怪異討伐隊が使用するのは御神刀だ。そうでなくては、人間にあやかしは斬れない。

『そっちへ逃げたぞ!!』
真夜中、穢土大橋へ逃げた赤鬼を追う隊士たち。鬼は上裸をむき出しにし、右手を切られ、息を切らしながら橋のど真ん中を突っ走る。負傷しても鬼の足は人間よりずっと早い。
すると、誰かが橋の真ん中で待ち構えていた。
龍胆だ。
『邪魔だ、どけぇぇ!!』
鬼は大きな鉤爪を振り下ろす。しかし龍胆は身じろぎもしなかった。
銀色の光の筋が、一瞬光る。龍胆が刀を抜いたのだと認識したときには、チンッと鞘に納める音が響いた。
ずる・・・っ
鬼の首が、胴体から切り離され、ゆっくり滑り落ちてゆく。
ごろりと転がった首。その横を通り過ぎる龍胆の、ロングブーツの足音は、呆気にとられた隊士たちの方へ向かう。
『隊長、すげぇ!』『あの大鬼を、一瞬で・・・』
すると、龍胆の激が飛んだ。
『感心している暇はないぞ! 眼前の敵に集中しろ。訓練を思い出せ!』
皆がおう、と頷く。龍胆の姿を見ただけで、子鬼共は逃げようとする。
『一匹残らず殲滅せよ。小さくとも、芽は摘んでおけ!』
龍胆は簡単に小鬼の首を跳ねる。あまりに鮮やかなそれは、隊士たちを高揚させた。


龍胆は帝 御自ら選ばれた凄腕である。ゆえに、穢土の怪異はみるみるうちに減っていった。将軍は満足し、龍胆への信頼と隊士たちの人望はうなぎのぼりだった。