最後の読者

「よし!息子さんが迷惑そうならスッパリ諦める、しつこくしない……ということで言ってみよう!」

僕は引き出しをひっくり返して、便箋を見つけると、おさない先生へのファンレターを書いた。
思えば『暗殺者ロキ』が連載されていたときも書いて出したことがある。
連載終了後、先生からハガキが届き、それは今でも宝物だ。

あのときの気持ちを思い出しながら手紙を書く。
それだけでワクワクした。
やっぱりあの漫画は、僕にとって特別だ……ずっと。

●○●○
次の日。昼休みに一年生の教室まで来た僕は、運良く中学のときの後輩を見つけ、そいつに案内をしてもらった。

「小山内?知ってますよ。同じクラスなんで。えーと、今は教室いるかな……あ、あいつです」

そう言って後輩が指し示したのは、長身の男子生徒。窓際の席に、長い脚を投げ出すようにして座っている。
ちょっと癖のある茶色い髪の……かなり垢抜けたイケメンだった。

「え、あの人…本当に?」

「そうですよ」

「………」

正直意外だ。おさない先生の息子さんのこと、勝手に『暗殺者ロキ』のヒロキみたいな地味でおとなしそうな子だと思っていた。……一方通行も甚だしいな。

僕のような地味なオタクが話しかけるには少し勇気がいるタイプだけど、これも先生へ手紙を届けるため。あと、人を見かけで判断するのよくないし。

勇気をふりしぼり、小山内くんのところへ向かった。