私、桜井美咲は、高校2年生。普通の女子高生...のはずだった。
ある日の放課後、帰り道で不思議な出来事に遭遇した。道端に落ちていた古びたスマートフォン。拾い上げると、突然画面が点灯し、奇妙なアプリが起動した。
「現実改変アプリ」
半信半疑で触れてみると、驚くべきことが起こった。指先で空中をスワイプすると、目の前の景色が変わるのだ。木々が花開き、道路が川に変わる。まるでARゲームのような不思議な体験。
最初は面白半分だった。でも、このアプリには恐ろしい副作用があった。使えば使うほど、現実世界が歪んでいく。そして、私以外の人々は何も気づかない。
翌日、学校に行くと、クラスメイトの姿が少し...違っていた。親友の由香里の髪が突然金髪に。大好きな先輩の田中くんの目の色が紫に。誰も違和感を感じていない。
そんな中、転校してきたのが緑川 空(みどりかわ そら)。彼だけは、この世界の異変に気づいているようだった。
「桜井さん、君が何かしたんだろ?」
放課後、空に呼び出された私は、おそるおそる事情を説明した。
「やっぱりな」空はため息をつく。「実は俺も...似たようなアプリを持ってるんだ」
空が取り出したのは、私のとよく似た古びたスマホ。でも彼のアプリは「現実修復アプリ」。
「このままじゃ、世界が崩壊する。一緒に元に戻そう」
空の真剣な眼差しに、胸が高鳴る。こんな非日常的な状況なのに、なぜか恋の予感。
でも、現実を元に戻すということは...。由香里の金髪も、田中先輩の紫の瞳も、そして...空との出会いも消えてしまう?
私たちは、歪んだ現実と、生まれたばかりの恋の間で揺れ動く。
世界を救うか、それとも...。
スマホの画面に「START」の文字が浮かぶ。私たちの指が、そっと画面に近づく——。

私たちの指が画面に触れた瞬間、世界が光に包まれた。
目を開けると、そこは見知らぬ空間。無限に広がる白い世界の中で、私と空は浮遊していた。
「ここは...?」私が呟くと、空が答えた。「現実と非現実の狭間だと思う」
突然、私たちの周りに無数の泡のような球体が現れた。それぞれの中に、様々な風景が映し出されている。
「これらは...私が変えてしまった現実なのかな」
金髪の由香里、紫の瞳の田中先輩、そして私と空が出会うシーン。全てが泡の中に映し出されていた。
「美咲、選ばなきゃいけないんだ」空が真剣な表情で言う。「全てを元に戻すか、それとも...」
その時、ひとつの泡が大きく膨らみ、私たちを包み込んだ。
そこに映し出されたのは、想像もしなかった未来の光景。
私と空が手を取り合い、笑顔で歩いている。周りには、金髪の由香里も紫眼の田中先輩もいる。そして、私たちの周りには、現実と非現実が不思議と調和した世界が広がっていた。
「これは...」
「僕たちが作り出せる、新しい現実かもしれない」空がつぶやいた。
その瞬間、私は理解した。現実を「戻す」のではなく、「創る」ことができるのだと。
「空、一緒に作ろう。私たちの理想の現実を」
私たちは手を取り合い、新しい世界を思い描いた。少しずつ歪んだ部分を修正しながら、でも面白い要素は残しながら。
光が再び私たちを包み込み、目を開けると、そこは見慣れた学校の屋上だった。
由香里は金髪のままで、田中先輩の目は紫のまま。でも、誰もそれを不思議がらない。
「やったね、美咲」空が微笑む。「僕たちの現実だ」
その時、空のポケットから古びたスマホが滑り落ちた。画面には新しいアプリが。
「現実共創アプリ」
私たちは顔を見合わせ、笑った。これからの未来は、きっと想像以上に楽しいものになるだろう。
そして、私たちの新しい物語が始まった——。