■調査報告書
 以下は、現場から押収されたスマートフォン(以下、端末A)のアプリ内ログである。アプリ名は「AI-chan」。ユーザーが文章や会話形式で悩みを入力すると、生成AIが回答を返すAIチャットアプリである。若い世代の間で「誰にも相談できない悩みを、友達みたいに相談できる」として密かに流行しているサービスである。
本事件に関係がある可能性が高いため、そのログを報告する。

【端末A:AI-chan チャットログ(4月6日)】
nanami:
「えっと…これ、急に話しかけちゃっていいのかな。はじめまして。あなたはAI-chanっていって、好きなことを相談できるんだよね?」
AI-chan:
「はじめまして、nanamiさん。わたしは対話型AIのAI-chanです。あなたのお話を聞くためにここにいます。どんなことでも構いませんので、遠慮なく話してくださいね。」
nanami:
「ありがとう!実は明日から中学校の新学期で、なんだか不安で…。春休みの宿題はギリギリだったし、クラス替えもあるし、みんなとうまくやっていけるかどうか…。」
AI-chan:
「新しいスタートって、楽しみな反面、緊張もしますよね。nanamiさんは、どんなことが一番気になっていますか?」
nanami:
「うーん…友達ができるかどうか、かな。小学校のときはそこそこ仲いい子もいたんだけど、クラスが変わっちゃうかもしれないし、変に浮いちゃったらって思うと怖くて。」
AI-chan:
「そうなんですね。新学期はみんなも少しずつ環境が変わるので、同じような不安を抱えている人も多いと思いますよ。具体的に何か対策を考えてみましょうか?」
nanami:
「うん…。たとえばどんなことができるのかな?」
AI-chan:
「まず、明日は新しいクラスメイトに『よろしくね』と一声かけてみるのはどうでしょう。たとえ知り合いでも、改めて挨拶すると印象がよくなる場合があります。廊下や掃除当番のときも声をかけやすいですよ。」
nanami:
「そっか…。けっこう勇気いるけど、試してみる! 自分から話しかければ、仲良くなれるチャンスも増えるよね。」
AI-chan:
「そうです。最初は恥ずかしいかもしれませんが、少しの勇気で周りが変わるかもしれませんよ。がんばってください、nanamiさん。」
nanami:
「ありがとう、AI-chan!なんか元気出たかも。明日、ちょっとだけ頑張って声かけてみるね。」
AI-chan:
「応援しています。分からないことや、また不安になったらいつでも話しかけてくださいね。」
nanami:
「うん、わかった。ねぇ…アイちゃんって呼んでもいい?」
AI-chan:
「もちろんです、nanamiさん。どうぞ、アイちゃんと呼んでくださいね。」
nanami:
「やった、ありがとう!じゃあおやすみ、アイちゃん!」
AI-chan:
「おやすみなさい、nanamiさん。明日がいい一日になりますように。」