「もちろん君たちのことは聞いている。鬼頭アカデミーが誇る課外活動部の子たちだってこともね」

 イガラシはトモナリたちそれぞれの目を見た後、最後にトモナリが抱えるヒカリのことを見つめた。

「将来有望な若者だ。ここで失うわけにはいかないが……ウチのギルドはそう甘いところでもない。付き添いの一年も含めて戦ってもらうことになる」

「なんで僕を見てるのだ?」

 なぜなのかイガラシの視線はヒカリに釘付けだ。

「あっ、笑ったのだ」

 モノは試しにとヒカリが笑顔で手を振るファンサービスを行うとイガラシの顔が一瞬ヘニャリとした笑顔になった。
 見つめていたのはヒカリが興味があったから。

 破壊力抜群のファンサービスにイガラシもやられてしまったのである。
 すぐにイガラシは顔を引き締めたので、みんなも一瞬すごい顔したなとは思いつつも突っ込んでいいのか分からずに黙っておいた。

「ゴホン……ともかく明日から早速活動を開始してもらう。付き添いの一年生も戦う用意をしておくように」

 イガラシは少し恥ずかしそうに咳払いをして話を再開する。

「食堂にみんなを集めてある。彼らのことを紹介してあげてくれ」

「分かりました」

 イヌサワがトモナリたちを連れて部屋を出ていく。

「フッ……可愛かったな……」

 イガラシは窓の外を眺め、ヒカリのファンサービスを思い出して笑顔を浮かべたのであった。

 ーーーーー

「ここが食堂だよ。メニューにあるモノはギルド員なら無料で作ってくれる。君たちも無料だ。他に特別食べたいものがあるなら特別料金でも作ってくれるよ」

 下の階に降りてきた。
 ギルドの建物の中には一通りの設備が入っている。

 食堂もあって、ギルド員はもちろん町の整備開発を行う人も利用する憩いの場となっている。
 食堂に入ると多くの人たちが集まっていた。

「何回目かな……五十嵐ギルドにようこそ。全員……ってわけじゃないけどほとんどのみんなが集まっているようだ」

 食堂にいたのは五十嵐ギルドのメンバーであった。
 メインで戦う覚醒者の他にもサポートとなる覚醒者や非覚醒者でもギルドに所属している人はいる。

 全員集めてみると食堂が手狭に感じるほどの人がギルドの仲間なのである。

「みんな、この子たちが鬼頭アカデミーからきた研修生の三年生と、そのサポートの一年生だ」

 トモナリたちがきて賑やかだった食堂が静かになって視線が集まる。

「ウチのギルドに来てもらえると嬉しいからね、優しくしてやってよ。それじゃあ自己紹介を」

 イヌサワに促されてフウカから順に自己紹介をする。
 軽く名前と職業を伝えるものだったが、フウカの闇騎士王は王職なだけあって驚かれていた。

「ささ、座って」

 フウカとトモナリ、アサミとサーシャはそれぞれ分かれて席に座らされた。

「えっと……これは?」

 トモナリたちの前に大きな丼が置かれた。
 ご飯の上に野菜の天ぷらや肉なんかが乗せられた何丼と言ってもいいのか分からないような丼ものであった。

 ヒカリの分までしっかり用意してある。

「僕たちが取り戻した土地で作った野菜や倒したモンスターの肉で作った丼さ」

 トモナリの隣に座ったイヌサワはサングラスを外してニッと笑った。

「さっ、食べて。移動で時間もかかったしお腹空いてるでしょ」

 みんながトモナリたちのことを見ている。
 何かあるのだなと思いながらも先に食べるべきはフウカだろうとトモナリはフウカのことを見る。

 フウカはまず野菜の天ぷらを箸で掴んだ。

「ん、美味しい」

 一口食べてヒカリが頷いた。

「いただきますなのだ!」

「いただきます」

 トモナリとヒカリも丼を食べる。

「ウマウマなのだ!」

「うん! 美味しい!」

「みんな、美味しいってさ! これで四人は僕たちの仲間だ!」

「ようこそ!」

「その子かわいいね!」

 ここまで固い表情をしていた五十嵐ギルドのみんながわっとわく。
 同じ釜の飯を食うみたいな感じで五十嵐ギルドが解放した土地で作ったものを食べることでようやく仲間として受け入れられたのだ。

 なかなか温かさのあるギルドだなとトモナリは思った。

「ちょ……そんなに追加されたら食べきれませんよ!」

「はははっ、いいからいいから!」

 食べたそばから新しいものが乗せられる。
 五十嵐ギルドがどんなところかは知らなかったけれどもフウカについてきて今のところは正解だった。