部室に入ると、他の部員四人と、カメラを持ってる二十代っぽい男がいた。三年生ふたりは筋肉バトルが終われば引退だったような? だけどいるし。そして三年生の髪型は、いつも筋トレをする時は洗いたてみたいな感じなのに、今日はびしっと整っている。中谷と秦はふわっといつも通りだ。
「初めまして、輪島浩介さん。本日密着取材させていただきます、エンタメわっしょい菊池の河村と申します。今日はよろしくお願いします!」
「よろしく!」
ん? この男の名前は菊池か? 河村か?
早口で聞き取れなかった。
取材の男が輪島に名刺を渡すと、堂々と輪島はタメ口で名刺を受け取った。受け取り方も、さすがだな。
「では、早速ですが、僕はいないと思って、いつも通りに活動をしてください」
いつも通り、ラジオ体操が始まった。
もう見慣れてはいるが、いつみても輪島のラジオ体操はしなやかで、美。俺はあえて輪島の斜め後ろに並んで、輪島を見本としながらいつも体操にはげんでいる。今日も美しい――。
ラジオ体操が終われば、それぞれ筋トレが始まる。
「あの、いつも通りって僕いいましたけど、映像に映えるようなトレーニングを多めにお願いできたりします?」
「それは、無理だ」
男に聞かれて迷わずそう答える輪島。
例え撮影中でも、筋トレに妥協は許さない。
「ですよね、では、いつものようにお願いします」
いつものようにあれやこれやトレーニングをした。懸垂バーやダンベルを使った筋トレ、というか輪島自体が映像に映えると思うからこのシーンは大成功だ。ローカル番組とネットで放送されるらしく。放送日が待ち遠しい、永久保存版だ。
そして昼になった。食堂にも取材の男はついてきた。いつものように輪島とお揃いのメニューを俺は注文する。今日は日替わりの生姜焼き定食。輪島はいつも大盛りで、単品おかずもプラス注文している。今日は豆腐を頼んでいた。まずは毎日飲んでいる牛乳を一気飲みする俺と輪島。カメラは俺までもじーと見ていて、少しだけそわそわ。輪島は、やっぱり堂々としている。コップに入れた牛乳を飲み終えると、輪島は俺の顔をじっとみている。
「な、なんだ?」
真剣な眼差しで見つめられ、少し顔が熱くなる。
「口のとこ、今日も牛乳ヒゲがついてる。カメラに撮られてるけど、大丈夫か?」
俺は慌ててテーブルの上にあるティッシュで拭いた。
「『今日も』って、他の日にもついてたのか?」
「あぁ、ついていた」
「教えろよ! なんで教えなかった?」
俺の耳元に輪島の顔が寄ってきた。
「……だって、可愛かったから」
予想外の言葉をいきなり言われ、ぱっと輪島から顔を離す。そして輪島の顔をみると、顔がポッとしていた。俺もつられてポッとした気持ちになる。
――他の奴らに言われるのは想像するだけで嫌だけど、輪島から言われる『可愛い』は、気持ちがいいな。
そういえば、今撮影中だった。このシーンは使わないでと意味を込めて、カメラの男と目を合わせ、俺は首を振った。男は微笑みながら頷いた。言葉にしなくても、通じたようだ。
そんな感じで昼飯を食べ、次はとうとうデートだ。
「初めまして、輪島浩介さん。本日密着取材させていただきます、エンタメわっしょい菊池の河村と申します。今日はよろしくお願いします!」
「よろしく!」
ん? この男の名前は菊池か? 河村か?
早口で聞き取れなかった。
取材の男が輪島に名刺を渡すと、堂々と輪島はタメ口で名刺を受け取った。受け取り方も、さすがだな。
「では、早速ですが、僕はいないと思って、いつも通りに活動をしてください」
いつも通り、ラジオ体操が始まった。
もう見慣れてはいるが、いつみても輪島のラジオ体操はしなやかで、美。俺はあえて輪島の斜め後ろに並んで、輪島を見本としながらいつも体操にはげんでいる。今日も美しい――。
ラジオ体操が終われば、それぞれ筋トレが始まる。
「あの、いつも通りって僕いいましたけど、映像に映えるようなトレーニングを多めにお願いできたりします?」
「それは、無理だ」
男に聞かれて迷わずそう答える輪島。
例え撮影中でも、筋トレに妥協は許さない。
「ですよね、では、いつものようにお願いします」
いつものようにあれやこれやトレーニングをした。懸垂バーやダンベルを使った筋トレ、というか輪島自体が映像に映えると思うからこのシーンは大成功だ。ローカル番組とネットで放送されるらしく。放送日が待ち遠しい、永久保存版だ。
そして昼になった。食堂にも取材の男はついてきた。いつものように輪島とお揃いのメニューを俺は注文する。今日は日替わりの生姜焼き定食。輪島はいつも大盛りで、単品おかずもプラス注文している。今日は豆腐を頼んでいた。まずは毎日飲んでいる牛乳を一気飲みする俺と輪島。カメラは俺までもじーと見ていて、少しだけそわそわ。輪島は、やっぱり堂々としている。コップに入れた牛乳を飲み終えると、輪島は俺の顔をじっとみている。
「な、なんだ?」
真剣な眼差しで見つめられ、少し顔が熱くなる。
「口のとこ、今日も牛乳ヒゲがついてる。カメラに撮られてるけど、大丈夫か?」
俺は慌ててテーブルの上にあるティッシュで拭いた。
「『今日も』って、他の日にもついてたのか?」
「あぁ、ついていた」
「教えろよ! なんで教えなかった?」
俺の耳元に輪島の顔が寄ってきた。
「……だって、可愛かったから」
予想外の言葉をいきなり言われ、ぱっと輪島から顔を離す。そして輪島の顔をみると、顔がポッとしていた。俺もつられてポッとした気持ちになる。
――他の奴らに言われるのは想像するだけで嫌だけど、輪島から言われる『可愛い』は、気持ちがいいな。
そういえば、今撮影中だった。このシーンは使わないでと意味を込めて、カメラの男と目を合わせ、俺は首を振った。男は微笑みながら頷いた。言葉にしなくても、通じたようだ。
そんな感じで昼飯を食べ、次はとうとうデートだ。



