その夜、一同は再びそれぞれの部屋へ戻った。高槻翔太の失踪以来、誰もが神経を尖らせており、部屋に鍵をかける音が廊下に響いた。
しかし深夜3時頃――またしても異変が起こった。
「助けて……！」
女性の悲鳴が廊下に響き渡った。それを聞いて飛び起きた紗英と悠斗は、それぞれ懐中電灯を手に廊下へ飛び出した。
「美咲！？」
紗英が叫ぶ。声の主は明らかに佐藤美咲だった。しかし、美咲の部屋へ駆けつけた二人が目にしたものは――またしても“空っぽ”の部屋だった。
「また……消えた。」
紗英は唇を噛みしめながら呟いた。机の上には昨夜と同じく血文字が残されている。
「生きて帰れる者は一人だけ」 翌朝、ダイニングルームには教授と三浦悠斗、そして白石紗英だけが集まった。佐藤美咲も高槻翔太も姿を現さない。紗英は苛立ちを隠せず、教授に詰め寄った。
「教授！ これはどういうことですか？ あなたは何か知っているんじゃないんですか？」
しかし教授はただ微笑むばかりだった。「私はただ、この館で君たち自身に答えを見つけてもらいたいだけだよ。」
「ふざけないでください！」
紗英が声を荒げた。その時、不意に悠斗が口を開いた。
「……この状況では、全員を信用することはできない。」
その言葉に紗英と教授は振り返る。「僕たち三人の中にも、“仕掛け”側の人間がいる可能性がある。」
「何ですって？」
紗英は目を見開いた。
「考えてみろ。」
悠斗は冷静な口調で続ける。「この館には外部から侵入者が入れるような形跡はない。つまり、高槻や美咲を消した犯人は、この中にいる可能性が高いんだ。」
紗英は反論しようとしたものの、その言葉に反証できる材料もなく、ただ黙り込むしかなかった。一方で教授だけは相変わらず微笑み続けている。その表情にはどこか余裕すら感じられた。