「笑顔が嘘くさい」と言ってきた転校生が恋人の親友になった

 それまで和希は、幸人といることに、不安なんてなかった。ただ、幸人を思っているだけでよかった。幸人はきっと素敵な恋人を作るんだろうけど、ずっと思っていられる。そう思っていた。
 けれど、幸人と恋人になってから。和希の心に、不安が押し寄せるようになった。
 それまではずっと、平行線でいられた関係だけど、思いあってしまったら。結び合ってしまったら、いつか離れてしまうんじゃないか、そんな恐怖がやってきたのだ。
 大好きすぎて、幸福すぎて――不安になるなんて、あまりに信じられない、贅沢なことだ。
 幸人の腕の中は、泣きたいくらいの幸せと、未来への不安を和希に与えた。
 なのに、離れたくなくて。気持ちも止められなくて。
 どうしたらずっと、幸人と一緒にいられるのか。
 和希には、どうしてもわからなかった。
 幸人に、嫌われたくない。そんな切羽詰まった思いだけが、和希の中で膨れ上がっていた。