醒者協会がゲート事故の可能性を予見できるのかということもまた不思議なのだ。
「もちろん確実に起こるとは言えない。しかし危険性があるのなら俺は警戒すべきだと考えた」
他でもない覚醒者協会からの情報である。
ギルドを惑わす嘘ではないだろうとみんな分かっている。
「仮にゲート事故が起こらず何事もなければそれでそれでいいだろう」
「まあ確かにそうですね……」
ゲート事故が起こって困ることはあるが、起こらなかったとしても杞憂に終わるだけで困るものでない。
「ゲート事故が起こらないならさっさと終わっていいじゃないか」
腕を組んで座るシノハラがフッと笑う。
全力を投じて攻略に挑めば早く終わっていい。
「そうだな」
「起こらない可能性もあるしな」
全力で挑むことに驚いただけでみんなも否定的なわけではない。
「それに研修生の四人も連れていく」
「えっ!?」
「なんでですか?」
全力で挑むことには納得がいく。
しかし研修生であるトモナリたちを連れていくのは話が違う。
「研修生を連れていくのは全力ではないんじゃないか?」
本人たちがいる前でもシノハラは思った意見を口にした。
ギリギリ三年生なら戦力として見られるかもしれない。
けれども一年生のトモナリとサーシャは論外である。
三年生だって単純な力で見れば戦力になっても、経験が浅くてゲート事故に適切に対応できるかもわからない。
全力でというのなら連れていくべきではない。
「仮にゲート事故が起こった時に研修生たちが何かの鍵になるかもしれない」
「何かの鍵? それも覚醒者協会からか?」
「その通りだ」
もちろん鍵とはトモナリのことだ。
中に入ればまた未来予知が発動する可能性があるとトモナリはイガラシに伝えてある。
トモナリを連れていくことのリスクはあるけれど、未来予知でより大きなリスクに対処することができる可能性もある。
イガラシも悩んだ。
けれどトモナリもそれなりに実力はあるので無理をさせなければ大概のことは対処できるだろうと考えた。
だがトモナリだけを連れていくこともできない。
トモナリが未来予知の力を持つ覚醒者だとバレないようにするためには研修生の四人全員を連れていく必要がある。
「……言えないが、必要なんだな?」
「その通りだ」
シノハラも察しの悪い男ではない。
イガラシが無駄なことをするとは思えないので裏に何かしらの理由があるのだろうと考えた。
「それに今回は協力者を呼ぶことにした」
「協力者?」
「入ってくれ」
イガラシが声をかけると男が一人、会議室に入ってきた。
「あの人は……」
トモナリも協力者が来るとは聞いていなかったけれど、入ってきた人には見覚えがあった。
「宮野祐介だと!」
「どうもみなさん、協力者のミヤノです」
入ってきた男は宮野祐介であった。
大和ギルドという大型ギルドに所属している覚醒者で、以前終末教と戦った時に覚醒者協会から助けとして送られきた人である。
かなり有名な覚醒者で職業からミヤノは剣聖と呼ばれていた。

