最後の読者

「他にもまだたくさんあるんです、親父の漫画。ボツをくらったやつばっかりなんですが、良かったら読んでください」

そう言って小山内くんが示した押し入れには段ボールが何箱もあった。あれは全ておさない先生が描いた漫画らしい。

「ありがとう……すごいね」

おさない先生はきっと漫画を描くことが本当に好きだったんだろう。最後までずっとあきらめずに描き続けていた。
握りつぶされたようによれた紙もあった。塗りつぶされた台詞や絵もあった。苦しそうにゆがんだ筆跡もあった。
でも、どの漫画も最後まで描かれていた。
それが何十作品もある。
おさない先生が遺した漫画からは強い情熱と執念のようなものさえ感じた。


「……おさない先生は本当にすごいな。僕にとって一番の漫画家だよ」

僕がそう言うと、小山内くんは困ったように笑った。

「神丘先輩、変わってますね。……世間では親父は打ち切り漫画家だってのに。しかも連載できたのはその一作だけ。最近は何年も作品発表すらできなくて…漫画家かどうだったかも怪しいのに……」

「そんな…っ、おさない先生は漫画家だ!最後まで漫画家だった、君もそう思っているだろう?……君はお父さんの漫画、好きなんだよね。だから最初興味本位に見えた僕に怒ったんだろう」

「……」

小山内くんはうつむいた。