夏休みに入って夏期講習の期間が終わると、クラゲ君と会う機会がぱったりと無くなった。
彼は私の中では頻繁に連絡を取り合う方だけど、それでもたまに空や風景の写真を送り合うといったもの。がっつり雑談するわけでもないし、用もないのに《この日会えないかな》なんて連絡できる度胸が私にはない。
「………暇だな」
会いたいな、というような気持ちが、ゆっくりと頭を擡げてくる。その度に、私の現実主義がその気持ちを押し潰していく。
用はない。口実もない。おまけにこの感情の正体も未だに掴め切れていない。それなら、会いたいなんて思うのは私のエゴだ。自分勝手だ。
夏休みを憂鬱に感じたことなんて、終ぞ無かった。寧ろずっと続けば良いのに、なんて思っていたのに。
今年は、今は、夏休みが早く終われば良いと思っている。
2学期まで、あと3週間ちょっと。
果てしないな、と思いながら、私は床に寝転がって眠ってしまった。

スマホの通知音で、目が覚めた。
ぱっと手を伸ばして確認すると、母からの連絡だった。のそのそと立ち上がり、頼まれた通りに炊飯器のスイッチを押して、スマホを充電スペースに投げる。
我ながら、分かりやすい。自分の胸の奥にある気持ちに、嫌でも気付かされる。
私は、彼からの連絡を待っていた。