輪島との絆が深まり、楽しい毎日は過ぎていった。

 そして今日は『秋の全国高校生筋肉バトル』が開催された日だった。その筋肉行事は無事に終わり、今、泊まる旅館に着いた。

 部屋は、六人余裕で寝れる大きな和室。
 この部屋の畳の匂い、結構好きだな。

 筋肉行事のあとだからか、部員のみんなはいつもより気分が高め。特に俺が一番高いかも。

 だってだって、輪島がかっこよすぎてやばかったから――。
 しかも、優勝した!

「輪島、まじでかっこよかったぞ! 特にあれ、あの左右に重りがついてる棒……」
「バーベルか?」
「そう、それ! それを軽々と持ち上げた時の輪島はすごくかっこよかったぞ」

 何キロまで輪島が持てたのかは覚えていないが、他の出場者が全員持ち上げることのできなかった重さのを、軽々と持ち上げていた。

 輪島は頬を染めながらニヤッとした。
 俺もつられて同じ顔になる。

 今日の行事は、高校生の筋肉界隈では大きなイベントだったらしい。上位者になると特別な特典があるらしく。〝セキュリティーマッスル〟という名の、将来安定安心を約束された大企業に就職できるという内容だ。それを目的として参加する人も多く、本当にもう、全国各地からあらゆる強者が行事に集まってきて、みんな筋肉がすごかった。

 俺と中谷は予選落ちした。予選は一週間前ぐらいにやったから、落ちてからはマネージャーとなって、予選通過したエムエルキン部員たちを支えようと思った。だけど、特にやることはなく。でも今日は応援を頑張った。応援席で、中谷と一緒に作った部員それぞれの名前を書いた旗を、全力でパタパタして、大きな声で応援していた。来年は予選通過してみたいかも――。

 今日は、バベル?を持ち上げるやつの他にも、筋肉の美しさや、筋肉を引き立たせる姿勢の上手さを競っていた。

 他の部員も大活躍していたけど、正直、輪島の活躍しか覚えていない。

 全員同じ黒いタンクトップを着ている出場者たち。その中での輪島は、特に黒いタンクトップが似合っていて、タンクトップがなじみ、体の一部になっているようだった。周りに混ざることなく、いつもよりも光を放っていて、美しいのひとことではおさまらないその外見。
 姿勢対決では、ひとつひとつの姿勢がしなやかで、激しく流れる川と、川にたたずむ凛として全くビクともしない、ごつごつして立派な岩のような雰囲気を両方演じているようだった。ちょっと今の川と岩の例え方、上手くできた。