最後の読者

「え………」

差し出された原稿。それを小山内くんから受け取る。手が…少しだけ震えた。

「ほ、本当に僕が読んでいいの?」

「はい。読んでください。きっと…親父も喜ぶ。親父が必死に描いていた漫画。それが俺以外の誰にも読まれないで忘れられていくなんて、可哀想だから」

「……わかった。ありがとう」


僕は1枚1枚めくっていく。

それは……魔法使いが主人公のバトルファンタジーだった。
主人公の父親は落ちこぼれ魔法使いで、ゆえに主人公も周りから馬鹿にされて生きてきた。次第に腐っていき、魔法使いという職業さえ嫌いになりそうな主人公。
だが、主人公は彼の才能を信じ、支えてくれる仲間に出会う。
そして魔法使いとしての実力をつけた主人公は、仲間とともに冒険の旅に出る。
病魔に侵された父は、そんな主人公の未来を祈りつつ息を引き取って……物語は終わる。


「……っ」

読み終えたとき、僕は泣いていた。
今度こそもう堪えられなかった。
ぼろぼろ大量に涙をこぼし、みっともなくしゃくりあげた。


おさない先生の漫画だ。

ちょっとほろ苦くて、つらいこともあって、明るいばかりじゃない。
でもほのかでも確かな希望と未来への祈りを示してくれる。

僕の大好きな漫画だ。


「……神丘先輩、大丈夫ですか」

「うん、平気だよ。すごく…すごく面白かった。読ませてくれてありがとう」

「いえ……」

小山内くんは照れくさそうに、だけど誇らしそうに笑った。
その笑顔を見て、少しだけこの漫画の主人公ににていると思った。