最後の読者

おさない先生のWikipediaにはもう先生が亡くなったことが書かれている。
誰が更新したのか、病名についても、息子がTwitterで知らせたことまで記されていた。

そして数時間後。
少年チャンプの公式アカウントが、おさない先生の訃報とお悔やみの言葉を出した。

これで真実であることがほぼ確定したように思えた。

「そうか………本当のこと、なんだな」

胸の中が虚しさのようなものでいっぱいになる。
涙は出なかった。でもただただ悲しかった。
まるで自分の大切な一部が削ぎ落とされてしまったような喪失感があった。

「………」

その喪失感を埋めるように、僕は検索を続けた。
みんなが先生の訃報をどう思っているのか知りたくて。
同じように喪失感を持つ人がいれば、僕の心の穴がわずかでも埋まるような気がしていた。


『おさない洋司ってだれ?』
『暗殺者ロキ覚えてるわ。読んでた』
『亡くなったん?マジで?まだ若いだろ』
『暗殺者ロキすぐ終わったよな。打ち切りだったんかな』


「………」

駄目だ。
どの言葉もいまいち響かない。

悲しんでいる人もいる。暗殺者ロキを好きだった人もいる。
でも僕のこの悲しさにはどれも届かない気がした。

「……そんなの僕が推し量れるものでもないのに」

勝手に判断して。勝手に失望して。
ただのファンでしかない僕が。
僕は何者のつもりなのか。


「……あ、動画だ」

検索を続けるうち、youtubeで公開されている動画に巡り合った。

『正義の暗殺者ロキを語る!』

というタイトル゙だった。
1年ほど前のものだから、当然先生が亡くなる前のものだ。