あの投稿に松尾も篠島も食いついてくるとは思わなかった
どうせなら、亘鍋(わたなべ)に......


廊下側の窓にもたれている俺に机を挟んでぐいぐい質問を突っ込んでくる彼ら
ちらりと横目で後ろの席の亘鍋を見ると机に伏せっている


眠いのだろうか
可愛いなと思ってしまう俺は既に末期かもしれない
上がりかけた口角は無意識で本当に危ない


2人に意識を戻し会話を続ける
この中の誰も知らないだろうが、投稿に映っている相手は亘鍋である


先日なんとも偶然、亘鍋とあった際に寄ったカフェで撮った飲み物の写真
亘鍋には先に座っていてもらい、俺が飲み物を受け取って席までもっていったのだ


『恋人限定！夏のカップスリーブお付けします！店員にお伝えくださいませ！』


とあったので、つけてもらったのだ
通常のカップスリーブからの変更はサービスだそう
2つ合わせてハートになるカップスリーブ
いかにもという感じだ


亘鍋にどう説明するか迷っていたが、「シンプルでオシャレな柄だなー」なんて呟きながら飲んでいた
きっと俺の好意なんて全く気づいてないんだろう


クラスメイトで席が前後の亘鍋杏夜(あんや)
家族構成、両親と妹の4人暮らし
血液型はA型
勉強は中の下で、眼鏡キャラにしては少しおバカ
嫌いなことは運動と目立つこと
そして、人と話すことが苦手


いや、我ながらキモいな
誰にもバレないようにしなければいけない
公になった暁には俺はストーカー野郎と言われるに違いない


授業を言い訳に2人を退かす
授業中後から小さい声で呟く亘鍋の声が聞こえてくる
内容まではわからないが、俺が教えてやりたい


できれば、なにもかも
0から100まで全部


こんな重すぎる想いを押し付けたくはない
だから気持ちが溢れないように押し殺すしかない


いつか諦めがつくその日まで、俺は恋をしない
そう決意した


だが、そんな決意も
あまり長くはもたなかった
いや、3ヶ月以上耐えた俺はむしろ頑張ったよな


来たるハコニワ祭、その日にかけよう
亘鍋の意識をこっちに向けさせ、あわよくばものにできたらなんて邪な期待もしつつ


優秀な助っ人も得られたわけだし
前に進んでいくしかない
たとえその結果が俺の望む方向にならなかったとしても、だ


待ってろよ、亘鍋杏夜
なんて夕焼けに誓うなんて柄にもないことをしてみたり



渡邊said end
最近のわたなべend

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