最後の読者

「俺は……俺にとっては、親父はずっと漫画家です。俺がガキの頃から……覚えている親父の姿は、漫画を描いている…机に向かった後ろ姿で……。連載が決まったときも、…打ち切りになったときも、そのあとも。親父は毎日……本当に毎日毎日、漫画を描いていました」

「……そう、だよね。わかるよ。おさない先生は漫画が好きで、漫画を描くことが好きだったんだね」

「はい……。
でも、俺は……ずっと疑問だった」

「え、なにが?」

「親父は漫画のことばかり考えていて、あんなにも漫画が好きだったのに、あんなにずっと描いていたのに。漫画は打ち切りで、世間からは才能ないと言われて、…いや、話題にされるならいいほうで大抵の人からは忘れられて」

「……小山内くん」

小山内くんは下唇を小さく噛んだ。

「才能ってなんだろう。例えば、『アサシン・メイデン』は親父の漫画と似てるって言われるけど、あっちは大人気で面白いとみんなに言われている。
面白いってなんだろう。面白くないってなんだろう。
……親父の漫画はそんなに面白くないのか。親父はあんなにも描いていたけど、それでも面白くないのか、面白くない親父の漫画は価値がないのか……って」