二人の甘美なる初恋

「もしもし、あき?」

「もしもし。勝兄から電話なんて珍しい。どうしたの?」

「雅さんのことだけど。」

「あー。勝兄から聞いたのバレちゃった。」

「それは別にいい。」

「じゃあ何?」

「仁さんのことだ。」

「ッ…………。」

「分かってるだろうが、雅さんまだ覚えてないみたいだ。自ら事実に蓋をしている。」

「どうすれば……。どうすれば雅は前を向けるんだ。」

「メンタルクリニックに受診するように促せないか?」

「忘れてる状態で、どうやって?僕には無理だよ。雅が苦しんでいるとこ見たくない。」

「じゃあこのままでいいのか?」

「そうは言ってないけど。誉さんが居ればなぁ。」

「たっだいまぁ〜。」

「えっ隆兄?誉さん?」

「良いところに誉さん、帰ってきたな。本当凄えな。また電話するわ。またな。」


隆宏「ただいま、あき。」

明宏「おかえりなさい。誉さん。」

隆宏「あきは冷たいなぁ。」

雅「あれ?母さんなんで……。」

誉「おかえりは?雅。」

雅「ああおかえりなさい。」

誉「ダーリンは本当にいないのね。」

雅「親父なら…………。」

隆宏「雅。いないよ。死んだでしょ。」

雅「そうだっけ?そうだったわ。」

誉「雅。目を覚ましなさい。仁は死んだ。貴方もそのままでいるわけにはいかないわよ。どれだけ宝来さんたちを困らせるの?」

智宏「こら、玄関で騒ぐでない。雅くん、私の部屋に来なさい。」

雅「…………はい。」


明宏「雅、大丈夫かなぁ。」

誉「ガツンと怒られれば良いのよ。」