雪で一面真っ白な花散里の田舎道。そこを無邪気に走る少年の姿があった。
極寒の中、素足に赤い下駄を履いている。それも一本下駄だ。長髪をみずらに結い、大きなベールのような桃色の布を頭から被っている。狩衣に袴姿。
明らかに里の子どもではない。
手には竜笛をしっかりと握りしめ、菫と、見た目の年齢がそう変わらない少年は丘の上をめざしひた走る。

それに気づくものは、一人もいなかった。