輪島優勝おめでとう会から一ヶ月後。
今日は学校が休みで、朝から部活動。
今、体育館から持ってきたマット十枚ぐらいの上に、俺とお揃いの筋肉最強Tシャツを着た輪島が、仰向けになってゴロンしている。輪島の頭の方には秦が、脚の方には青木副部長がいつでも支え補助が出来るように立っていた。そして俺は、輪島の中心部の前にいた。
「背中は伸ばせ、曲げるな!」
「腕だけに頼らない!」
輪島と森部長の指導声が部室内に響く。
俺は〝お姫様抱っこ強化トレーニング〟を受けていた。
俺が振られた日には、続きがあった。
*
「だって先輩、お姫様抱っこがまだできないじゃないですか」
あの日、輪島は俺の手首を掴みながら悲しそうな表情でそう言った。
「なんだよ、それ、今関係ないじゃん!」
「あるんだ……あるんすよ……俺も、恋人になりたいんすよ、グスン」
「わ、輪島も恋人になりたいと? 嘘だ、じゃあなんで今『なれない!』って言い切った?」
「……『好きな人をお姫様抱っこしたい』という夢が、先輩にあるからだ」
話によると、輪島も俺に告白しようとずっと考えていたらしい。「もしも恋人になれば、本当に一生、先輩から離れるつもりはない」と、輪島は言い切った。でも輪島の中では恋人以外をお姫様抱っこした時点で浮気で。もしもお姫様抱っこできないのが耐えられなくなった俺が他の人をお姫様抱っこしてしまったら、ふたりの関係は気まずくなる。でも俺の夢は好きな人をお姫様抱っこすることで。でも俺は輪島をお姫様抱っこできないから、このままの関係でいる方がいいのかと考えていたらしい……。
――輪島の考えが分かるような、ぐちゃぐちゃぐるぐるしていて、よく分からんような。そして俺は、輪島をお姫様抱っこできなくても浮気しないし。なんならできなくても別にいい。
「長いし、でもでも言いすぎててよく分からん。短くまとめると、どうなる?」
「先輩が俺のことをお姫様抱っこできるようになったら、恋人になってほしいと直接先輩に言うつもりでいた!」
――輪島からの恋人になろう!
やっぱり、輪島から告白されたい。その方が安心が増す。
――だって、人から愛されてるって、思ったことがなかったから。輪島から〝恋人になりたい〟って言われて、さらに繋ぎ止められたい。
「よし、お姫様抱っこできるように、俺はなる!」
と、そんなこんながありまして、今これ。
今日は学校が休みで、朝から部活動。
今、体育館から持ってきたマット十枚ぐらいの上に、俺とお揃いの筋肉最強Tシャツを着た輪島が、仰向けになってゴロンしている。輪島の頭の方には秦が、脚の方には青木副部長がいつでも支え補助が出来るように立っていた。そして俺は、輪島の中心部の前にいた。
「背中は伸ばせ、曲げるな!」
「腕だけに頼らない!」
輪島と森部長の指導声が部室内に響く。
俺は〝お姫様抱っこ強化トレーニング〟を受けていた。
俺が振られた日には、続きがあった。
*
「だって先輩、お姫様抱っこがまだできないじゃないですか」
あの日、輪島は俺の手首を掴みながら悲しそうな表情でそう言った。
「なんだよ、それ、今関係ないじゃん!」
「あるんだ……あるんすよ……俺も、恋人になりたいんすよ、グスン」
「わ、輪島も恋人になりたいと? 嘘だ、じゃあなんで今『なれない!』って言い切った?」
「……『好きな人をお姫様抱っこしたい』という夢が、先輩にあるからだ」
話によると、輪島も俺に告白しようとずっと考えていたらしい。「もしも恋人になれば、本当に一生、先輩から離れるつもりはない」と、輪島は言い切った。でも輪島の中では恋人以外をお姫様抱っこした時点で浮気で。もしもお姫様抱っこできないのが耐えられなくなった俺が他の人をお姫様抱っこしてしまったら、ふたりの関係は気まずくなる。でも俺の夢は好きな人をお姫様抱っこすることで。でも俺は輪島をお姫様抱っこできないから、このままの関係でいる方がいいのかと考えていたらしい……。
――輪島の考えが分かるような、ぐちゃぐちゃぐるぐるしていて、よく分からんような。そして俺は、輪島をお姫様抱っこできなくても浮気しないし。なんならできなくても別にいい。
「長いし、でもでも言いすぎててよく分からん。短くまとめると、どうなる?」
「先輩が俺のことをお姫様抱っこできるようになったら、恋人になってほしいと直接先輩に言うつもりでいた!」
――輪島からの恋人になろう!
やっぱり、輪島から告白されたい。その方が安心が増す。
――だって、人から愛されてるって、思ったことがなかったから。輪島から〝恋人になりたい〟って言われて、さらに繋ぎ止められたい。
「よし、お姫様抱っこできるように、俺はなる!」
と、そんなこんながありまして、今これ。



