「うん。宇津井さんは解離性健忘ですね。」

「解離性健忘?」

「解離性健忘とは、心的外傷やストレスによって引き起こされる健忘。つまりは記憶障害のことで、自分にとって重要な情報が思い出せなくなります。」

「私は記憶障害なのですね?」

「そうなりますね。宇津井さんにはある出来事の特定の側面のみ、または一定期間中の特定の出来事のみの選択性健忘と特定の人物や家族に関するすべての情報など、特定のカテゴリーの情報の系統的健忘がありますね。」

「どうしたら治りますか?」

「明宏坊っちゃん落ち着いて。」

「まぁ順を追って説明させて頂きます。」

治療には2つの方法があること、1つは支持的な環境。さらなるトラウマを避けることである。つらい出来事の記憶を取り戻さなければならない緊急の理由がなければ、これをする。2つ目は記憶想起法。催眠と薬物を利用した面接。これは明宏の猛反対により除外。思い出した後も精神療法を行うことが好ましいとされている。つまり仁さんの死に触れないということが先決である。


明宏「―――ということだそうです。」

その夜、宝来家と誉の作戦会議が行われていた。

誉「じゃあ私は雅ちゃんをさらに傷つけたってこと?」

勝宏「そうなりますね。けれどそれなら俺も同罪でしょう。」

智宏「こんなことは、仁くんも望んでいないだろうが、仕方ない。皆、雅くん最優先じゃ。」

隆宏「仁さんの話は極力しない。ということですね。」

勝宏「あき。そんな顔しない。雅さんが心配するだろ。」

明宏「だって…………。もし思い出さなかったら…………どうするの?ずっと雅は仁さんの幻影を追い続けることになんてなったりしたら、僕どうすれば良いか。」

隆宏「そこは愛のチカラじゃない?」

明宏「隆兄うるさい。」

隆兄「あら〜。隆兄傷ついちゃう。」

そんなこんなでお開きとなった。