人生でこいつだけは信用できる。
そう思った人がなぜこいつなのか俺にもわからない。どんなに良い人でどんなに俺に尽くしてくれる人でも、俺の隣でだらだらしてゲームと向き合い、ギャーギャーと叫びお菓子を溢す篠原悠人が何故か俺が1番信用出来る人なのだ。毎日毎日悠人に苛々する。すぐ手が出ると自覚が有るのに、悠人は殴れない。なんなら、何でも許せてしまう。

「 光瑠 水取ってよ 」

『 は?お前の方が近いだろ。 』

なんて口では言いながら態々立ち上がって水を取って蓋まで開けてやる。こんなの悠人以外にやらないし、悠人は悠人で俺に気持ちの良い居場所を提供してくれる。人を殴ってばかりの俺が、人と笑い合っている。なんとも感慨深い事だ。

「 光瑠 やりたい仕事が有るんだけど 」

『 お前から仕事の話とか珍しいな。面白い仕事でもあったか 』

仕事を聞かれて堂々と探偵兼殺し屋ですなんて言えない。そもそも探偵と殺し屋を掛け持ちしてる奴なんて俺ら以外にいないだろうし俺らも何をしてるかたまに目的を見失う位だ。

「 ちょっと怪盗やってみようよ、光瑠 」

『 … 何言ってんのかわかんねぇけど、殺しか? 』

「 今回は殺しじゃない!!探偵!! 」

『 物盗むのに探偵か?そりゃ笑えるな 』

悠人のふわふわした雰囲気に被さるようにキラキラと目を輝かせている。

「 怪盗とか憧れない?! 」

『 憧れる。 』

正直即答できる。怪盗Xとかやってみたかった。お宝xxを頂戴するとか言って挑戦状とか出してみたかった。

「 この絵、盗みに行こうよ!! 」

『 絵?お前絵なんて興味ないだろ 』

「 見て見て。この絵1週間後の夜怪盗Yって奴が盗むって挑戦状出してるんだって。 」

「 てかなんで怪盗Yなんだろうな。Xの方がかっこいいのに馬鹿だなぁ。 」

『 そんな事どーでもいい。 』

『 盗んでどーしたいの。 』

あまりにも前屈みで俺の目をじーっと見つめながら楽しそうに喋るものだから、俺までワクワクしてきてしまった。

「 盗んだらね、警察に届けるんだぁー 」

『 ……… は? 』

「 それで正義のヒーロー!!ってやりたいの。ね?光瑠、付き合ってくれるでしょう? 」

『 もう殺しやってるのに、正義のヒーローやりたいのか? 』

「 警察を煽るんだよ。警察に変わる正義のヒーローだー!って。 」

『 はぁ? 』

「 一回はヒーロー戦隊に憧れたでしょ? 」

「 それやろう!!!! 」

こいつは本当に馬鹿なんだと思う。
そして純粋で目の奥は綺麗だ。
正直憎い位綺麗で、赤ちゃんを見てるみたいだ。

『 まあまあ、楽しそうだし、乗ってやるよ。 』

こうして怪盗になって正義のヒーロー大作戦は
幕を開けた。




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