文化祭の準備が本格的に始まると、学校内はにわかにそわそわとした雰囲気が漂い始めた。
教室の奥に置かれた作りかけの看板。準備の時間に回されるホームルーム。全校生徒が見える昇降口付近に貼り出された「文化祭まであと◯日」と描かれた日替わりポスター。日常が徐々に非日常へと変わっていくグラデーションのような時間。否が応でも浮かれてしまうというものだ。
さて。そんな空気の中、俺はというと……。
*
「源さん、何か手伝えることある?」
看板や店内装飾のリーダーである源さんに問いかけると、彼女は「ひっ」と悲鳴のような声をあげて、何故か二、三歩後ろに下がってしまった。
放課後の教室。大勢の生徒が居残りをして準備に勤しんでいる。部活のある人はそちらを優先しているので、必然的に残っているのは帰宅部の面々だ。俺も部活には所属していないので、何かしら手伝えることがあれば手伝いたいのだが……。
「手伝うこと、ある?」
聞こえていなかったのかもしれない、ともう一度同じ内容で問うてみる。と、源さんは「あ、あの」「えっと」と隣に立つ女子……東さんを見やった。
「いや、ヌカちは何もしなくて大丈夫だから」
「何も?」
教室の中では、みんなそれぞれ看板に色を塗ったり、お揃いの制服を作ったり、ホットドッグの材料調達や数量について話し合ったりしている。
「そそ。しいて言うならそこに座ってみんなを見守っててくれるくらいでいいよ」
そこ、と東さんが教卓の近くに置いてある椅子を指さす。こんなにみんながせっせと頑張っているのに、俺だけ椅子に座って眺めているなんて変な話だ。
「暇なメンバーで集まって作業してるだけだし。別に気にしなくていいよ」
そう言われても、納得できるはずがない。それに……。
「源さんは美術部でしょう? 暇じゃないんじゃない?」
そう問うと、源さんが驚いたように目を見張った。
「えっ、ヌカち様……くん。ど、どうして……私の部活なんて」
もじもじと手を合わせる源さんに、一瞬妙な呼ばれ方をした気がした……が、俺はとりあえず話を続ける。
「だって、去年の展示で見たから。校舎の絵、とても素敵だった」
去年文化祭を回っている時、美術部の展示で彼女の作品を見た。それは、朝焼けに煌めく校舎の絵で。普段見慣れた学校がなんだかとても素敵な学び舎に見えて、感動したのを覚えている。
その時に絵の下に書かれていた名前を覚えていたので、今年同じクラスになった時密かに「あの素敵な絵の人だ」と感動したものだ。
「嘘……、え、ありがとうございます」
源さんは両手を口に当てて、そしてぺこぺこと頭を下げてきた。俺もつられて「いえいえ」と頭を下げる。
「あの、私はその、文化祭に展示するための作品はもう描き上げているから大丈夫で……」
「希は絵が上手いしセンスもいいから、看板とか店内デザイン制作のリーダーになってもらったの」
東さんの言葉に、俺は「そうなんだ」と頷く。ちなみに「希」というのは源さんの下の名前だ。
まぁつまるところ、源さんは即戦力で役に立つが、俺は何にもならないということだろうか。
「あの、俺……絵やデザインのセンスはないけど、色を塗ったりはできるよ」
作業は遅いかもしれないが、丁寧にしあげるタチだ。少し意気込んでそう言うと、源さんと東さんが顔を見合わせた。
「んー……」
「あー、じゃあゴミ捨てとかお願いできる? 看板作りに使った段ボールの切れ端とか結構溜まってて」
散々悩んだ後、東さんが教室の隅に積まれたゴミの山を指した。
ようやく役目をもらえたことにホッとして、俺は「うん、うん」と何度も頷いて早速シャツの袖をまくった。
「やー、ヌカち様にこんなこと頼むのは忍びないけど、よろしくね」
「ヌカち様?」
そういえばさっき源さんも「ヌカち様」と俺のことを呼んだ。クラスメイトに様付けで呼ばれる違和感に、俺は「どういうこと」という顔を向ける。
「ヌカち様はヌカち様じゃん」
が、何故か当たり前と言った様子で笑い飛ばされる。
そう言われても、俺にはそう呼ばれる理由もわからないのだ。困惑している間に、源さんと東さんは「じゃあよろしく」と身を翻して作業に戻っていってしまった。
(ヌカち、様?)
なんとなく、というか、とてつもなく距離を感じる呼ばれ方だ。今までクラスメイトにそう呼ばれたことはなかったはずだが、陰ではそんな風に言われたりしていたのだろうか。
……と、くるりと振り返った源さんが「あ、あの」と声をかけてきた。
「ヌカちさ、くん。私の作品を見てくれてありがとう。嬉しかった……」
です、と最後にくっつけて。そして今度こそ源さんは踵を返して教室の中心へと向かっていってしまった。
こちらこそ、素敵な作品を生み出してくれてありがとう。と言いたかったのだが、俺は彼女を引き止めることもできなかった。
教室を見渡すと、みんなそれぞれ楽しそうに作業に没頭している。
俺はその間を縫うようにして段ボール片を集めて回った。そうして教室内を歩いていると、みんなに「ひゃっ」「わっ」「ビビった。彫像かと思ったらヌカちだった」とやたらと驚かれてしまった。気配を消しながらゴミ集めをするのが悪いのだろうかと、「ここのゴミ、拾うね」と声をかけるようにした。……ら、それはそれで「うーん、なんか心臓に悪い」「ヌカち、うろうろしないで」「声かけないで、見つめないで」と言われてしまった。
多分、俺はタイミングが悪い男なのだろう。源さんと東さんが「何もしなくてもいい」と言った理由がわかった気がして、なんとなく……ずん、と気分が落ち込んでしまった。
『奏って本当に鈍いわよね』
不意に、母の言葉が頭の中に蘇って。俺はそれを打ち消すようにぶるるるっと首を振った。
*
片手に段ボールを紐でまとめたもの、そしてもう片方の手に段ボール片をまとめた袋を両手に抱えて、とぼとぼと廊下を歩く。
(今日は帰ったら茄(な)子(す)が美味しく浸かってるはず。艶々の秋茄子だったからきっと美味しいはず)
せめても、と楽しいことを考える。嫌なことがあったら楽しいことを考える。
昔からの癖をなぞるように、糠漬け、糠漬け、と頭の中で繰り返した。気持ちを切り替えるのは、得意な方だ。
「はぁ」
それでも漏れてしまう溜め息を噛み殺しながら、昇降口に向かう。
壁には「文化祭まであと十日」と描かれたポスターが貼ってあって。俺は見るともなしにそれを眺めた。
あと十日の間、そして文化祭当日。俺は少しでもクラスの役に立つことができるだろうか。
(や……でも、当日やって欲しいこともあるって言ってたし)
ちなみに、ピクルスについては早々に却下されてしまった。却下された上に「ヌカちってほんと漬け物系好きなんだね〜」と笑われてしまった。
家で試してみて美味しかったので、平気な人にはトッピング的に付けるのもありかと思ったのだが……そこまで主張することはできなかった。
(俺はきっと、空気を読めない人間なんだろうな)
また溜め息を吐きそうになって、慌てて止める。役立つ提案もできない、模擬店の準備もできない、こんな調子でいいのだろうか。
(聞いて欲しいな、話したいな)
前までだったら、ここでさらに漬け物のことを考えて考えて……そうやって悲しい気持ちをシャットダウンしていただろう。けど、今はちょっと違う。
この、悲しいという気持ちを誰かに聞いて欲しい。いや、誰かなんて曖昧じゃない。
(他の誰でもない。俺は、俺は……)
心の中でその人の顔を思い浮かべた、その時。靴を取り出した下駄箱の向こう側から声が聞こえてきた。
「ねーねー、一緒に文化祭回ろうよぉ」
「マリナちゃんなら回る人いっぱいいるでしょ、俺じゃなくても」
どうやら女子生徒と男子生徒が会話しているらしい。
その男子生徒の方の声に聞き覚えがあって、俺は少し息を呑んでしまった。
それこそまさに、今話を聞いて欲しいと思っていた……二宮くんの声だったからだ。
「二宮くんがいいのー」
やはりそうだ、二宮くんだ。
俺はちょっと迷って左右をきょろきょろと見回す。……が、ここで逃げ出すのも変な気がして、結局は靴を取り出して玄関へと向かった。
「俺と回っても楽しくないって。友達との方がいいと思うよ?」
「なんで? 絶対楽しいもん。一緒がいいの」
「んもー……」
二宮くんの困ったような声に、なんとなく心臓がドキッと跳ねる。普段あんまり聞かない……というか、俺の前ではしない話し方だ。なんだか砕けた感じで、相手と会話し慣れているのが伝わってくる。
(っていうか、この内容って……)
「俺は他の人と回る約束してるんだって」
「はい嘘〜。ずっとそう言ってるけど、誰と回るか具体的に教えてくれないじゃん」
「あんま言いたくないだけ」
やはりそうだ。これは文化祭を一緒に回るか回らないかの押し問答なのだ。
二宮くんの言っている回る約束をしている人、というのは俺のことだろう。
(俺のせいで困ってる?)
なんとなくドキドキしてしまって、息を潜めてしまう。しかし、このままでは盗み聞きしているのと変わらない。
静かに靴を履いて、そろそろと離れようとした時……会話の続きが聞こえてきた。
「それってこの学校の子?」
「まぁ、そう」
「同学年?」
「うん」
「瑞原くんたち?」
「じゃない」
「男子?」
「そう」
ぽんぽんと矢継ぎ早に続いていた会話が、そこで一旦止まる。次いで「なぁんだ」と安心したような声が聞こえてきた。
「それを早く教えてよ」
先ほどまでの不機嫌そうな様子から一転、明るい声が聞こえてきた。
「別に言う必要ないからさ」
「えー、なんか冷たい〜二宮くんらしくない」
「……いいから、早く買い出し済ませよう」
二人のやり取りがどことなく遠くに聞こえて、俺は自分がぼんやりと立ち止まっていたことに気付く。
(……あぁ、そっか)
彼女はきっと、二宮くんのことが好きなのだ。鈍い俺でもさすがにわかった。
そんな彼女は二宮くんと一緒に文化祭を回りたかった。二宮くんの「特別」になりたかったのだ。でもそれを断られて、じゃあ誰が二宮くんと回るのかと気になって……それが女子生徒じゃなかったことに安心した。
そりゃあそうだ。そう。二宮くんの特別になれるのは、「彼女」になれるのは、普通……女の子だ。可愛くて、柔くて、ふんわりとした愛らしい……。
(あれ)
胸が、ずん、と重たくなって、俺は俯く。ローファーの足先は玄関の方を向いているのに、なかなか進まない。
(俺、そっか、二宮くんの特別になんて……なれるわけないんだ)
その事実を認めた途端、指先が震えた。指が震えれば、そりゃあ手に持っていた袋も落とすというもので。
――ドサッ。
結構な音と共に、段ボール片の入った袋が砂まみれの床に落ちる。
「ん? ……え、八重沼?」
と、ひとつ隣の区切りで靴を履いていた二宮くんがこちらを見て、驚いたような声をあげた。そうなるともちろん無視なんてできるわけもなく、俺は「あ」と間抜けに口を開いた。
「二宮くん、あの」
「わっ、『ヌカち』だ!」
二宮くんに話しかける前に、彼の後ろからひょっこりと顔を覗かせた女子生徒……おそらく先ほど「マリナちゃん」と二宮くんに呼ばれていた彼女にあだ名を呼ばれる。
「え?」
「ヌカちだよね? うわー、初めて生で見た」
物珍しい動物か何かを見つけたかのように上から下まで見られて、落ち着かない気持ちになる。
「な、生? あ、こんにちは」
「わっ、挨拶した〜こんにちは〜」
ふりふりと手を振られて、俺も手を振り返そうとして……両手が塞がっていたことを思い出す。
「俺のこと、知ってるの?」
「知ってるよ〜有名じゃん」
どう有名なのかわからないが、ヌカち、というあだ名はそこかしこで一人歩きしているらしい。
「八重沼」
マリナさんとの会話を遮るように、二宮くんが俺を呼んだ。
「ゴミ捨て?」
手に持ったゴミを見てわかったのだろう。二宮くんはいつも通りのにこやかな顔で問いかけてくる。
「うん。うん……そう。俺、ゴミ捨て」
こんなことしかできなくて。それがちょっと悲しくて。それを二宮くんに言いたくて、聞いて欲しくて……。
そんな言葉を、く、と全部飲み込んでから、俺は「ゴミ捨て」ともう一度繰り返した。
「へー。あのね、私たちは今から買い出しに行くの~」
マリナさんが人懐こい顔で微笑んで、自分を指さす。そして、ぴた、と寄り添うように二宮くんの横に並んだ。別にそれは、俺に見せつけるようなものじゃない。ただ単純に、二宮くんと買い出しに行けるのが嬉しいのだろう。
「あ、へぇ。そっか」
俺は頷いた。多分笑っていたと思うが、あまり自信はない。
「迷路の材料が足りなくなってさ。勝手に買い出し係に任命されたんだ」
「うん」
二宮くんが付け足すように教えてくれる。マリナさんは「勝手にってなによ」と唇を尖らせて二宮くんを小突く真似をする。その親密さに、また胸が嫌な感じに跳ねた。
「てか、それ重そうだな。手伝おうか」
と、俺の手元をまじまじと見やった二宮くんが心配そうに尋ねてきた。その表情は嘘や冗談を言っているようには見えない。本気で、俺を手伝おうと思ってくれているのだろう。
優しい、いつもの優しい二宮くんだ。
「いや、大丈夫。大丈夫だよ」
二宮くんの気遣うような顔を見て、一瞬嬉しくなって。そしてその横であがった「えぇー」という不満そうな声を聞いて現実に引き戻される。
「クラスのみんな待ってるのに。早く行って済ませようって言ったの二宮くんじゃん」
その意見は至極真っ当だ。俺は慌てて「うん、そっちが優先だよ」と笑う。
「はーやーく〜」
マリナさんが二宮くんの服の裾を掴んで、自分の方に向けて引っ張る。二宮くんは「やーめ」とそれをペシッと払う。その気安さのまじった仕草を見て、俺は……後ずさりした。
「これ、見た目より軽いんだ」
わざとらしいほど両手を高く持ち上げて、大丈夫だと伝えて。そして俺は「じゃあね」と足早にそこから逃げ出した。これ以上ここにいると、変なことを言ってしまいそうだったからだ。
「あ、八重沼!」
珍しい二宮くんの大きな声に振り向きそうになる。が、それをどうにか耐えて俺は校舎裏にあるゴミ捨て場に向かって走った。
多分今俺はとんでもなくみっともない顔をしている。こんな顔で二宮くんと、そしてふわふわと可愛らしい……二宮くんのことを好いている女子と向き合うことなんてできない。
早足に走って、走って、走って。俺はゴミ捨て場までやって来た。はぁ、はぁ、と肩で息をしながら後ろを振り返るが、そこにはもちろん誰もいない。
紙ゴミを入れるプレハブ小屋の扉を開けて、指定された場所にゴミを積んで、それから……俺はその場にうずくまった。
(そうだ。そう、帰ったらばあちゃんの梅干しを食べよう。酸っぱくて、元気が出るし。そして、糠床をかき混ぜれば、それで……)
それでもう大丈夫だと、明日には元気になっているのだと。そう思いたいのに、思えない。
逃げるようにその場を離れた俺を見て、驚いたように目を見開いていた二宮くんを思い出す。そしてその隣に並び、彼にぴったりと寄り添っていた女子の姿を。
きっとあれは「お似合い」というのだろう。かっこいい二宮くんの横には、可愛い女の子がいて。なんというか、ジグソーパズルのピースがぴったりと当てはまったような、そんなフィット感。
俺が二宮くんの横に並んでも、きっとあんな風にはなれない。
(……あぁ、そっか、俺)
鼻の奥がツンと痛くなって、喉がキュッと詰まったように苦しくなって。そして俺は、ようやく自分の気持ちに気が付いた。
二宮くんと文化祭を回りたい、二宮くんの横に並びたい、二宮くんと一緒にいたい。その願望の奥にあるのは、「二宮くんが好き」という気持ちだ。
「俺、二宮くんが好きなんだ……」
唇を震わせて、ぽつ、と本音を漏らす。
二宮くんの特別になりたい。友達じゃなくて、それよりもっと特別な存在。ただ一人の唯一になりたい。それは、俺にとって二宮くんがそんな存在だからだ。
俺は、二宮くんが好きなのだ。
(これって……恋。恋、なのかな)
自信がなくて何度も心の中で「恋」という言葉を転がす。
いつから好きになっていたのかもわからない。恋なんてしたことなかったから、気が付くのにだいぶん時間がかかってしまった。
文化祭を誰と回るのかというのが気になった時……いや、きっともっと前から、俺は二宮くんに「好き」という気持ちを抱いていた。もしかするとあの虹の写真を送ってもらった頃には、もう。彼に「八重沼」と呼ばれるのが嬉しいと思った時には、もう。
「……あぁ」
座り込んだことで近くなったローファーの爪先。茶色のそれはゆらゆらぼんやりと滲んで、やがて見えなくなる。そこで俺は、自分が涙ぐんでいることに気が付く。
初めての気持ちに心を揺さぶられて、何がなんだかわからない。
座り込んだまま、シャツの袖でごしごしと顔を擦る。どうにか涙を堪えて、ふー……と息を吐く。
(好き。俺は、二宮くんが好き)
まるで嵐が吹き荒れているようなぐしゃぐしゃの心の、その中心地点に置かれたその気持ち。俺はそれを掬(すく)い上(あ)げて抱きしめるように、たしかめる。
(これが、恋なんだな)
なんだか難しいなぞなぞの正解にようやく辿り着けたような心地だ。けど、そのなぞなぞの答えはもうみんなとっくに知っていて、俺だけが特別なわけじゃない。それに、俺のその答えを二宮くんに見せるわけにもいかない。
(だって、たぶん、伝えていいやつじゃない)
さすがの俺でも、俺がこの気持ちを伝えたら二宮くんが困るであろうことくらいはわかった。
自己満足で「好き」と伝えて今の関係が崩れてしまうくらいなら、きっと黙っておいた方がいい。そうすれば俺は、二宮くんと文化祭だって回れるし、二宮くんはまた俺の家に遊びに来てくれるだろうし、夜の通話だってしてくれるはずだ。
俺は……、俺は、それでいい。そのくらいがちょうどいい。
(本当に?)
心の中にいる俺が、小さな窓を開けてこそりと俺に問いかけてくる。俺はその窓を無理矢理閉めて「本当に」と返す。
生まれて初めて芽生えた恋心は、これ以上大きく育つ前に芽を摘み取る方がいい。俺は「本当に」と繰り返してから、膝の間に顔を埋めた。
教室の奥に置かれた作りかけの看板。準備の時間に回されるホームルーム。全校生徒が見える昇降口付近に貼り出された「文化祭まであと◯日」と描かれた日替わりポスター。日常が徐々に非日常へと変わっていくグラデーションのような時間。否が応でも浮かれてしまうというものだ。
さて。そんな空気の中、俺はというと……。
*
「源さん、何か手伝えることある?」
看板や店内装飾のリーダーである源さんに問いかけると、彼女は「ひっ」と悲鳴のような声をあげて、何故か二、三歩後ろに下がってしまった。
放課後の教室。大勢の生徒が居残りをして準備に勤しんでいる。部活のある人はそちらを優先しているので、必然的に残っているのは帰宅部の面々だ。俺も部活には所属していないので、何かしら手伝えることがあれば手伝いたいのだが……。
「手伝うこと、ある?」
聞こえていなかったのかもしれない、ともう一度同じ内容で問うてみる。と、源さんは「あ、あの」「えっと」と隣に立つ女子……東さんを見やった。
「いや、ヌカちは何もしなくて大丈夫だから」
「何も?」
教室の中では、みんなそれぞれ看板に色を塗ったり、お揃いの制服を作ったり、ホットドッグの材料調達や数量について話し合ったりしている。
「そそ。しいて言うならそこに座ってみんなを見守っててくれるくらいでいいよ」
そこ、と東さんが教卓の近くに置いてある椅子を指さす。こんなにみんながせっせと頑張っているのに、俺だけ椅子に座って眺めているなんて変な話だ。
「暇なメンバーで集まって作業してるだけだし。別に気にしなくていいよ」
そう言われても、納得できるはずがない。それに……。
「源さんは美術部でしょう? 暇じゃないんじゃない?」
そう問うと、源さんが驚いたように目を見張った。
「えっ、ヌカち様……くん。ど、どうして……私の部活なんて」
もじもじと手を合わせる源さんに、一瞬妙な呼ばれ方をした気がした……が、俺はとりあえず話を続ける。
「だって、去年の展示で見たから。校舎の絵、とても素敵だった」
去年文化祭を回っている時、美術部の展示で彼女の作品を見た。それは、朝焼けに煌めく校舎の絵で。普段見慣れた学校がなんだかとても素敵な学び舎に見えて、感動したのを覚えている。
その時に絵の下に書かれていた名前を覚えていたので、今年同じクラスになった時密かに「あの素敵な絵の人だ」と感動したものだ。
「嘘……、え、ありがとうございます」
源さんは両手を口に当てて、そしてぺこぺこと頭を下げてきた。俺もつられて「いえいえ」と頭を下げる。
「あの、私はその、文化祭に展示するための作品はもう描き上げているから大丈夫で……」
「希は絵が上手いしセンスもいいから、看板とか店内デザイン制作のリーダーになってもらったの」
東さんの言葉に、俺は「そうなんだ」と頷く。ちなみに「希」というのは源さんの下の名前だ。
まぁつまるところ、源さんは即戦力で役に立つが、俺は何にもならないということだろうか。
「あの、俺……絵やデザインのセンスはないけど、色を塗ったりはできるよ」
作業は遅いかもしれないが、丁寧にしあげるタチだ。少し意気込んでそう言うと、源さんと東さんが顔を見合わせた。
「んー……」
「あー、じゃあゴミ捨てとかお願いできる? 看板作りに使った段ボールの切れ端とか結構溜まってて」
散々悩んだ後、東さんが教室の隅に積まれたゴミの山を指した。
ようやく役目をもらえたことにホッとして、俺は「うん、うん」と何度も頷いて早速シャツの袖をまくった。
「やー、ヌカち様にこんなこと頼むのは忍びないけど、よろしくね」
「ヌカち様?」
そういえばさっき源さんも「ヌカち様」と俺のことを呼んだ。クラスメイトに様付けで呼ばれる違和感に、俺は「どういうこと」という顔を向ける。
「ヌカち様はヌカち様じゃん」
が、何故か当たり前と言った様子で笑い飛ばされる。
そう言われても、俺にはそう呼ばれる理由もわからないのだ。困惑している間に、源さんと東さんは「じゃあよろしく」と身を翻して作業に戻っていってしまった。
(ヌカち、様?)
なんとなく、というか、とてつもなく距離を感じる呼ばれ方だ。今までクラスメイトにそう呼ばれたことはなかったはずだが、陰ではそんな風に言われたりしていたのだろうか。
……と、くるりと振り返った源さんが「あ、あの」と声をかけてきた。
「ヌカちさ、くん。私の作品を見てくれてありがとう。嬉しかった……」
です、と最後にくっつけて。そして今度こそ源さんは踵を返して教室の中心へと向かっていってしまった。
こちらこそ、素敵な作品を生み出してくれてありがとう。と言いたかったのだが、俺は彼女を引き止めることもできなかった。
教室を見渡すと、みんなそれぞれ楽しそうに作業に没頭している。
俺はその間を縫うようにして段ボール片を集めて回った。そうして教室内を歩いていると、みんなに「ひゃっ」「わっ」「ビビった。彫像かと思ったらヌカちだった」とやたらと驚かれてしまった。気配を消しながらゴミ集めをするのが悪いのだろうかと、「ここのゴミ、拾うね」と声をかけるようにした。……ら、それはそれで「うーん、なんか心臓に悪い」「ヌカち、うろうろしないで」「声かけないで、見つめないで」と言われてしまった。
多分、俺はタイミングが悪い男なのだろう。源さんと東さんが「何もしなくてもいい」と言った理由がわかった気がして、なんとなく……ずん、と気分が落ち込んでしまった。
『奏って本当に鈍いわよね』
不意に、母の言葉が頭の中に蘇って。俺はそれを打ち消すようにぶるるるっと首を振った。
*
片手に段ボールを紐でまとめたもの、そしてもう片方の手に段ボール片をまとめた袋を両手に抱えて、とぼとぼと廊下を歩く。
(今日は帰ったら茄(な)子(す)が美味しく浸かってるはず。艶々の秋茄子だったからきっと美味しいはず)
せめても、と楽しいことを考える。嫌なことがあったら楽しいことを考える。
昔からの癖をなぞるように、糠漬け、糠漬け、と頭の中で繰り返した。気持ちを切り替えるのは、得意な方だ。
「はぁ」
それでも漏れてしまう溜め息を噛み殺しながら、昇降口に向かう。
壁には「文化祭まであと十日」と描かれたポスターが貼ってあって。俺は見るともなしにそれを眺めた。
あと十日の間、そして文化祭当日。俺は少しでもクラスの役に立つことができるだろうか。
(や……でも、当日やって欲しいこともあるって言ってたし)
ちなみに、ピクルスについては早々に却下されてしまった。却下された上に「ヌカちってほんと漬け物系好きなんだね〜」と笑われてしまった。
家で試してみて美味しかったので、平気な人にはトッピング的に付けるのもありかと思ったのだが……そこまで主張することはできなかった。
(俺はきっと、空気を読めない人間なんだろうな)
また溜め息を吐きそうになって、慌てて止める。役立つ提案もできない、模擬店の準備もできない、こんな調子でいいのだろうか。
(聞いて欲しいな、話したいな)
前までだったら、ここでさらに漬け物のことを考えて考えて……そうやって悲しい気持ちをシャットダウンしていただろう。けど、今はちょっと違う。
この、悲しいという気持ちを誰かに聞いて欲しい。いや、誰かなんて曖昧じゃない。
(他の誰でもない。俺は、俺は……)
心の中でその人の顔を思い浮かべた、その時。靴を取り出した下駄箱の向こう側から声が聞こえてきた。
「ねーねー、一緒に文化祭回ろうよぉ」
「マリナちゃんなら回る人いっぱいいるでしょ、俺じゃなくても」
どうやら女子生徒と男子生徒が会話しているらしい。
その男子生徒の方の声に聞き覚えがあって、俺は少し息を呑んでしまった。
それこそまさに、今話を聞いて欲しいと思っていた……二宮くんの声だったからだ。
「二宮くんがいいのー」
やはりそうだ、二宮くんだ。
俺はちょっと迷って左右をきょろきょろと見回す。……が、ここで逃げ出すのも変な気がして、結局は靴を取り出して玄関へと向かった。
「俺と回っても楽しくないって。友達との方がいいと思うよ?」
「なんで? 絶対楽しいもん。一緒がいいの」
「んもー……」
二宮くんの困ったような声に、なんとなく心臓がドキッと跳ねる。普段あんまり聞かない……というか、俺の前ではしない話し方だ。なんだか砕けた感じで、相手と会話し慣れているのが伝わってくる。
(っていうか、この内容って……)
「俺は他の人と回る約束してるんだって」
「はい嘘〜。ずっとそう言ってるけど、誰と回るか具体的に教えてくれないじゃん」
「あんま言いたくないだけ」
やはりそうだ。これは文化祭を一緒に回るか回らないかの押し問答なのだ。
二宮くんの言っている回る約束をしている人、というのは俺のことだろう。
(俺のせいで困ってる?)
なんとなくドキドキしてしまって、息を潜めてしまう。しかし、このままでは盗み聞きしているのと変わらない。
静かに靴を履いて、そろそろと離れようとした時……会話の続きが聞こえてきた。
「それってこの学校の子?」
「まぁ、そう」
「同学年?」
「うん」
「瑞原くんたち?」
「じゃない」
「男子?」
「そう」
ぽんぽんと矢継ぎ早に続いていた会話が、そこで一旦止まる。次いで「なぁんだ」と安心したような声が聞こえてきた。
「それを早く教えてよ」
先ほどまでの不機嫌そうな様子から一転、明るい声が聞こえてきた。
「別に言う必要ないからさ」
「えー、なんか冷たい〜二宮くんらしくない」
「……いいから、早く買い出し済ませよう」
二人のやり取りがどことなく遠くに聞こえて、俺は自分がぼんやりと立ち止まっていたことに気付く。
(……あぁ、そっか)
彼女はきっと、二宮くんのことが好きなのだ。鈍い俺でもさすがにわかった。
そんな彼女は二宮くんと一緒に文化祭を回りたかった。二宮くんの「特別」になりたかったのだ。でもそれを断られて、じゃあ誰が二宮くんと回るのかと気になって……それが女子生徒じゃなかったことに安心した。
そりゃあそうだ。そう。二宮くんの特別になれるのは、「彼女」になれるのは、普通……女の子だ。可愛くて、柔くて、ふんわりとした愛らしい……。
(あれ)
胸が、ずん、と重たくなって、俺は俯く。ローファーの足先は玄関の方を向いているのに、なかなか進まない。
(俺、そっか、二宮くんの特別になんて……なれるわけないんだ)
その事実を認めた途端、指先が震えた。指が震えれば、そりゃあ手に持っていた袋も落とすというもので。
――ドサッ。
結構な音と共に、段ボール片の入った袋が砂まみれの床に落ちる。
「ん? ……え、八重沼?」
と、ひとつ隣の区切りで靴を履いていた二宮くんがこちらを見て、驚いたような声をあげた。そうなるともちろん無視なんてできるわけもなく、俺は「あ」と間抜けに口を開いた。
「二宮くん、あの」
「わっ、『ヌカち』だ!」
二宮くんに話しかける前に、彼の後ろからひょっこりと顔を覗かせた女子生徒……おそらく先ほど「マリナちゃん」と二宮くんに呼ばれていた彼女にあだ名を呼ばれる。
「え?」
「ヌカちだよね? うわー、初めて生で見た」
物珍しい動物か何かを見つけたかのように上から下まで見られて、落ち着かない気持ちになる。
「な、生? あ、こんにちは」
「わっ、挨拶した〜こんにちは〜」
ふりふりと手を振られて、俺も手を振り返そうとして……両手が塞がっていたことを思い出す。
「俺のこと、知ってるの?」
「知ってるよ〜有名じゃん」
どう有名なのかわからないが、ヌカち、というあだ名はそこかしこで一人歩きしているらしい。
「八重沼」
マリナさんとの会話を遮るように、二宮くんが俺を呼んだ。
「ゴミ捨て?」
手に持ったゴミを見てわかったのだろう。二宮くんはいつも通りのにこやかな顔で問いかけてくる。
「うん。うん……そう。俺、ゴミ捨て」
こんなことしかできなくて。それがちょっと悲しくて。それを二宮くんに言いたくて、聞いて欲しくて……。
そんな言葉を、く、と全部飲み込んでから、俺は「ゴミ捨て」ともう一度繰り返した。
「へー。あのね、私たちは今から買い出しに行くの~」
マリナさんが人懐こい顔で微笑んで、自分を指さす。そして、ぴた、と寄り添うように二宮くんの横に並んだ。別にそれは、俺に見せつけるようなものじゃない。ただ単純に、二宮くんと買い出しに行けるのが嬉しいのだろう。
「あ、へぇ。そっか」
俺は頷いた。多分笑っていたと思うが、あまり自信はない。
「迷路の材料が足りなくなってさ。勝手に買い出し係に任命されたんだ」
「うん」
二宮くんが付け足すように教えてくれる。マリナさんは「勝手にってなによ」と唇を尖らせて二宮くんを小突く真似をする。その親密さに、また胸が嫌な感じに跳ねた。
「てか、それ重そうだな。手伝おうか」
と、俺の手元をまじまじと見やった二宮くんが心配そうに尋ねてきた。その表情は嘘や冗談を言っているようには見えない。本気で、俺を手伝おうと思ってくれているのだろう。
優しい、いつもの優しい二宮くんだ。
「いや、大丈夫。大丈夫だよ」
二宮くんの気遣うような顔を見て、一瞬嬉しくなって。そしてその横であがった「えぇー」という不満そうな声を聞いて現実に引き戻される。
「クラスのみんな待ってるのに。早く行って済ませようって言ったの二宮くんじゃん」
その意見は至極真っ当だ。俺は慌てて「うん、そっちが優先だよ」と笑う。
「はーやーく〜」
マリナさんが二宮くんの服の裾を掴んで、自分の方に向けて引っ張る。二宮くんは「やーめ」とそれをペシッと払う。その気安さのまじった仕草を見て、俺は……後ずさりした。
「これ、見た目より軽いんだ」
わざとらしいほど両手を高く持ち上げて、大丈夫だと伝えて。そして俺は「じゃあね」と足早にそこから逃げ出した。これ以上ここにいると、変なことを言ってしまいそうだったからだ。
「あ、八重沼!」
珍しい二宮くんの大きな声に振り向きそうになる。が、それをどうにか耐えて俺は校舎裏にあるゴミ捨て場に向かって走った。
多分今俺はとんでもなくみっともない顔をしている。こんな顔で二宮くんと、そしてふわふわと可愛らしい……二宮くんのことを好いている女子と向き合うことなんてできない。
早足に走って、走って、走って。俺はゴミ捨て場までやって来た。はぁ、はぁ、と肩で息をしながら後ろを振り返るが、そこにはもちろん誰もいない。
紙ゴミを入れるプレハブ小屋の扉を開けて、指定された場所にゴミを積んで、それから……俺はその場にうずくまった。
(そうだ。そう、帰ったらばあちゃんの梅干しを食べよう。酸っぱくて、元気が出るし。そして、糠床をかき混ぜれば、それで……)
それでもう大丈夫だと、明日には元気になっているのだと。そう思いたいのに、思えない。
逃げるようにその場を離れた俺を見て、驚いたように目を見開いていた二宮くんを思い出す。そしてその隣に並び、彼にぴったりと寄り添っていた女子の姿を。
きっとあれは「お似合い」というのだろう。かっこいい二宮くんの横には、可愛い女の子がいて。なんというか、ジグソーパズルのピースがぴったりと当てはまったような、そんなフィット感。
俺が二宮くんの横に並んでも、きっとあんな風にはなれない。
(……あぁ、そっか、俺)
鼻の奥がツンと痛くなって、喉がキュッと詰まったように苦しくなって。そして俺は、ようやく自分の気持ちに気が付いた。
二宮くんと文化祭を回りたい、二宮くんの横に並びたい、二宮くんと一緒にいたい。その願望の奥にあるのは、「二宮くんが好き」という気持ちだ。
「俺、二宮くんが好きなんだ……」
唇を震わせて、ぽつ、と本音を漏らす。
二宮くんの特別になりたい。友達じゃなくて、それよりもっと特別な存在。ただ一人の唯一になりたい。それは、俺にとって二宮くんがそんな存在だからだ。
俺は、二宮くんが好きなのだ。
(これって……恋。恋、なのかな)
自信がなくて何度も心の中で「恋」という言葉を転がす。
いつから好きになっていたのかもわからない。恋なんてしたことなかったから、気が付くのにだいぶん時間がかかってしまった。
文化祭を誰と回るのかというのが気になった時……いや、きっともっと前から、俺は二宮くんに「好き」という気持ちを抱いていた。もしかするとあの虹の写真を送ってもらった頃には、もう。彼に「八重沼」と呼ばれるのが嬉しいと思った時には、もう。
「……あぁ」
座り込んだことで近くなったローファーの爪先。茶色のそれはゆらゆらぼんやりと滲んで、やがて見えなくなる。そこで俺は、自分が涙ぐんでいることに気が付く。
初めての気持ちに心を揺さぶられて、何がなんだかわからない。
座り込んだまま、シャツの袖でごしごしと顔を擦る。どうにか涙を堪えて、ふー……と息を吐く。
(好き。俺は、二宮くんが好き)
まるで嵐が吹き荒れているようなぐしゃぐしゃの心の、その中心地点に置かれたその気持ち。俺はそれを掬(すく)い上(あ)げて抱きしめるように、たしかめる。
(これが、恋なんだな)
なんだか難しいなぞなぞの正解にようやく辿り着けたような心地だ。けど、そのなぞなぞの答えはもうみんなとっくに知っていて、俺だけが特別なわけじゃない。それに、俺のその答えを二宮くんに見せるわけにもいかない。
(だって、たぶん、伝えていいやつじゃない)
さすがの俺でも、俺がこの気持ちを伝えたら二宮くんが困るであろうことくらいはわかった。
自己満足で「好き」と伝えて今の関係が崩れてしまうくらいなら、きっと黙っておいた方がいい。そうすれば俺は、二宮くんと文化祭だって回れるし、二宮くんはまた俺の家に遊びに来てくれるだろうし、夜の通話だってしてくれるはずだ。
俺は……、俺は、それでいい。そのくらいがちょうどいい。
(本当に?)
心の中にいる俺が、小さな窓を開けてこそりと俺に問いかけてくる。俺はその窓を無理矢理閉めて「本当に」と返す。
生まれて初めて芽生えた恋心は、これ以上大きく育つ前に芽を摘み取る方がいい。俺は「本当に」と繰り返してから、膝の間に顔を埋めた。
