夏休みが終わって授業が始まった。
 一般クラスだと高校の授業の一部が覚醒者用の授業となったぐらいである。

 対して特進クラスは卒業後の覚醒者としての進路を見据えているために、覚醒者教育に高校の授業がくっついているぐらいになっている。
 夏休み前まではアカデミーや授業、覚醒者としての自分に慣れる時間だった。

 夏休みを挟んで特進クラスは覚醒者としての授業が本格化していく。
 トモナリはNo.10ゲートを含めて色々と攻略した。

 そのためにもうすでにセカンドスキル解放のレベル20に達してしまった。
 レベルアップは悪いことではないけれど、特進クラスで見てもトモナリは突出してしまっている。

 トモナリと活動を共にしていたミズキを始めとする課外活動部の面々も、トモナリと同じく周りから見ればレベルも経験も高い水準となった。
 理論的なことを教える授業は受けつつも、覚醒者として体動かす授業では授業の補助をしたり独自に鍛錬してもいい時間にしたりと柔軟に対応していた。

 トモナリはオウルグループが作ってくれた魔力抑制装置を使いながら課外活動部のみんなとより強くなるために日々鍛錬に励んでいた。

「えー、今日はみんなに話がある」

 朝のホームルームにマサヨシがやってきた。
 普段は副担任のイリヤマが行うのにマサヨシが来たから教室はざわついていた。

「三年生になると後期日程の多くを冒険者ギルドに行って研修という形で過ごす」

 三年生になればもはや進路は二つに分かれる。
 覚醒者になるか、ならないかだ。

 ならないならば勉強に集中することになる。
 ここまで覚醒者としてやってきた経験があれば勉強するだけの体力はある。

 大学進学という道もあるし覚醒者教育は受けているので覚醒者関連の仕事に就くことも普通の人よりも可能性が高くなる。
 そして覚醒者になると決めた人はより現場に近い経験を積むために覚醒者ギルドへ研修に行くことになっていた。

 生徒たちはいくつかのギルドを回って経験を積み、ギルドの方は有望な生徒がいればスカウトできる。
 いわゆるインターンシップ制度というやつである。

「三年生がギルドを経験するインターンシップであるが一年生も短い間補助的にギルドへ行ってもらう」

「どういうことですか?」

「君たち一年生がするのは三年生の補助だ」

 三年生は数ヶ月かけていくつかのギルドを巡る。
 しかし一年生が行くのは一ヶ月だけ、しかも目的はギルドを経験しつつ三年生の補助のために向かうのであった。

 慣れない環境にある三年生が早く適応できるように一ヶ月だけ一年生が付くのだ。
 アカデミーとしては一年生のうちにギルドがどういったものかの経験を積ませることができ、ギルドとしては一ヶ月ぐらいなら一年生もサポートとして面倒を見ることができる。

 三年生の負担を軽減してもらって早めに三年生が慣れて動けるようになってくれたらありがたいぐらいの考えだった。
 こうして一年のうちからギルドを見ておけば三年生になった時も慣れるのが早くもなる。

 色々と考えて生み出された教育システムであった。

「どこが受け入れてくれているかのリフトを配る。一ヶ月しかいないので一箇所にしかいけない。受け入れ人数にも限りがあるから第三志望まで考えておくように」

 マサヨシがプリントを配布する。

「仮に第三志望もあぶれたら空いてるところに行くことになる。有名なところばかり選ぶと痛い目を見るかもしれないな。それと何人かは三年の先輩からご指名が入っている」

「ご指名ですか?」

「そうだ。サポートとして連れていきたいとな。シミズ、アイゼン、クドウ、それにクロサキ。今呼ばれた者は前に」

「呼ばれたぞ、トモナリ」

「そうだな」

 トモナリはプリントを後ろに回して立ち上がる。
 教壇に立つマサヨシのところに行くと回されたプリントとはまた別のプリントを渡された。

「指名者と指名者が最初に行く予定のギルドが書いてある。もちろん別に行くことも構わない。大切なことだから遠慮することなく考えろ。ちなみに人気のギルドも指名の方が優先される。行きたいところに行く三年生の指名があったら考えるのも一つだ」

 席に戻ってもらったプリントを眺める。

「なんなのだ?」

 ヒカリも一緒にプリントを覗き込む。
 プリントには見知った名前の他にあまり知らない名前もあった。

 向かうギルドは様々でトモナリが知っているところも多い。

「ヤナギ先輩か」

 見知った名前の一つが柳風花であった。
 闇騎士王を職業に持つ覚醒者で三年の中でも頭ひとつ抜けて強い。

 あまり他人に興味がなさそうな人であるけれどトモナリのことはそれなりに気に入ってくれている感じはある。
 狙いはヒカリかもしれないがトモナリもセットで考えてはくれている。

 誰かを指名するような人でもないと思っていたのだがトモナリのことを指名してくれていた。

「行き先は……五十嵐ギルドか」

 流石は三年生でもトップのフウカだけあって行き先もトモナリが知っているトップのギルドであった。
 犬沢優(イヌサワユウ)という鬼頭アカデミーの卒業生も所属する国内におけるトップクラスの大型ギルドである。

 何大ギルドなどと、どのギルドがトップクラスのギルドかの議論が行われるときには必ず名前が上がるようなところだ。