小栗俊介は木原晴美と順調に交際をすすめていた。お互いの両親とも顔合わせを済ませ、結婚も秒読みとなっていた時だった。ある雨の夜、俊介が車を運転中、居眠り運転の大型トラックに追突され、俊介の車はそのまま前の車に衝突、俊介の足が挟まれ、救出され、すぐに病院に搬送されたが、足を切断するしか方法はなかった。晴美は一大決心をし、しばらく俊介の前から姿を消す。晴美は、看護師の資格を取るため、看護専門学校に入学を決めたのだ。
俊介が目を覚ましたのは、病院の白い天井を見上げた朝だった。ベッドの脇では、俊介の両親と友人たちが心配そうに見守っていたが、そこに晴美の姿はなかった。
「晴美は……?」
尋ねても、誰も答えられなかった。
晴美は、事故の数日後、俊介に何も告げず、姿を消したのだった。
俊介は失意の中、リハビリに取り組み始めた。義足をつけるために、地道な訓練を続ける毎日。痛みもあったが、それ以上に心の痛みが彼を苦しめた。
あの笑顔に、もう二度と会えないのか──。
そんな思いが胸に広がっていく。
一方、晴美は町を離れ、看護専門学校で必死に学んでいた。
俊介のそばに立ち続けるには、ただの恋人ではなく、本当に彼を支えられる存在になりたかった。
朝から晩まで授業と実習。
厳しい日々だったが、晴美は弱音を吐かなかった。すべては、もう一度、俊介と向き合うためだった。
季節がいくつか巡り──
春の風が柔らかく吹く頃、俊介は義足で歩けるようになっていた。
まだぎこちないが、一歩一歩、前へ進んでいた。
そんなある日、病院のリハビリ室に、一人の看護実習生が現れた。真新しい制服に身を包み、少し緊張した面持ちで立っている。それが、晴美だった。
「……晴美?」
俊介は思わず声を上げた。
夢かと思った。
晴美は微笑み、そっと頷いた。
「……会いにきたよ。今度は、あなたの隣に立てる私になって。」
その瞳は、揺るぎなかった。
俊介はこみあげるものを押さえきれず、
ぎこちない足取りで晴美のもとへ歩み寄り、彼女を抱きしめた。
「ありがとう……待ってたよ。」
涙がふたりの頬を伝った。
だけど、それは悲しみの涙じゃなかった。
これからの未来に向かう、温かい涙だった。
晴美は晴れて看護師となり、俊介の支えになった。俊介もリハビリを重ね、自分らしい仕事を見つけて社会復帰した。
そして、桜の咲く春の日。
ふたりは、小さな教会で永遠の愛を誓い合った。
どんな困難も、ふたりで乗り越えていける──そう確信しながら、ふたりは笑い合った。
幸せは、失われたのではなく、新しい形で、そっと芽吹いていたのだった。
俊介が目を覚ましたのは、病院の白い天井を見上げた朝だった。ベッドの脇では、俊介の両親と友人たちが心配そうに見守っていたが、そこに晴美の姿はなかった。
「晴美は……?」
尋ねても、誰も答えられなかった。
晴美は、事故の数日後、俊介に何も告げず、姿を消したのだった。
俊介は失意の中、リハビリに取り組み始めた。義足をつけるために、地道な訓練を続ける毎日。痛みもあったが、それ以上に心の痛みが彼を苦しめた。
あの笑顔に、もう二度と会えないのか──。
そんな思いが胸に広がっていく。
一方、晴美は町を離れ、看護専門学校で必死に学んでいた。
俊介のそばに立ち続けるには、ただの恋人ではなく、本当に彼を支えられる存在になりたかった。
朝から晩まで授業と実習。
厳しい日々だったが、晴美は弱音を吐かなかった。すべては、もう一度、俊介と向き合うためだった。
季節がいくつか巡り──
春の風が柔らかく吹く頃、俊介は義足で歩けるようになっていた。
まだぎこちないが、一歩一歩、前へ進んでいた。
そんなある日、病院のリハビリ室に、一人の看護実習生が現れた。真新しい制服に身を包み、少し緊張した面持ちで立っている。それが、晴美だった。
「……晴美?」
俊介は思わず声を上げた。
夢かと思った。
晴美は微笑み、そっと頷いた。
「……会いにきたよ。今度は、あなたの隣に立てる私になって。」
その瞳は、揺るぎなかった。
俊介はこみあげるものを押さえきれず、
ぎこちない足取りで晴美のもとへ歩み寄り、彼女を抱きしめた。
「ありがとう……待ってたよ。」
涙がふたりの頬を伝った。
だけど、それは悲しみの涙じゃなかった。
これからの未来に向かう、温かい涙だった。
晴美は晴れて看護師となり、俊介の支えになった。俊介もリハビリを重ね、自分らしい仕事を見つけて社会復帰した。
そして、桜の咲く春の日。
ふたりは、小さな教会で永遠の愛を誓い合った。
どんな困難も、ふたりで乗り越えていける──そう確信しながら、ふたりは笑い合った。
幸せは、失われたのではなく、新しい形で、そっと芽吹いていたのだった。



