館内は薄暗く、埃っぽい空気が漂っていた。広大なエントランスホールには巨大なシャンデリアが吊るされており、その下には古びた赤い絨毯が敷かれている。壁には年代物の絵画や鏡が飾られており、どれも不気味なほどに色褪せていた。
「なんだか映画のセットみたいだな。」
高槻が軽口を叩くと、美咲が少し笑った。「ホラー映画なら絶対に最初に死ぬタイプね、高槻くん。」
「やめろよ！」
高槻が笑いながら返す。そのやり取りに、一瞬だけ場の緊張感が和らいだ。
教授は一行をダイニングルームへと案内した。そこには長いテーブルと椅子が並べられており、テーブルの中央には古びた燭台が置かれている。教授は一同に向き直ると、厳かな声で言った。
「これから君たちには、この館で一週間過ごしてもらう。その間、外部との連絡は一切取れない。そして、毎晩このダイニングルームで集まり、その日の出来事を報告し合うこと。」
「報告って？」
高槻が首を傾げる。
「この館には“秘密”があると言っただろう。それを解き明かすためには、君たち自身の観察力と推理力が必要だ。そして、このゲームにはもう一つ重要なルールがある。」
教授は一瞬言葉を切り、不気味な笑みを浮かべた。
「誰か一人でも“死んだ”場合、その真相を解き明かすまでここから出ることはできない。」
その言葉に、一同は凍りついた。 その夜、一行はそれぞれ割り当てられた部屋で眠りについた。しかし深夜2時頃、高槻翔太の部屋から悲鳴とも呻き声ともつかない音が聞こえた。それに気づいて駆けつけた紗英と美咲。しかし部屋の扉は内側から鍵が掛けられており、中へ入ることはできない。
「翔太！ 開けて！」
美咲が叫ぶも応答はない。やむなく教授を呼び、扉を破壊して中へ入った時――そこには誰もいなかった。
高槻翔太の姿は消え失せており、その代わりに机の上には赤黒い血文字だけが残されていた。
「生きて帰れる者は一人だけ」