最後の読者

「そ、そうだ……!」

僕はおさない先生の最後の作品を抱え、小山内くんに突き出した。

「この漫画……おさない先生の最後の作品、もっとみんなに読んでもらわないか?」

「え……でも、それは、出版社からボツを出されたもので。他の人に読んでもらうなんて……」

「でも僕は面白いと思った!君は?」

「俺……俺は……」

小山内くんは逡巡するように目をキョロキョロ動かす。自分の言葉を表すことをためらっているように見えた。

「僕を最後の読者にと言ってくれて、本当に光栄だし嬉しかった!でも僕はおさない先生の作品をもっとたくさんの人に知ってほしい。たくさんの人に、…先生の思いを、先生の漫画を読んでもらいたいんだ」

「親父の漫画……、を」

「僕を最後にしなくていいよ。きっと先生の作品に出会えて幸せになる人や、救われる人はいる。僕は……そんな人に届けたい。届いてほしい……!
だから、だから…………」

「───わかりました」

言葉に詰まる僕の先を拾うように、小山内くんがうなずいた。

「親父もたぶん……本当はそう思っていたと思います。たくさんの人に読んでもらいたい……自分の漫画を知ってほしいって……」

小山内くんは僕の差し出した漫画を手に取った。
おさない先生、最後の作品を。

「神丘先輩……俺、漫画の面白いとか、面白くないとかよくわかりません。特に親父の漫画は。長い間読み続けて、いろんな意見を聞き続けているうちに、わからなくなりました」

「……そっか」

「でも俺、…好きなんです。親父の漫画。
特にこの漫画……親父が最後に描いたこの作品が、一番好きです」

そう言って顔をあげた小山内くんの真っ直ぐな目からは迷いが消えていた。