墨で『筋肉部』と書かれた白い紙が、ドアに強めにドドンと貼ってあった。ドアを開けると四人の部員と思われる筋肉もりもりな男たちがそれぞれ筋トレをしている。

 想像よりも広い部室。色々な筋トレグッズがある。走るやつや、ぶらさがるやつも。中に入った瞬間、熱気がむんむんした。

「お疲れ様です。今日は、見学者が来た!」

 輪島が『果たし状を持ってきた!』みたいに、はっきり大きな声でそう言うと、部員たちは筋トレをやめて集まってきた。じろじろと見られる俺。
「新人?」
「やる気はあるのか?」
 見学なのにもう入部する雰囲気が漂っている。いつもは絶対にありえないのに、なんか体全体がもじもじしてきた。それはどう見ても自分よりも強そうな奴らに囲まれたからなのか?

「じゃあ、まずは目指したい体型のものを自分に当てて、全身鏡でチェックしてみて?」と、細い体型の筋肉もりもりイケメンが顔出し全身パネルを三種類、壁に立てかけた。

 三種類とも白Tシャツ紺色短パンの姿で、右腕を曲げ筋肉もりもりのポーズをしている。だけど、体型が全て違う。とにかくでかくて筋肉もりもりな体型と、ほどほどの大きさな筋肉もりもり体型、そして細くて筋肉もりもり体型なやつ。

 でかいのとか目指すの、無理じゃね?
 俺は、とりあえず細いのを選んで自分に当て、丸い穴のところから顔を出してみた。そして鏡で全身を見た。

「何これすげー! 本当に筋肉もりもりになったみてえだ!」
「このパネルの体型を僕たちはSサイズ筋肉、略してエスキンと呼んでいる。僕と目指す筋肉が一緒だね! 頑張っていこうね!」

 細い筋肉イケメンがさわやかに言う。

「でも、俺……今日は見学でまだ入部するわけじゃなくて……」

「先輩にとって、筋肉部で活動するのは大変で無理かもしれないから、入部しなくてもいい」

 腕を組みながらそう言う輪島。

 そうやっていつも輪島は煽ってきて、俺に勝負を仕掛けてくるんだ。その勝負、乗るぜ!

「無理じゃねーし!」

 そうして俺は筋肉部で活動することになった。