白木蓮は息を呑む隊士たちをよそに、雪の隣へ片膝をつく。
「あんたも、死体収集家の鬼に狙われてたんだってな。雪さん。――なぜあんただけ魔の手から逃れられた?」
「・・・」
だんまりを決め込む雪。その白い顎をつまむように掴むと、白木蓮はずいっと顔を寄せた。
「言え。この村には何匹鬼がいる? 見つけたのは死体だけじゃない。『がしゃどくろ』が雪の結晶になっていた。あれはあやかしの中でも特に手を焼く災いの権化。御仏でもない限り、倒すのは不可能だ。――それと」
一呼吸置くと、白木蓮の冷たい眼はギラッと殺気を帯びた。
「あんたをじっと見つめていた鬼――おそらく屍食鬼だ。奴の名はなんだ!?」
男の声はビリビリと大気を震わせる。雪はぶるりと身体が勝手に震えた。
「・・・存じ上げません。ご自分で突き止めたらどうですか」
雪はめいいっぱい勇気を振り絞って睨み返す。涙目のそれは、残念ながらまったく威嚇になっていない。
「・・・ふん」
白木蓮は立ち上がる。「自分に『餌』の価値はないと?」と上から雪を見下ろす。
そしてガラリと障子を開け、寄りかかった。
「里の気配が変わった。あんたを捉えたあの墓場にも、餓鬼が山ほどいた。今、地道に焼き殺している。山中がざわざわと騒がしい。あんた一人をとらえただけで、だ」
白木蓮は目をまんまるにしてそれを聞く雪を、怪訝な顔で見下ろした。
――この世のすべての鬼に愛される女。
「あんた、いったい何者だ?」
御仏のごとく慈愛に満ちた眼差しを持ちながら、その赤い唇は、どの鬼も吸い付きたがる魅力を持っている。
雪はしばらく口をつぐんでいたが、やがて唇を薄く開いた。
「わたしが知りたいくらいです」
「あんたも、死体収集家の鬼に狙われてたんだってな。雪さん。――なぜあんただけ魔の手から逃れられた?」
「・・・」
だんまりを決め込む雪。その白い顎をつまむように掴むと、白木蓮はずいっと顔を寄せた。
「言え。この村には何匹鬼がいる? 見つけたのは死体だけじゃない。『がしゃどくろ』が雪の結晶になっていた。あれはあやかしの中でも特に手を焼く災いの権化。御仏でもない限り、倒すのは不可能だ。――それと」
一呼吸置くと、白木蓮の冷たい眼はギラッと殺気を帯びた。
「あんたをじっと見つめていた鬼――おそらく屍食鬼だ。奴の名はなんだ!?」
男の声はビリビリと大気を震わせる。雪はぶるりと身体が勝手に震えた。
「・・・存じ上げません。ご自分で突き止めたらどうですか」
雪はめいいっぱい勇気を振り絞って睨み返す。涙目のそれは、残念ながらまったく威嚇になっていない。
「・・・ふん」
白木蓮は立ち上がる。「自分に『餌』の価値はないと?」と上から雪を見下ろす。
そしてガラリと障子を開け、寄りかかった。
「里の気配が変わった。あんたを捉えたあの墓場にも、餓鬼が山ほどいた。今、地道に焼き殺している。山中がざわざわと騒がしい。あんた一人をとらえただけで、だ」
白木蓮は目をまんまるにしてそれを聞く雪を、怪訝な顔で見下ろした。
――この世のすべての鬼に愛される女。
「あんた、いったい何者だ?」
御仏のごとく慈愛に満ちた眼差しを持ちながら、その赤い唇は、どの鬼も吸い付きたがる魅力を持っている。
雪はしばらく口をつぐんでいたが、やがて唇を薄く開いた。
「わたしが知りたいくらいです」


