いつの時だっただろうか、二人で出かけた時だ。関東にしては珍しく雪が降っていた。坊っちゃんはロングコートをなびかせてさっそうと歩いていた。
「明宏坊っちゃん、コートの前を閉めていただけませんか?お風邪をひいてしまいますよ。」
「雅は心配性だな。これぐらい大丈夫だ。」
明宏坊っちゃんはどれだけ言っても、改めてくれなかった。雅と呼ぶのも辞めてほしいと伝えるのは、とうに諦めている。男らしからぬこの名前が嫌いなのだ。
「明宏坊っちゃん。」
「なんだ。」
「そろそろ人生の伴侶を見つけてはいかがですか?」
「イヤだね。」
「想い人とかは?」
「いるにはいるけど。」
「それならば、是非おいでになってください。お待ちしておりますよ。」
《想い人は雅なのに。》
という言葉は既の所で飲み込んだ。
「ねぇ。雅のタイプってどんな人?」
「安定した職についていて、性格が良い年上ですかね。」
「ふーん。」
「私の心配はいりませんよ。」
「えっ…………それって……。」
あらあら、焦ってしまってかわいらしい。
「私は宝来家に身を捧げますし、結婚などいたしません。明宏坊っちゃん一筋ですから。」
明宏坊っちゃんの百面相はとても面白い。こんな8歳も年上の男に恋しても良いことなんてないのに。坊っちゃんにはきっともっと相応しい人が居るはずた。
「明宏坊っちゃん、コートの前を閉めていただけませんか?お風邪をひいてしまいますよ。」
「雅は心配性だな。これぐらい大丈夫だ。」
明宏坊っちゃんはどれだけ言っても、改めてくれなかった。雅と呼ぶのも辞めてほしいと伝えるのは、とうに諦めている。男らしからぬこの名前が嫌いなのだ。
「明宏坊っちゃん。」
「なんだ。」
「そろそろ人生の伴侶を見つけてはいかがですか?」
「イヤだね。」
「想い人とかは?」
「いるにはいるけど。」
「それならば、是非おいでになってください。お待ちしておりますよ。」
《想い人は雅なのに。》
という言葉は既の所で飲み込んだ。
「ねぇ。雅のタイプってどんな人?」
「安定した職についていて、性格が良い年上ですかね。」
「ふーん。」
「私の心配はいりませんよ。」
「えっ…………それって……。」
あらあら、焦ってしまってかわいらしい。
「私は宝来家に身を捧げますし、結婚などいたしません。明宏坊っちゃん一筋ですから。」
明宏坊っちゃんの百面相はとても面白い。こんな8歳も年上の男に恋しても良いことなんてないのに。坊っちゃんにはきっともっと相応しい人が居るはずた。



