聖女候補たちの二回目のミッションが終了しました。このミッションでは、夜明けまでに六名の聖女候補がビンセントに捕まって、脱落となりました。
ミッション終了後、ビンセントは試験官たちを集めると、彼女たちに頭を下げて謝罪しました。
「今回の件は私にも非があるからな。ジョーカーの件で頭に血が昇っていたんだ。そんな中でも、君たちはよく対応してくれた。本当に感謝しているよ」
ビンセントが自分たちのことを処分するだろうと覚悟していた試験官たちは、彼がまるで別人のように真摯に謝罪し、感謝の言葉をかけてきたことに驚きます。
(今回のミッション中に何か思うことがあったのかしら?)
試験官たちはビンセントの態度に疑問を感じましたが、これからのことを考えて、彼の改心を素直に喜ぶことにしました。
残る聖女候補は五名。ケイシィ、カタリナ、マーガレット、プリシラ、そしてクラリスです。
次の日の朝、ビンセントは五名の候補者を洋館のホールに集めました。
「おはよう諸君。十二名いた聖女候補も、いまや残り五名となった。ここにいる五名は優秀な逸材ばかりだ。しかし我々はそんな君たちの中からさらに優秀な一人を選ばないといけない。そこで、早速だが、三回目のミッションを実施することになった」
ビンセントはそれまでの威圧的な口調とは異なり、優しく丁寧な言葉遣いで候補者たちに語りかけています。ケイシィとカタリナは、彼の雰囲気が変わったことに違和感を感じていました。
「今回のミッションは、モンスター討伐だ。期限は二週間。君たちにはこの期間内に島にいるモンスターを討伐してもらう。モンスターには、我々が強さと珍しさによってランクを設定している。もちろん、よりランクの高いモンスターを討伐した方が評価が高くなる。ただし、ただモンスターを倒すだけではダメだ。討伐の証として、モンスターの身体の一部を持ってきてもらうよ。何か質問はあるかな?」
以前のビンセントでは考えられないほど、彼が丁寧にミッションの説明をしていることで、ケイシィとカタリナはますます違和感を感じています。
「質問は無いようだね。今回、私たちが討伐対象として設定したモンスターのリストを用意させてもらった。モンスターを倒す時の参考にしてくれ。君たちにも準備が必要だろうから、ミッション開始は二日後の朝とする。それまでに討伐の用意を済ませておくといい。以上だ」
ケイシィとカタリナは、今後の作戦を立てるために、洋館の二階に上がりカタリナの部屋に入りました。
「ミッションの説明をしている時のビンセント、明らかに様子がおかしかったわ。まるで別人みたいだった」
「カタリナも気づいていたか。下手くそな演技だからな。おそらく誰かがビンセントになりすましているよ。本物の彼はもうこの世にはいないだろうね」
「でも、偽者はビンセントになりすまして、何をするつもりなのかしら?」
「おそらく、候補者の中の誰かと組んで、この後の試練を有利に進めるつもりなんだと思う。幸い、今回のミッションが始まるまでには、二日間の準備期間があるから、まずはビンセントの動向を探って、彼になりすました奴の正体を暴いてやろう」
ケイシィの予想どおり、ビンセントが、聖女候補の一人であるプリシラと密会していました。実は、プリシラは魔女で、自身と契約しているアモンという名の悪魔をジョーカーの遺体に取り憑かせていました。
そして、ジョーカーの身体に憑依したアモンを使ってビンセントを倒し、この悪魔を今度はビンセントの身体に取り憑かせていたのです。
「ふふ、アモン。ビンセントを手に入れた今、私たちの勝ちは保証されているわ。後は、目立ちすぎないように無難にミッションをこなすだけ。ま、いざとなったら事故に見せかけて他の聖女候補たちを全員消せばいいだけだしね」
プリシラの横には恍惚の表情を浮かべた裸の女性が座っています。
「ビンセントを手に入れたお礼に、この試験官の女をあげるわ。こないだの生意気な子と違って、あなたの好みでしょう? 私がしっかり調教しておいたから、あなたの好きにしていいわよ」
試験官の女性はビンセントの身体を乗っ取ったアモンにキスをすると、後ろを向いてお尻を彼の前に突き出しました。
「ね、いい感じの変態になったでしょう? ……待ってアモン。隠れて私たちのことを覗いている邪魔者がいるわ。出てきなさい」
ビンセントの跡をつけていたケイシィとカタリナがプリシラの前に姿を現します。
「なるほど、あなたが黒幕だったのね」
プリシラは想定していなかった意外な人物が出てきたため、一瞬驚いた表情をしますが、すぐに冷静さを取り戻して二人に語りかけます。
「あら、あなたたちは確か、ケイシィとカタリナだったわね。ふふ、好奇心は猫を殺すって言葉を知らなかったのかしら? 私たちの秘密を知った以上、生かしては帰さないよ! あなたたちについてきた試験官のお姉さんたちもね!」
突然、ビンセントがおぞましい金切り声を発します。この世の者が発するとはとても思えないような声に当てられた人間たちは、その場に倒れ込んでしまいました。
「ふふ、アモンに死の呪いをかけてもらったわ。これであなたたちはこの世からおさらばってわけ。あはははははぁ!」
アモンが唱えた即死魔法で試験官を含めた全員を倒したプリシラは、勝ち誇った顔で口元に手を当てながら大声で笑っています。
しかし、そのプリシラの目の前でケイシィがいきなり立ち上がります。
「あははははは……は?」
プリシラは突然の出来事に何が起きたのかしばらく理解できず、言葉を失いました。
「契約した悪魔に即死魔法を使わせるとは、あなた、なかなかやるじゃない。けど、残念ね。私もあなたと同じ魔女なの。魔法には詳しいからきちんと対策をしているのよ」
ケイシィは、即死魔法に耐性のあるアイテムを身につけていました。
そして、自分が魔女だということを周囲に知られたくないため、他の人間たちが倒れるまで倒されたふりをしていたのです。
「悪いけど、あまりあなたに時間をかけてはいられないの。カタリナを蘇生させないといけないからね」
「ふん、みくびらないでもらいたいわ。あなたも魔女なら私と同じように虐げられてきたんでしょ? 私はね、幼い頃からずっと獣以下の扱いを受けてきたの。だから聖女になりすまして――」
ケイシィと目が合ったプリシラは後悔しました。彼女から、おぞましいほどの殺気を感じたからです。抑えていた魔力を全て解放したケイシィは、プリシラが恐怖で動けなくなるほどのプレッシャーを与えています。
「あなたが何をしようと私には関係ない。けれど、あなたは私を殺そうとしたんだから、今から私に殺されても文句は言えないよね?」
ケイシィのおぞましい殺気に当てられて怯えたプリシラは、思わず彼女と契約した悪魔に助けを求めます。
「ア、アモン、助けて、アモン。私を守ってよ――」
「ふふ、あなたが契約した悪魔なら、ビンセントの身体をおいて、とっくに逃げ出したわよ」
「そんな……」
あまりの恐怖にプリシラは動けなくなりました。彼女の足下には、ふとももを伝って滴り落ちた、まだ温かい液体が溜まっています。
「あ……あ……」
プリシラはもはや声を出すことも出来なくなっていました。
ケイシィは風の魔法で高速で回転する空気の刃を作り出して、プリシラを狙って刃を飛ばしました。円の形をした高速で回転する刃は、プリシラの首を綺麗に切り落とします。彼女の首元から真紅の鮮血が噴き出して、首を失った胴体が崩れ落ちるように地面に倒れ込みました。
「あなたごとき、私の手を汚すまでもないわ。さて、カタリナを蘇生させてあげないとね。ん? カタリナ、あなた生きてるの?」
カタリナはゆっくりと立ち上がると、ケイシィに頭を下げます。
「ごめんケイシィ。実は私も、魔法に耐性があるから、即死魔法が効かなかったみたい」
実は、魔法に耐性があるカタリナもプリシラの即死魔法に倒されたふりをしていました。
「なるほど。そういうことだったのね。でもカタリナ、あなたは私が魔女だと知って、がっかりしたでしょう? 私も彼女と同じで聖女になりすますつもりなのよ……」
ケイシィは真実を知ったカタリナが自分に失望することを覚悟します。
しかし、カタリナからは意外な答えが返ってきました。
「別にあなたが何者でも、私の命の恩人であることに変わりはないから。私はあなたを信じるわ!」
「うれしいわカタリナ。私がどうして聖女になりたいのか、教えてあげるから、一つ約束してくれる?」
「もちろんよ、ケイシィ」
「私はね、処刑された聖女ソフィアと親友だったの。彼女はね、無実の罪を着せられていたのよ。私はそれを知ったから、聖女になりすまして、この国の全ての人々に復讐をすることにしたの。いずれ私がこの国を滅ぼすから、あなたはその前にこの国から脱出してね。私の本当の名前は、カッサンドラ。カッサンドラ=クリムゾン=オークスよ。覚えておいてね」
「カッサンドラか。素晴らしい名前ね。大丈夫、絶対忘れないよ。もちろん、あなたが国を滅ぼそうとしていることもね」
「よかった。ねえ、カタリナ、前に私とした約束、覚えてる?」
「もちろんよ。私とケイシィは全力で勝負するってことでしょ?」
「そうそう。それじゃあ悪いけど、今からあなたを倒させてもらうよ」
そう言うと、ケイシィは素早くカタリナのそばに近づいて、彼女の首を絞めました。
「あなたには魔法が効かないから、ちょっと手荒な方法になっちゃうけど、許してね」
ケイシィはそのままカタリナの意識を失わせました。
次にカタリナが目を覚ました時、彼女は洋館のベッドの上にいました。
「ふふ、私、負けちゃったのね。でも、これでいいのよケイシィ。あなたは必ず聖女になって、この国を滅ぼしてね」
カタリナは近くにいた試験官に、試練をリタイアすることを告げました。その後、孤島の試練はケイシィが最後まで勝ち残り、彼女が聖女候補に選ばれました。
試練から三ヶ月後、ケイシィはローア聖教会から正式に聖女として選出されました。
そして、ベルマリク王国の建国記念日に、自分の正体が魔女であることを明かします。同時に彼女は、カタリナに話したとおりに、巨大な悪魔を召喚して、ベルマリク王国を滅ぼしました。
その速報記事を新聞で見ていた一人の少女が静かにつぶやきます。
「私にはわかるわ。自分の復讐を果たして、お空へと旅立ったのよね、ケイシィ。あなたは私を助けてくれた。だから今度は私があなたを助けてあげる。どんな手を使ってもね」
カタリナは魔法で彼女を現世へと復活させるために、魔女になることを決めました。
ミッション終了後、ビンセントは試験官たちを集めると、彼女たちに頭を下げて謝罪しました。
「今回の件は私にも非があるからな。ジョーカーの件で頭に血が昇っていたんだ。そんな中でも、君たちはよく対応してくれた。本当に感謝しているよ」
ビンセントが自分たちのことを処分するだろうと覚悟していた試験官たちは、彼がまるで別人のように真摯に謝罪し、感謝の言葉をかけてきたことに驚きます。
(今回のミッション中に何か思うことがあったのかしら?)
試験官たちはビンセントの態度に疑問を感じましたが、これからのことを考えて、彼の改心を素直に喜ぶことにしました。
残る聖女候補は五名。ケイシィ、カタリナ、マーガレット、プリシラ、そしてクラリスです。
次の日の朝、ビンセントは五名の候補者を洋館のホールに集めました。
「おはよう諸君。十二名いた聖女候補も、いまや残り五名となった。ここにいる五名は優秀な逸材ばかりだ。しかし我々はそんな君たちの中からさらに優秀な一人を選ばないといけない。そこで、早速だが、三回目のミッションを実施することになった」
ビンセントはそれまでの威圧的な口調とは異なり、優しく丁寧な言葉遣いで候補者たちに語りかけています。ケイシィとカタリナは、彼の雰囲気が変わったことに違和感を感じていました。
「今回のミッションは、モンスター討伐だ。期限は二週間。君たちにはこの期間内に島にいるモンスターを討伐してもらう。モンスターには、我々が強さと珍しさによってランクを設定している。もちろん、よりランクの高いモンスターを討伐した方が評価が高くなる。ただし、ただモンスターを倒すだけではダメだ。討伐の証として、モンスターの身体の一部を持ってきてもらうよ。何か質問はあるかな?」
以前のビンセントでは考えられないほど、彼が丁寧にミッションの説明をしていることで、ケイシィとカタリナはますます違和感を感じています。
「質問は無いようだね。今回、私たちが討伐対象として設定したモンスターのリストを用意させてもらった。モンスターを倒す時の参考にしてくれ。君たちにも準備が必要だろうから、ミッション開始は二日後の朝とする。それまでに討伐の用意を済ませておくといい。以上だ」
ケイシィとカタリナは、今後の作戦を立てるために、洋館の二階に上がりカタリナの部屋に入りました。
「ミッションの説明をしている時のビンセント、明らかに様子がおかしかったわ。まるで別人みたいだった」
「カタリナも気づいていたか。下手くそな演技だからな。おそらく誰かがビンセントになりすましているよ。本物の彼はもうこの世にはいないだろうね」
「でも、偽者はビンセントになりすまして、何をするつもりなのかしら?」
「おそらく、候補者の中の誰かと組んで、この後の試練を有利に進めるつもりなんだと思う。幸い、今回のミッションが始まるまでには、二日間の準備期間があるから、まずはビンセントの動向を探って、彼になりすました奴の正体を暴いてやろう」
ケイシィの予想どおり、ビンセントが、聖女候補の一人であるプリシラと密会していました。実は、プリシラは魔女で、自身と契約しているアモンという名の悪魔をジョーカーの遺体に取り憑かせていました。
そして、ジョーカーの身体に憑依したアモンを使ってビンセントを倒し、この悪魔を今度はビンセントの身体に取り憑かせていたのです。
「ふふ、アモン。ビンセントを手に入れた今、私たちの勝ちは保証されているわ。後は、目立ちすぎないように無難にミッションをこなすだけ。ま、いざとなったら事故に見せかけて他の聖女候補たちを全員消せばいいだけだしね」
プリシラの横には恍惚の表情を浮かべた裸の女性が座っています。
「ビンセントを手に入れたお礼に、この試験官の女をあげるわ。こないだの生意気な子と違って、あなたの好みでしょう? 私がしっかり調教しておいたから、あなたの好きにしていいわよ」
試験官の女性はビンセントの身体を乗っ取ったアモンにキスをすると、後ろを向いてお尻を彼の前に突き出しました。
「ね、いい感じの変態になったでしょう? ……待ってアモン。隠れて私たちのことを覗いている邪魔者がいるわ。出てきなさい」
ビンセントの跡をつけていたケイシィとカタリナがプリシラの前に姿を現します。
「なるほど、あなたが黒幕だったのね」
プリシラは想定していなかった意外な人物が出てきたため、一瞬驚いた表情をしますが、すぐに冷静さを取り戻して二人に語りかけます。
「あら、あなたたちは確か、ケイシィとカタリナだったわね。ふふ、好奇心は猫を殺すって言葉を知らなかったのかしら? 私たちの秘密を知った以上、生かしては帰さないよ! あなたたちについてきた試験官のお姉さんたちもね!」
突然、ビンセントがおぞましい金切り声を発します。この世の者が発するとはとても思えないような声に当てられた人間たちは、その場に倒れ込んでしまいました。
「ふふ、アモンに死の呪いをかけてもらったわ。これであなたたちはこの世からおさらばってわけ。あはははははぁ!」
アモンが唱えた即死魔法で試験官を含めた全員を倒したプリシラは、勝ち誇った顔で口元に手を当てながら大声で笑っています。
しかし、そのプリシラの目の前でケイシィがいきなり立ち上がります。
「あははははは……は?」
プリシラは突然の出来事に何が起きたのかしばらく理解できず、言葉を失いました。
「契約した悪魔に即死魔法を使わせるとは、あなた、なかなかやるじゃない。けど、残念ね。私もあなたと同じ魔女なの。魔法には詳しいからきちんと対策をしているのよ」
ケイシィは、即死魔法に耐性のあるアイテムを身につけていました。
そして、自分が魔女だということを周囲に知られたくないため、他の人間たちが倒れるまで倒されたふりをしていたのです。
「悪いけど、あまりあなたに時間をかけてはいられないの。カタリナを蘇生させないといけないからね」
「ふん、みくびらないでもらいたいわ。あなたも魔女なら私と同じように虐げられてきたんでしょ? 私はね、幼い頃からずっと獣以下の扱いを受けてきたの。だから聖女になりすまして――」
ケイシィと目が合ったプリシラは後悔しました。彼女から、おぞましいほどの殺気を感じたからです。抑えていた魔力を全て解放したケイシィは、プリシラが恐怖で動けなくなるほどのプレッシャーを与えています。
「あなたが何をしようと私には関係ない。けれど、あなたは私を殺そうとしたんだから、今から私に殺されても文句は言えないよね?」
ケイシィのおぞましい殺気に当てられて怯えたプリシラは、思わず彼女と契約した悪魔に助けを求めます。
「ア、アモン、助けて、アモン。私を守ってよ――」
「ふふ、あなたが契約した悪魔なら、ビンセントの身体をおいて、とっくに逃げ出したわよ」
「そんな……」
あまりの恐怖にプリシラは動けなくなりました。彼女の足下には、ふとももを伝って滴り落ちた、まだ温かい液体が溜まっています。
「あ……あ……」
プリシラはもはや声を出すことも出来なくなっていました。
ケイシィは風の魔法で高速で回転する空気の刃を作り出して、プリシラを狙って刃を飛ばしました。円の形をした高速で回転する刃は、プリシラの首を綺麗に切り落とします。彼女の首元から真紅の鮮血が噴き出して、首を失った胴体が崩れ落ちるように地面に倒れ込みました。
「あなたごとき、私の手を汚すまでもないわ。さて、カタリナを蘇生させてあげないとね。ん? カタリナ、あなた生きてるの?」
カタリナはゆっくりと立ち上がると、ケイシィに頭を下げます。
「ごめんケイシィ。実は私も、魔法に耐性があるから、即死魔法が効かなかったみたい」
実は、魔法に耐性があるカタリナもプリシラの即死魔法に倒されたふりをしていました。
「なるほど。そういうことだったのね。でもカタリナ、あなたは私が魔女だと知って、がっかりしたでしょう? 私も彼女と同じで聖女になりすますつもりなのよ……」
ケイシィは真実を知ったカタリナが自分に失望することを覚悟します。
しかし、カタリナからは意外な答えが返ってきました。
「別にあなたが何者でも、私の命の恩人であることに変わりはないから。私はあなたを信じるわ!」
「うれしいわカタリナ。私がどうして聖女になりたいのか、教えてあげるから、一つ約束してくれる?」
「もちろんよ、ケイシィ」
「私はね、処刑された聖女ソフィアと親友だったの。彼女はね、無実の罪を着せられていたのよ。私はそれを知ったから、聖女になりすまして、この国の全ての人々に復讐をすることにしたの。いずれ私がこの国を滅ぼすから、あなたはその前にこの国から脱出してね。私の本当の名前は、カッサンドラ。カッサンドラ=クリムゾン=オークスよ。覚えておいてね」
「カッサンドラか。素晴らしい名前ね。大丈夫、絶対忘れないよ。もちろん、あなたが国を滅ぼそうとしていることもね」
「よかった。ねえ、カタリナ、前に私とした約束、覚えてる?」
「もちろんよ。私とケイシィは全力で勝負するってことでしょ?」
「そうそう。それじゃあ悪いけど、今からあなたを倒させてもらうよ」
そう言うと、ケイシィは素早くカタリナのそばに近づいて、彼女の首を絞めました。
「あなたには魔法が効かないから、ちょっと手荒な方法になっちゃうけど、許してね」
ケイシィはそのままカタリナの意識を失わせました。
次にカタリナが目を覚ました時、彼女は洋館のベッドの上にいました。
「ふふ、私、負けちゃったのね。でも、これでいいのよケイシィ。あなたは必ず聖女になって、この国を滅ぼしてね」
カタリナは近くにいた試験官に、試練をリタイアすることを告げました。その後、孤島の試練はケイシィが最後まで勝ち残り、彼女が聖女候補に選ばれました。
試練から三ヶ月後、ケイシィはローア聖教会から正式に聖女として選出されました。
そして、ベルマリク王国の建国記念日に、自分の正体が魔女であることを明かします。同時に彼女は、カタリナに話したとおりに、巨大な悪魔を召喚して、ベルマリク王国を滅ぼしました。
その速報記事を新聞で見ていた一人の少女が静かにつぶやきます。
「私にはわかるわ。自分の復讐を果たして、お空へと旅立ったのよね、ケイシィ。あなたは私を助けてくれた。だから今度は私があなたを助けてあげる。どんな手を使ってもね」
カタリナは魔法で彼女を現世へと復活させるために、魔女になることを決めました。



