二人の甘美なる初恋

「勝兄ちゃん。家業を手伝わせてくれ。」

「どうした、明宏。雅さんとの時間減るけど良いのか?」

「雅の理想に近づくには致し方無いだろう?」

「はは。どうせ定職に就いている人がタイプとか言ったんだろう。」

「まあ似たようなもんだ。で、良いのか?」

「仕事ぐらい自分で探せ。その方が雅さん喜ぶと思うけど?」

「じゃあそうする。」

単純な奴だなぁと勝宏は思う。多分、この会社に勤めても腫れ物扱いされるだろう。他の会社に勤めた方が弟の為だ。

「坊っちゃん?これはなんですか?」

「見ての通り履歴書だけど。」

「これは幻覚?夢?」

「失礼な。現実ですよ。」

「なんで今更、正社員に?」

「だって雅、安定した職に就いている人がタイプなんでしょ。」

「そうですけど…………。」

これはいよいよ、まずいぞ。何がって?分かるだろう?

「それより褒めて雅。」

「偉いです。」

「雅。」

「なんでしょう。」

「僕、雅の事好きだよ。」

「ありがとうございます。」

「恋愛対象としてね。」

やばいやばい。頭の中で警報が鳴り響く。

「坊っちゃん、お忘れかもしれませんが私は男ですよ。」

「それがどうした。」

「私の恋愛対象は女性ですゆえ…………。」

「嘘つかないでよ。雅ゲイでしょ。」

「うぅ……。ゲイだからと言って、誰でも良いわけではありません。」

「可能性はあるでしょ?」

「そうかもしれませんが……。ていうか、誰に聞いたんですか?私がゲイって。」

「それは………………。」

「勝宏坊っちゃんでしょう?」

「うっ…………。」

「隠しごとをするのならもっと上手くおやりないさい。」