最後の読者

「………っ」

隣で嗚咽する声が聞こえた。
小山内くんを見ると、彼の目から一筋涙がこぼれている。
特に表情は変えず、真顔のまま涙を流していた。

「お、小山内くん……」

どういう気持ちの涙だろう。
どう声をかけていいかわからず、僕は彼の背に触れた。

「あ……すみません。自分でもなんかよく分からないんですけど……なんか……」

小山内くんは小さく鼻をすすると、長い指で少し乱暴に涙をぬぐった。

「なんか、いろいろ考えていっぱいいっぱいになっちゃって…。
田井中ワタルが親父の漫画を読んでたってことすら思わなかったし、まして好きでいてくれたなんて意外だし。もちろん嬉しいんですけど。
もっと早く知りたかったって悔しく思うし。どうしてアサシンメイデンは売れて、ロキは打ち切りなのかなってそんな虚しさもあるし……」

「そっか……」

まとまりのない言葉たち。たぶん小山内くんも自分の中でまだ整理はついていないのだろう。
だからこそ、この彼の言葉はまぎれもなく本心なんだろう。

「ただ……ただ、きっと」

「きっと?」

「きっと親父は喜んだと思います。悔しさもあるかもしれないけど、自分の漫画が確かに人を動かしたから。
……そうであってほしい……」

「……うん、そうだね」

僕もそうだと思う。
いや、そうだといいな、と思った。