密着取材の次の日は、昼過ぎに部室へ。
部室に入った瞬間、壁にある『わじまおめでとう』のカラフルな文字が目に入ってきた。その文字は、折り紙で作られた赤い花に囲まれていた。そう、今日は『輪島優勝おめでとう会』の日だ。こないだ旅館で買った〝筋肉最強Tシャツ〟を渡す日。今は鞄に忍び込ませてある。
――はぁ、本当に渡すのドキドキだ。
「じゃあ、今日はいっぱいお菓子食べようぜ」
青木副部長はお菓子がたくさん入った大きな袋を逆さまにして、広げた白い折りたたみテーブルの上に全部出した。中谷はペットボトルのお茶やジュースを並べる。
明らかに小さいテーブルを、大きい男たちが囲んでいる、ぎっちぎちだ。
「なんか、このテーブル小さくね?」
「人がデカイんだ」
俺が言うと森部長が答えた。
多分、輪島の密着取材が放送されたら部員が増える予感がする。
三年になって俺が正式な部長になった時、大きめのテーブルを買おうか。部費で買っても大丈夫なのか?
それぞれ好きなペットボトルの飲み物を持った。俺はオレンジ味の炭酸を持つ。
森部長は咳払いをしてから、叫んだ。
「では、輪島の『秋の全国高校生筋肉バトル』、優勝を祝って、乾杯!」
「「乾杯!」」
――いいな、こういうの。
同じ目的の人が集まって、結果を出した人をみんなで祝う。こんな世界に関われるなんて。輪島のお陰で、世界も広がった。
それぞれチョコやスナック菓子を食べたりして、筋肉バトルの話で盛り上がる。
「中谷、俺たちも応援頑張ったよな!」
「ね、頑張ったよね!」
俺と中谷は旗作りの話で盛り上がる。
「なぁ、その旗、どうするんだ?」
青木副部長が話に割って入ってきた。
「矢萩くん、どうしよっか?」
「部室に飾っとくか? 歴代の校長みたく」
「ちなみに、俺のは誰が担当したんだ?」
「青木先輩のは、僕が担当したよ」
「じゃあ、それちょうだい!」
中谷は隅に置いてある袋から旗を出した。
俺の顔、縦幅二個分で横幅は、五か六個分ぐらい?の大きさの旗だ。それぞれ別々の色を背景に黒で囲んだ白文字の名前。
「青木先輩のは、この青いのだよ!」
中谷が棒の部分を持ち、旗をフリフリしながら青木副部長に渡した。
「ありがとな。筋肉部引退しても、ずっと、一生宝物にする」
「そういえば、先輩たちっていつ引退するんだ?」
「俺たちは、卒業までずっといるぞ」
「秋の全国高校生筋肉バトルが終わったら引退だって……」
「いや、まだ辞めない。辞めたくない!」
話をしていると「あの、僕もほしい、です」と、秦も言ってきた。
「はい、どうぞ。秦くんはピンク色ね」
「ありがとうございます」
秦は両手に旗を乗せ、ニコニコ嬉しそうにしている。
「森先輩は、緑です!」
「森だから緑か? ありがとな」
森部長は微笑みながら、旗をフリフリさせていた。
「輪島くんは、これね! 矢萩くんが作ったよ!」
「先輩の手作りか……はぁ、嬉しい」
輪島は両手で棒部分を持ち、目を細め、まるで愛おしいものをみるように、旗の文字をずっと見つめていた。
――輪島ならきっと、俺が選んだTシャツも、嫌な顔をしないで受け取ってくれるよな。
隅に置いてある鞄のところへ行き、Tシャツを出した。そして「輪島!」と名前を呼ぶ。
「なんだ?」
「輪島に、渡したいものがある」
わいわい盛り上がっている場所から離れて、輪島は俺のところに来た。
「……これ、輪島にプレゼント。俺とお揃いなんだけど」
Tシャツを両手で輪島に差し出した。
どんな反応をするんだろうか。
――あれ? 受け取らない。
輪島は胸に手を当てながら呼吸を荒くしている。
「輪島、大丈夫か?」
「だめだ、大胸筋が激しくなって苦しいし、泣きそう」
俺は他の部員たちの様子をチラ見した。相変わらず盛り上がっている。
「ちょっと話したいこともあるし、外に出ようか?」
輪島が頷くと、ふたりで外に出た。
校舎から出て、適当に歩いた。
部室に入った瞬間、壁にある『わじまおめでとう』のカラフルな文字が目に入ってきた。その文字は、折り紙で作られた赤い花に囲まれていた。そう、今日は『輪島優勝おめでとう会』の日だ。こないだ旅館で買った〝筋肉最強Tシャツ〟を渡す日。今は鞄に忍び込ませてある。
――はぁ、本当に渡すのドキドキだ。
「じゃあ、今日はいっぱいお菓子食べようぜ」
青木副部長はお菓子がたくさん入った大きな袋を逆さまにして、広げた白い折りたたみテーブルの上に全部出した。中谷はペットボトルのお茶やジュースを並べる。
明らかに小さいテーブルを、大きい男たちが囲んでいる、ぎっちぎちだ。
「なんか、このテーブル小さくね?」
「人がデカイんだ」
俺が言うと森部長が答えた。
多分、輪島の密着取材が放送されたら部員が増える予感がする。
三年になって俺が正式な部長になった時、大きめのテーブルを買おうか。部費で買っても大丈夫なのか?
それぞれ好きなペットボトルの飲み物を持った。俺はオレンジ味の炭酸を持つ。
森部長は咳払いをしてから、叫んだ。
「では、輪島の『秋の全国高校生筋肉バトル』、優勝を祝って、乾杯!」
「「乾杯!」」
――いいな、こういうの。
同じ目的の人が集まって、結果を出した人をみんなで祝う。こんな世界に関われるなんて。輪島のお陰で、世界も広がった。
それぞれチョコやスナック菓子を食べたりして、筋肉バトルの話で盛り上がる。
「中谷、俺たちも応援頑張ったよな!」
「ね、頑張ったよね!」
俺と中谷は旗作りの話で盛り上がる。
「なぁ、その旗、どうするんだ?」
青木副部長が話に割って入ってきた。
「矢萩くん、どうしよっか?」
「部室に飾っとくか? 歴代の校長みたく」
「ちなみに、俺のは誰が担当したんだ?」
「青木先輩のは、僕が担当したよ」
「じゃあ、それちょうだい!」
中谷は隅に置いてある袋から旗を出した。
俺の顔、縦幅二個分で横幅は、五か六個分ぐらい?の大きさの旗だ。それぞれ別々の色を背景に黒で囲んだ白文字の名前。
「青木先輩のは、この青いのだよ!」
中谷が棒の部分を持ち、旗をフリフリしながら青木副部長に渡した。
「ありがとな。筋肉部引退しても、ずっと、一生宝物にする」
「そういえば、先輩たちっていつ引退するんだ?」
「俺たちは、卒業までずっといるぞ」
「秋の全国高校生筋肉バトルが終わったら引退だって……」
「いや、まだ辞めない。辞めたくない!」
話をしていると「あの、僕もほしい、です」と、秦も言ってきた。
「はい、どうぞ。秦くんはピンク色ね」
「ありがとうございます」
秦は両手に旗を乗せ、ニコニコ嬉しそうにしている。
「森先輩は、緑です!」
「森だから緑か? ありがとな」
森部長は微笑みながら、旗をフリフリさせていた。
「輪島くんは、これね! 矢萩くんが作ったよ!」
「先輩の手作りか……はぁ、嬉しい」
輪島は両手で棒部分を持ち、目を細め、まるで愛おしいものをみるように、旗の文字をずっと見つめていた。
――輪島ならきっと、俺が選んだTシャツも、嫌な顔をしないで受け取ってくれるよな。
隅に置いてある鞄のところへ行き、Tシャツを出した。そして「輪島!」と名前を呼ぶ。
「なんだ?」
「輪島に、渡したいものがある」
わいわい盛り上がっている場所から離れて、輪島は俺のところに来た。
「……これ、輪島にプレゼント。俺とお揃いなんだけど」
Tシャツを両手で輪島に差し出した。
どんな反応をするんだろうか。
――あれ? 受け取らない。
輪島は胸に手を当てながら呼吸を荒くしている。
「輪島、大丈夫か?」
「だめだ、大胸筋が激しくなって苦しいし、泣きそう」
俺は他の部員たちの様子をチラ見した。相変わらず盛り上がっている。
「ちょっと話したいこともあるし、外に出ようか?」
輪島が頷くと、ふたりで外に出た。
校舎から出て、適当に歩いた。



