======== この物語はあくまでもフィクションです =========
============== 主な登場人物 ================
物部満百合(まゆり)・・・物部一朗太と栞(しおり)の娘。
久保田健太郎・・・久保田誠とあつこの息子。
大文字おさむ・・・大文字伝子と学の息子。
福本めぐみ・・・福本英二と祥子の娘。
依田悦子・・・依田俊介と慶子の娘。
服部千香乃(ちかの)・・・服部源一郎とコウの娘。
南原未玖(みく)・・・南原龍之介と文子(ふみこ)の娘。
山城みどり・・・山城順と蘭の娘。
愛宕悦司・・・愛宕寛治とみちるの息子。
物部一朗太・・・満百合の父。モールの喫茶店アテロゴのマスター。
物部栞・・・満百合の母。
大文字(高遠)学・・・おさむの父。
久保田あつこ・・・警視庁警視正。健太郎の母。元EITO副隊長。
福本英二・・・めぐみの父。アマチュア劇団主宰。普段は、非常勤建築士として、建築事務所で働いている。
佐藤先生・・・町内鼓笛隊指導の小学校音楽教師。
鈴木栄太・・・小学校校長。
尾津優子・・・めぐみのクラスメート。
持田あかり・・・めぐみと優子のクラスメート。
==============================
==ミラクル9とは、大文字伝子達の子供達が作った、サークルのことである。==
==EITOとは、Emergency Information Against Terrorism Organizationを指す==
午後1時半。喫茶店アテロゴ。
「どうだった?」と、健太郎は、めぐみ、悦子、美玖に尋ねた。
「美玖ちゃんの誕生日ってことにして、私と悦子ちゃんで、お茶の準備を手伝って、悦子ちゃんが部屋中を探して見つけたの。」と、めぐみは健太郎に写真を見せた。
「何か、書きかけの紙切れが沢山あるね。メモみたいだ。」
健太郎は、めぐみに相談を受けた。めぐみのクラスメートの、持田あかりが、急に男の子みたいな髪型になり、男の子のような格好をしだしたと言う。同じクラスメートの尾津優子が、泣いているあかりを何度も見た、と言う。めぐみは、見かねてミラクル9で解決する、と約束をしてしまった。
健太郎は、男の子が急に訪ねると怪しまれるから、と自分やおさむ、悦司は行かず、女の子達に、あかりの部屋で手掛かりを探すように依頼した。
その成果が数枚の写真だった。
ふいに、手を伸ばして写真を見る人物がいた。めぐみの父、福本英二だった。
福本は、自分の設計した家の内見に見学者を案内した帰りだった。
「これ、健太郎君の言う通り、メモだ。戯曲か小説か?出来上がってものを見ないと分からないが、『お話』のネタのメモだ。小説家の高遠に復元して貰うのも一つの方法だが、あかりちゃんのお母さんがやった行為の原因だと推測は出来る。そうですよね、副部長。」
福本が、副部長と呼んだ、この店のマスターは、大学時代の部活の副部長だった。未だに後輩達は副部長と呼んでいる。
「詰まり。お母さんは、勘違いしたんだ。ビリビリに破いているし。あかりちゃんが『男の子になりたい』って思っている、とメモを読んで思い込んでしまった。そして、願いを叶えようとした。健太郎。今でも校長先生は鈴木先生か?」
「うん。来年辞めるらしいけど、まだ校長先生は鈴木先生だ。」
「よし。鈴木校長に、あかりちゃんのお母さんを会わせるんだ。で、事の成り行きをお前達で説明して、その上で、校長に説得して貰おう。」
物部は、そう言うと、どこかへ電話していた。
午後3時。鈴木邸。リビング。
鈴木校長と持田あかりの母が座っている。ミラクル9は全員立っている。
「1人なので、お茶も出せませんが。学校だと、何かと人の目がありますから。おおよその事は、この探偵団ミラクル9から聞きました。結論から申し上げると、お母さんの勘違いです。お先走りです。」
「はあ?」「お母さんは、あるとき、娘さんのメモを発見された、そのメモを読んだあなたは、悩んだ挙げ句、娘の願いを叶えようとした。それは、『男の子になること』だった。でもね、それは日記では無かったんです。日記でも空想を書くことはありますけれどね。福本君。」
めぐみは言った。「私の父は建築士です。でも、アマチュア劇団もしています。母とは演劇で知り合いました。父は、あかりちゃんのメモを見て、戯曲のアイディアのメモかも知れないと言いました。後で、おさむ君のお父さんにも見て貰いました。おさむ君のお父さんは小説家です。同じことを言っておられました。」
「そんな・・・。私は、余計なことをしたの?」
あかりの母の言葉に、鈴木校長は、「その通りです。まだ引き返せます。10数年前、LGBTの関連法案が国会を通りました。でも、曖昧で不完全な法案だった為に犯罪が多発しました。勝手に女子トイレを改造した地域もありました。国家議員達は不勉強でした。そして、遅すぎました。周回遅れです。お手本である筈のアメリカでは、一部の州で反LGBT法案が成立していました。それは、悪いお手本として犯罪が多発していました。政治思想活動に利用された犯罪もありました。最たるものが、若い孤独な女の子を洗脳して、『男の子になりたいんだ』と思い込まされて、性〇の改造までやらせれ、法外なオペ代を請求された、というものでした。ある女医が、ジャーナリストでも為し得なかった調査をし、告発しました。世界の各言語に翻訳された本の日本語版を刊行しようとした出版社は、強烈な妨害を受け、脅迫されました。その告発本が正しいからこそ、思い込ませてまでLGBTを利用した犯罪が真実であったからこそ、妨害や脅迫を受けたのです。志田総理の頃に出来た、出鱈目法案は、市橋総理なってから、正しい方向に導く為に超党派で議論され、修正法が閣議決定されました。関連法案も出来ました。元々は、『性のあり方に悩む一部の人達への差別忌避』の草の根運動だったのです。アメリカは、今でも〇人差別が根強いです。あまり、衆知されていませんが、アジア人差別もです。LGBTも差別のターゲットだったのです。少数派への差別はいけません。でも、その少数派を持ち上げて優遇することは、公平でも公正でもありません。〇〇差別のように、『逆差別』を産みます。今は、ジェンダーの考え方も対処も歪んだ方向が修正されています。お母さんが恐れたのは、あかりちゃんが『男の子になりたい』と願っているのに、聞き入れなかった母親のレッテルを貼り、虐待した親として、活動家の人に狙われ、お母さんも、あかりちゃんも追い詰められる、という考えだったのでしょう。学校という『学び舎』は、単に知識を詰め込む組織ではありません。人間と人間の出逢いの場でもあり、社会に出てからの自分の立ち位置を確認する経験を積む場でもあるのです。ある子は、部活で、ある子はクラス仲間で友情を育て、成長して行くのです。この子達は、部活ではありませんが、お互いを見つめ刺激しあって、それを実戦しています。あかりちゃんは、もう彼らの友達です。孤独じゃありません。あの子を守るのは、お母さんでもあり、友達でもあるのです。話が長くなりました。学校の責任者として、頭髪に見合うウィッグを提供させて頂きます。出てお出で。」
隣の部屋から、あかりが出てきた。あかりは、めぐみのスカートを履いている。
「あかりちゃん、似合う!」と千香乃が言った。
「あかりちゃん、似合う!」と満百合が言った。
悦子も千香乃も未玖もみどりも、めぐみも言った。
そして、みどりが言った。「校長先生。母は美容師で、ウィッグも扱ってます。」
「商売上手だね、山城君。じゃ、山城君のお母さんに頼もう。」
「校長先生。あかりちゃんの家はボヤが出て、服と髪の毛が燃えちゃったっていうのは、どうですか?」と、健太郎は言った。
「あ。今、それ言おうと思ったのに。」と、おさむが言い、鈴木家は笑いに包まれた。
―完―
======== この物語はあくまでもフィクションです =========
============== 主な登場人物 ================
物部満百合(まゆり)・・・物部一朗太と栞(しおり)の娘。
久保田健太郎・・・久保田誠とあつこの息子。
大文字おさむ・・・大文字伝子と学の息子。
福本めぐみ・・・福本英二と祥子の娘。
依田悦子・・・依田俊介と慶子の娘。
服部千香乃(ちかの)・・・服部源一郎とコウの娘。
南原未玖(みく)・・・南原龍之介と文子(ふみこ)の娘。
山城みどり・・・山城順と蘭の娘。
愛宕悦司・・・愛宕寛治とみちるの息子。
大文字伝子・・・おさむの母。
久保田あつこ・・・警視庁警視正。健太郎の母。元EITO副隊長。
草薙あきら・・・元EITO出向の警視庁事務官。
中条秀吉・・・ドローン大会中学の部チャンピオン。
==============================
==ミラクル9とは、大文字伝子達の子供達が作った、サークルのことである。==
==EITOとは、Emergency Information Against Terrorism Organizationを指す==
午前10時。草薙発明研究所。
草薙あきらは、元EITO出向の警視庁事務官だった。ホワイトハッカーの腕を買われての採用だった。今は、発明家として独立・・・というのは表向きの顔で、実際は、EITOの外部諜報官だった。
その草薙の元に健太郎と、おさむがやってきて、相談をした。
「選挙妨害?ドローンで?どこから、その話を?」「犯人の1人から。」
草薙は、健太郎の話に笑い始めた。「健太郎君は、悪い奴の一味と関わりを持ったのかい?」
「健太郎。焦りすぎ。僕が説明するよ。健太郎は、葡萄館近くの、ドローン大会の小学生の部のチャンピオンなんだ。」「ああ。あれ、まだ続いてたんだね。毎年やるって言っちゃったからなあ。三都市迎撃作戦の時、敵を攪乱させる為に開いたのが始まりだ。そうかあ。チャンピオンねえ。」
草薙に、おさむは説明を続けた。
「健太郎の家の近くに、中条さんっていう、中学生のチャンピオンが住んでいるんだ。で、その中条さんが、『選挙妨害のチーム』に入れられちゃったんだ。チャンピオンだから。お父さんの知り合いが、今回選挙妨害の為の政治団体『つばくろ党』に入っていて、お父さんを通じて中条さんに、ドローンを使った選挙妨害活動をさせようとしているんだ。」
「ちょっと待った!それって、10数年前の、新党の候補者を潰すために作った、『使い捨て政治団体』の事件に似てるな。選挙妨害法って法律があって、逮捕されたけどね、代表達は。その時は、エキストラを雇ってまで選挙カーを追い回したり、選挙事務所行ったりして『大声で』ヤジ跳ばして妨害したんだ。追い詰められた新党の候補者は、候補を取り下げたよ。その時は、スピーカーを使ってヘイトスピーチして有罪になった凡例があったから、生声なら構わないだろう、って、そういう暴挙に出たんだけどね。詰まり、今度はその発展形で、ドローンを近くに飛ばすという計画か。」
暫く考えていた草薙は、「おさむ君のアイディア?妨害活動の妨害しようってのは。」と尋ねた。
おさむは、コクリと頷いた。
「分かった。僕の、初期のドローン数機を改造して、貸そう。但し、2人とも親の許可を取って。」
おさむと、健太郎は、スマホを取りだして、スピーカーをオンにして、親に電話をした。
「私は分かったわ。後は、おねえさまの許可を取って頂戴。」と、あつこが言い、「面白い。おさむ、健太郎。ミラクル9に選挙妨害活動阻止を命じる。ミラクル9。出動せよ!」と、伝子が言った。
暫く、草薙は笑っていた。
午後3時。西新宿の駅前通り。
新党春のあけぼの党の候補の荒田晋太郎が演説を始めようとすると、赤いドローンが数機飛んで来て、選挙カーの周辺を、まるで蠅のようにぶんぶんと飛び出した。
そこへ、青のドローンが『2機』飛んで来た。
青いドローンが近づくと、赤いドローンはどれも、コントロールを失い、地上に落下した。群衆は、何が起ったのか、ただ見ているだけだった。選挙カーの20メートル離れた所に対立候補の、『つばくろ党』の選挙カーがいたが、その様子を見て、反転、進行方向と逆に進み出した。
そして、パトカーに道を塞がれ、パトカーから愛宕が降りて来た。
午後5時。草薙発明研究所。
健太郎と、おさむ、そしてミラクル9のメンバー、更に中条秀吉が揃った。
「お疲れさま。ドローンを格納ケースに入れたら、ジュース飲んでいいよ。」
「ありがとうございます。」全員で返事をし、笑い声が家の中で木霊した。
―完―
======== この物語はあくまでもフィクションです =========
============== 主な登場人物 ================
物部満百合(まゆり)・・・物部一朗太と栞(しおり)の娘。
久保田健太郎・・・久保田誠とあつこの息子。
大文字おさむ・・・大文字伝子と学の息子。
福本めぐみ・・・福本英二と祥子の娘。
依田悦子・・・依田俊介と慶子の娘。
服部千香乃(ちかの)・・・服部源一郎とコウの娘。
南原未玖(みく)・・・南原龍之介と文子(ふみこ)の娘。
山城みどり・・・山城順と蘭の娘。
愛宕悦司・・・愛宕寛治とみちるの息子。
宇野由奈・・・悦司の同級生。
愛宕(白藤)みちる・・・悦司の母。丸髷署警部補。EITO東京本部出向。
愛宕寛治・・・悦司の父。丸髷署警部。
白藤峯男・・・みちるの叔父。丸髷署署長。
白藤冬子・・・白藤署長夫人。みちるの叔母。
橋爪哲夫警部補・・・愛宕警部の同僚。丸髷署生活安全課。
==============================
==ミラクル9とは、大文字伝子達の子供達が作った、サークルのことである。==
==EITOとは、Emergency Information Against Terrorism Organizationを指す==
※掛け手 ちょん掛け
自分の右(左)足のつま先を相手の右(左)足のかかとに内側から掛けて手前に引き、上体を反らして相手を横か後ろにひねり倒して勝ちます。足を掛ける形が材木の荒削りに使う「手斧(ちょうな)」に似ているところが名前の由来です。
午後1時半。小学校裏の公園。
悦司は、イジメに遭っているという宇野由奈の前に手を広げ、言った。
「嫌がっているのが見えないのか?」
「ナンだ、お前は?白馬の王子気取りか。それとも、彼氏気取りか?」
中学生らしい彼は、悦司より10センチは高い。
「知ってるぞ。相撲チャンピオン。格闘技の選手は、試合以外で相手を傷つけると罪が重くなるって、知ってるか?俺は知ってるぞ。」
悦司は、所謂太っちょではない。だが、子供相撲大会で優勝したことがある。
彼は挑発に乗らない悦司に腹を立て、ポケットからナイフを取りだして、向かって行った。悦司は目をつぶった。彼がぶつかって行く寸前、どこからかブーメランが飛んで来て、ナイフを弾き跳ばして、ブーメランはどこかへ跳んで行った。
そして、彼の体が悦司にぶつかる寸前、目を開け悦司は、『ちょん掛け』をかけた。
彼は、見事に転んだ。
午後3時。丸髷署。生活安全課相談室
一人の女性が、駆け込んで来た。悦司が投げた相手の母親だ。息子を連れてやって来た。愛宕警部と橋爪警部補は、、入って来た白藤署長と交代した。
「息子が暴力を振るわれたんです。」と、罵倒夢乃がやって来た。
白藤署長は黙って、その場でスマホを広げて、動画を見せた。
動画には、罵倒夢乃の息子が、宇野由奈を庇った愛宕悦司にナイフを持って体当たりする様子が映っていた。
「フェイクじゃありませんよ。今、持ったスマホ、投げつけても、バックアップ取ってありますよ、クラウドに。少年法改正したのをご存じですか?オタクのお子さん、中学生ですよね。もう、未成年じゃない。それなりの世罰を覚悟した上で弁護士呼びなさい。」
白藤署長は、ポーカーフェイスで言った。
午後5時。愛宕家。
悦司は、家の前で、皆と別れた。
「ただいまー。」悦司が家に入ると、「お帰りー。」と風呂場で、みちるの声がした。
みちるは、柔道着を洗濯板とたらいで洗濯していた。まるで、昭和初期の光景だ。
みちるは、暫く休職していたが、悦司が3歳の時にEITOに復帰した。
あつこが警視正に昇格したのをキッカケにEITO出向を止め、警視庁に戻った為、EITOの幹部が少なくなった。それで、復帰したのだが、今度はなぎさが結婚・出産の為、アメリカに渡ることになった。
みちるは、伝子の右腕として活躍することになったのだが、時間が少しでも空くと、『主婦』モードになっていた。
「お母さん、ありがとう。」「ん?ああ、洗濯機じゃ上手く落ちないのよー。」と言って、汗と涙を拭った。
そして、悦司を抱きしめ、こう言った。「お帰り。100点満点の息子。よく産まれてくれたわ。よく育ってくれたわ。ありがとう、100点満点の息子。」
「録音の準備をしてから、言ってよ。」2人はお互いに笑った。
みちるの叔母は、垂れ落ちる涙を拭おうともせず、黙って見ていた。
―完―
======== この物語はあくまでもフィクションです =========
============== 主な登場人物 ================
物部満百合(まゆり)・・・物部一朗太と栞(しおり)の娘。
久保田健太郎・・・久保田誠とあつこの息子。
大文字おさむ・・・大文字伝子と学の息子。
福本めぐみ・・・福本英二と祥子の娘。
依田悦子・・・依田俊介と慶子の娘。
服部千香乃(ちかの)・・・服部源一郎とコウの娘。
南原未玖(みく)・・・南原龍之介と文子(ふみこ)の娘。
山城みどり・・・山城順と蘭の娘。
愛宕悦司・・・愛宕寛治とみちるの息子。
愛宕寛治・・・悦司の父。丸髷署警部。
久保田嘉三管理官・・・警視庁管理官。健太郎の大叔父。
久保田あつこ・・・健太郎の母。警視正。
久保田誠・・・健太郎の父。警部補。嘉三は叔父。
橋爪哲夫警部補・・・愛宕警部の同僚。丸髷署生活安全課。
物部一朗太・・・喫茶店アテロゴマスター。大文字伝子の同級生。
辰巳一郎・・・アテロゴのウエイター。
辰巳泰子・・・アテロゴのウエイトレス。
==============================
==ミラクル9とは、大文字伝子達の子供達が作った、サークルのことである。==
==EITOとは、Emergency Information Against Terrorism Organizationを指す==
午後3時。喫茶店アテロゴ。
「マスター。いいの?これ。」と、健太郎は言った。
「もらい物だけどな。少ないし。但し、水の入ったバケツ持参。大人が付き添い。モールの外の公園。辰巳、付いていけ。」
物部の指示に従って、健太郎達ミラクル9は、モール外れの公園にて、花火で遊んだ。
完全に燃え終った頃、めぐみが叫んだ。「あ。燃えてる!!煙が出てる!!」
千香乃が言った。「聖火ランナー、走ってる!」
「違う。あれは松明だ。」辰巳は、さっと片づけさせて、モールに戻った。
燃えていたのは、モールの端の交番だった。
交番の巡査達が、懸命に通行客とバケツリレーで消火していた。健太郎達も加わろうとしたが、千香乃が言った、松明男が、ゆっくりと、モールの中を彷徨って歩いていた。
走っていたが、息切れしたのだろう。
「止めてー!!」未玖が叫んで、男の方に向かった。
男は、片手に松明を持ったまま、もう片手で未玖を抱きしめた。
「しまった。」辰巳は、すぐにアテロゴの物部に電話をした。
「分かった。」そう返事した物部は、走って来た。
消防車が近づいて来た。警察官も、やって来た。
未玖を人質に取られたので、警察官達は、迂闊に手を出せない。
おさむは、ブーメランを握る健太郎に向かって言った。
「健太郎。深呼吸して、心眼で見るんだ。褒められようと思わない。この間の悦司の動画を見ただろう?」
「分かった。」健太郎は、神経を集中した。1分後。健太郎は松明男の松明を持った腕を目がけて、ブーメランを投げた。
ブーメランは、見事に男の腕に当たって、松明が落ちた。
しかし、ブーメランは健太郎に戻って来なかった。
その跳ね返ったブーメランをキャッチした人物がいた。
他ならぬ、久保田嘉三、即ち、久保田管理官だった。
男は錯乱して、未玖を突き放して、松明を拾おうとしたが、松明は水流で消火された。
不動産屋の近くにある消火栓からホースを出して、物部と辰巳が放水したのだ。
辺りに、拍手が巻き起こった。
駆けつけた、愛宕警部と橋爪警部補が、男を逮捕連行した。久保田管理官に一礼して。
久保田管理官は、健太郎の肩を叩き、ブーメランを返した。
「よくやった。大叔父さんは、嬉しいよ。」
ミラクル9のメンバーが拍手しながら笑っていた。
午後7時。久保田邸。
「健太郎。よくやった。今夜は赤飯だ。久しぶりに母さんと寝るか?」
「反応するから、ダメ。」「こいつう、ナマいいやがって。明日から特訓だ!!」
「ええ?」
「余計なこと言うからだよ。父さんは味方しないぞ。父さんは母さんの味方だから。」
「そんなあ。」
一同は、爆笑した。
―完―
======== この物語はあくまでもフィクションです =========
============== 主な登場人物 ================
物部満百合(まゆり)・・・物部一朗太と栞(しおり)の娘。
久保田健太郎・・・久保田誠とあつこの息子。
大文字おさむ・・・大文字伝子と学の息子。
福本めぐみ・・・福本英二と祥子の娘。
依田悦子・・・依田俊介と慶子の娘。
服部千香乃(ちかの)・・・服部源一郎とコウの娘。
南原未玖(みく)・・・南原龍之介と文子(ふみこ)の娘。
山城みどり・・・山城順と蘭の娘。
愛宕悦司・・・愛宕寛治とみちるの息子。
久保田あつこ・・・健太郎の母。警視正。
橋爪哲夫警部補・・・愛宕警部の同僚。丸髷署生活安全課。
高峰圭二・・・元刑事の警備員。
天童晃・・・元EITO準隊員。武術師範だったが、今は引退して道場を開いている。
天童桃子・・・天童の妻。元陸自医官。出向していたEITOで天童と再会。50年越しの恋を実らせ、結婚した。現在は、天童邸を改造して診療所を開いている。
==============================
==ミラクル9とは、大文字伝子達の子供達が作った、サークルのことである。==
==EITOとは、Emergency Information Against Terrorism Organizationを指す==
午後3時。スーパー・ピテカントロプス。
店内を走り回る、子供達。そして、ポケットに商品を入れていく。
健太郎達ミラクル9は、店長の相談を受け、見張っていた。
犯人の子供達は、店内の防犯カメラの死角をつき、走り回る。
午前中や繁忙時の方が、店には隙があるように見えるが、実はそうでもない。
店に寄っては、「お掃除タイム」にしているが、実は「けん制」の為の放送である。
それを知った上の、堂々とした犯行だ。どのスーパーにも警備員はいるが、いつでも監視出来る訳ではない。
健太郎達は、2人1組に分かれて監視していた。
万引きグループが動くと、すぐに健太郎達は、取り押さえ、ホイッスルを吹いた。長波ホイッスルではない。運動会等で使用するホイッスルだ。
店長から連絡を受けた警備員達が駆けつけ、やがて警察官達がやって来た。
警備員達が駆けつけた時、リーダー格の男の子が喚いていた。
「お前ら。警察でもないのに、逮捕した気でいるのか?」
「『私人逮捕』だね。勿論、誰にでも逮捕する権利はあるよ。逃げない様に取り押さえることだからね。君たちは、警察に引き渡す。『公人逮捕』に切り替えだ。お願いいたします。」と、高峰は、いつものように、警察官に子供達を引き渡した。
手錠はかけないが、引っ立てられていく時のわめきは、大人と同じだ。
「高峰さん。」と店長が申し訳なさそうに言った。
店長の広報には、老婦人と、天童晃がいた。
店長室に老婦人を案内するように、高峰は進言した。
駆けつけた警察官の中に橋爪警部補を見付けた高峰は、そっと耳打ちした。
「了解しました。」「こちらです。」
午後4時。店長室。
「初犯じゃなかったんですか。」と、天童は驚いた。
警備員の高峰圭二は、元刑事。橋爪警部補は、本来は生活安全課の刑事だ。
そして、天童は、EITO引退後、自宅で道場を開き、妻の桃子は、EITO引退後、庭を潰して建てた診療所の院長をしている。
天童は、健太郎達を促し、自宅に招いた。
午後5時。天童家。茶の間。
「おやつには遅いが、まあ、いいだろう。」と言って天童は羊羹とお茶を出してくれた。
「子供達は、初犯じゃないし、方々のスーパーで被害が出ている。少年院に行くかもな。私のポーチを取ろうとした婦人は、所謂「病気」なんだ。
「平たく言うと、『正気の時』と『正気でない時』があるの。身元引受人として、家族の方が来られるだろうけどね。店長の説諭、あ、説教で済めばいいけど、初犯でないと、少なくとも『出入り禁止』ね。」
「難しいんですね、須藤先生。」と、おさむが言った。
「そうね。君の蜂に刺された時の処置は医者には出来ても、蜂に刺されたショックまでは医者には分からない。『こころ』に関係する治療は一番難しいの。まあ、ゆっくりして行きなさい。」
そう言って、須藤院長は診療所の方に向かった。
健太郎のスマホが鳴動した。
「かあちゃん。」「今、どこ?武勇伝は聞いたわよ。」
「天童先生のところ。」「五時半から道場の生徒さん達が来るわ。お前達も引き揚げなさい。」「はい。」
「ちぇっ!君の心の声は聞こえたよ。」と、天童が言うと、「恐れ入りました。」と、健太郎は深くお辞儀をし、皆が笑った。
―完―
======== この物語はあくまでもフィクションです =========
============== 主な登場人物 ================
物部満百合(まゆり)・・・物部一朗太と栞(しおり)の娘。
久保田健太郎・・・久保田誠とあつこの息子。
大文字おさむ・・・大文字伝子と学の息子。
福本めぐみ・・・福本英二と祥子の娘。
依田悦子・・・依田俊介と慶子の娘。
服部千香乃(ちかの)・・・服部源一郎とコウの娘。
南原未玖(みく)・・・南原龍之介と文子(ふみこ)の娘。
山城みどり・・・山城順と蘭の娘。
愛宕悦司・・・愛宕寛治とみちるの息子。
久保田あつこ・・・健太郎の母。警視正。
久保田誠・・・警視庁警部補。
大文字伝子・・・おさむの母。EITO東京本部隊長。翻訳家。
大文字学・・・伝子の夫。おさむの父。小説家。
山城蘭・・・みどりの母。美容師。
==============================
==ミラクル9とは、大文字伝子達の子供達が作った、サークルのことである。==
==EITOとは、Emergency Information Against Terrorism Organizationを指す==
※7月7日は七夕で有名ですが、実は「ゆかたの日」でもあります。 七夕は機織りの技術上達を願うお祭りだとも言われており、多くの人達に浴衣に親しんでもらうキッカケになればと制定されました。
日常生活において、夕涼みやくつろぐことを目的として生まれた普段着が浴衣です。 そのため、夏祭りや花火大会など、カジュアルな服装で行ける場所であれば、どこでも着ることができます。
七夕とは、月の満ち欠けで暦を策定したもので、一年が約354日となり閏月で調整を行っていたものです。 8月20日ごろが旧暦の七夕(7月7日)にあたるといわれています。 つまり、8月の七夕祭りは旧暦を元に七夕を祝っていることになります。
=================================
7月7日。午後4時半。久保田家。
ミラクル9は、久保田家に集まり、久保田あつこと、山城蘭は満百合、めぐみ、悦子、千香乃、未玖、みどりの着付けをしてやっていた。
今日は、久保田家のマイクロバスで飯田橋近くの東京大神宮に参拝に行く予定をしていた。
「みんな、よく似合うなあ。みんな、お母さんの『お下がり』だって?健太郎達は着ないのかい?」と、久保田警部補は言った。
「着るわよ。『男子』は後。着替えるだけだものね。メイクしたい人いる?」と、あつこが言うと、健太郎もおさむも悦司も黙った。
「失礼しました。楽しんでおいで。」と、久保田警部補は言った。
午後5時過ぎ。地下駐車場。
皆は乗り込み、バスは出発した。高速道路に入ろうとした時、追い越し車線を通って追い越して行った自動車に拳銃で狙撃され、運転していた久保田警部補が気を失った。
肩から流血している。自動車は蛇行し始めた。
すぐに、近くにいた、あつこが夫をどかそうとしたが、上手くいかない。
「健太郎!お父さんの上に乗って、運転しなさい!!」
「ええ?出来ないよ!かあちゃん。」「出来ない、じゃない!ハンドルを固定するのよ。向きは私が何とかするから。」健太郎は、夢中で言う通りにした。
まるで、映画の1シーンだ。珍しく、おさむは焦った。
そして、思わず叫んだ!「ワンダーウーマーン!」
子供達は、自然に唱和した。「ワンダーウーマーン!」
オスプレイの音が頭上に近づいて来た。
マイクロバスが、防護壁を突き破って、崖にダイブしそうになった時、マイクロバスは、宙に浮いた。
悦司は、窓から外を見て驚いた。「あっ!!」
おさむも、皆も窓から身を乗り出し、信じられない光景を見た。
オスプレイからロープが降りて来ていて、それを掴んだワンダーウーマンが、『真実のロープ』をマイクロバスに巻き付けて、結果、オスプレイがワンダーウーマンとマイクロバスを吊って移動していた。
そして、今度は、スーパーガールが子供達を安全な場所に運んだ。
全員が救出された後、エマージェンシーガールが言った。
「みんな、無事で良かったな。」
おさむは、また驚いた。ワンダーウーマンもスーパーガールもエマージェンシーガールも、母親の伝子だったからだ。
「・・・・・・・あむ。さあむ。おさむ。」自分を揺り動かす悦司と健太郎の声に、おさむは、目を開けた。
「何、寝てるんだよ。もう着いたよ。」
午後10時。大文字伝子のマンション。
「寝たよ。」「疲れたんだな。こんなの置いとくからだよ。」
伝子は学に見せたのは、三つ折りのフォトケースだった。
1枚目に伝子が大学祭で着たワンダーウーマーン、2枚目に敵との戦いで一時期着たスーパーガール、3枚目に、おさむが産まれた頃のエマージェンシーガールが写っている。
「おさむに見つからない場所にしまっとけ、高遠。」「はい、先輩。」
おさむがトイレに起きて来たので、伝子は慌てて隠した。
「父さん、浴衣・・・。」「ああ、大丈夫。明日、洗濯するから。」
おさむがトイレに入った時、2人は、こっそり笑った。
―完―
======== この物語はあくまでもフィクションです =========
============== 主な登場人物 ================
物部満百合(まゆり)・・・物部一朗太と栞(しおり)の娘。
久保田健太郎・・・久保田誠とあつこの息子。
大文字おさむ・・・大文字伝子と学の息子。
福本めぐみ・・・福本英二と祥子の娘。
依田悦子・・・依田俊介と慶子の娘。
服部千香乃(ちかの)・・・服部源一郎とコウの娘。
南原未玖(みく)・・・南原龍之介と文子(ふみこ)の娘。
山城みどり・・・山城順と蘭の娘。
愛宕悦司・・・愛宕寛治とみちるの息子。
依田俊介・・・悦子の父親。ホテル支配人。
依田慶子・・・悦子の母親。ホテル副支配人。
草薙あきら・・・元EITO出向の警視庁事務官。
大文字伝子・・・おさむの母。EITO東京本部隊長。翻訳家。
大文字学・・・伝子の夫。おさむの父。小説家。
==============================
==ミラクル9とは、大文字伝子達の子供達が作った、サークルのことである。==
==EITOとは、Emergency Information Against Terrorism Organizationを指す==
※恒例の、「東京一輪車演技大会」が足立区総合スポーツセンターで行われていた。
ミラクル9のメンバー、依田悦子は、Bグループ(初心者の部)のS1(ソロ演技小学生以下の部)に出場していた。それで、悦子の親である依田夫婦が応援に来ていた。
午後2時。足立区総合スポーツセンター。
依田と、他の出場者の親が、審判に詰め寄っていた。
普通乗車、前進、バック走行、片足、タイヤ乗りまでを2分00秒持続することが、合格の条件らしい。
悦子が合格したのに、他の出場者片山継男の父親透が、審判に食ってかかった。
継男は、悦子の前の順番で、惜しくも2分持たなかった。
透は、悦子が、途中、足を突いたから失格だと言い出したのだ。
審判は、そんな筈はない、と思いながらも、透のあまりの勢いに戸惑っていた。
そこへ、草薙がデジカメで撮影していたので、審判に差し出した。
片山透は、舌打ちをして、渋々継男を連れて退場した。
途中で、継男は引き返して、悦子に「父が失礼なこと言って申し訳ない。君の演技は、素晴らしかった。来年は負けないからね。継いでみたいで恐縮ですが、僕と付き合って下さい。」と、手製の名刺を悦子に渡して、深くお辞儀をした。
「いいよ。友達からね。まだ、『大人のお付き合い』は出来ないからね。」と言い、継男と握手した。
草薙は、拍手をした。草薙に連られて場内からも拍手が起った。
透は、バツの悪そうな顔をした。
「健太郎君。大工の棟梁に認められたんだって?ちょっと、手伝ってくれないかな?見ての通り、指を怪我しちゃったんだ。」「喜んで。」
午後4時半。ホームセンター。
競技を見終わった、ミラクル9は、大きなホームセンターの店内を見ながら健太郎と草薙について行った。
悦子は、合格はしたものの、総合点で優勝は叶わなかったので、丁度いい気晴らしだと思った。
午後5時半。草薙発明研究所。
健太郎は、草薙が指示する通りに、引き戸の戸車を外し、勝って来た戸車と交換した。
「やっぱり、健太郎君は器用だな。助かったよ。煎餅しかないけど、皆で食べて行って。」
そう言うと、草薙はジュースと煎餅を用意した。
午後7時。伝子のマンション。
「おさむ。ひょっとして、競技始まる前、草薙さんは包帯していなかったとか?」
「よく分かったね、父さん。」「お前の解説の仕方から、簡単に推理出来たよ。お前は気がついてた。でも、黙ってた。」
「偉いぞ、おさむ。今夜はかあさんと風呂入ろうか?」「やだ、思春期の息子だよ。」
大文字夫婦は、大笑いした。
―完―
======== この物語はあくまでもフィクションです =========
============== 主な登場人物 ================
物部満百合(まゆり)・・・物部一朗太と栞(しおり)の娘。
久保田健太郎・・・久保田誠とあつこの息子。
大文字おさむ・・・大文字伝子と学の息子。
福本めぐみ・・・福本英二と祥子の娘。
依田悦子・・・依田俊介と慶子の娘。
服部千香乃(ちかの)・・・服部源一郎とコウの娘。
南原未玖(みく)・・・南原龍之介と文子(ふみこ)の娘。
山城みどり・・・山城順と蘭の娘。
愛宕悦司・・・愛宕寛治とみちるの息子。
筒井さつき・・・筒井と新里の娘。
藤井進・・・伝子の仕切り隣の藤井の孫。大学卒業後、サラリーマンをしていたが、警察官になった。巡査部長。
筒井隆昭・・・おさむの母、大文字伝子の同級生で、警視庁テロ対策室からの出向で、EITOで一緒に働いている。
筒井(新里)あやめ・・・警視庁テロ対策室勤務。
==============================
==ミラクル9とは、大文字伝子達の子供達が作った、サークルのことである。==
==EITOとは、Emergency Information Against Terrorism Organizationを指す==
みどりは、男に言った。
「おじさんは、誘拐とか強姦とか殺人とか、どういう罪になるか知ってるの?」
男は一瞬、怯んだが、返答した。
「知ってるよ。でも、お嬢ちゃんに道を尋ねたことで、どういう罪になるのかな?」
「ふうん。建造物侵入って罪は?」「家の中には入っていないだろ?
「家の中には?じゃ、庭には入ったんだよね。塀と家の間も『庭』だよ。」
「入ったって証拠は?お嬢ちゃんが見ただけじゃ証拠にならないよね。警察行こうか。」
「いいよ。困るのは、おじさんだよね。おじさん、普段どんな仕事してるの?サラリーマンじゃないよね。」
「もう、いいから、こっち来い!」
みどりは、ランドセルの横の紐を引っ張った。
大人の男の声で叫び声が出た。
「火事だあ!火事だあ!!」
その家の近所の人達が出てきた。
男が狼狽していると、近所の人達に向かって、みどりが言った。
「この人、痴漢よ。レイプされそうになったの。嫌って言ったら、無理矢理・・・。」と言い、泣き出した。
そこへ、警察官がやって来た。
「どうしました?火事の様子はなさそうだが・・・。」
男が逃げ出そうとしたら、警察官は言った。
「誘拐未遂の現行犯で逮捕する。」警察官は、非常に手錠をかけた。
みどりは、ICレコーダーを、もう1人の警察官に渡した。
警察官達は、後から来た警察官に敬礼して去って行った。
「私は、この地区の担当の藤井進と言います。お騒がせしました。」藤井は、近所の人の視線を浴びながら、敬礼して、みどりと去った。
少し、離れた場所にある、公園。
ミラクル9が待っていた。
「みどり、勇気あるなあ。」と、悦司が言った。
「お芝居、上手かったよ、ウチのお父さんとお母さんにも後で聞かせよう。」と、めぐみが言った。
みどりはICレコーダーで録音する一方、Linenで皆とLive中継し、めぐみは、それを録音していた。
「みど。ありがと。私、私・・・。」と、側に寄って来た、さつきが泣き出した。
さつきは、筒井と新里の娘だった。さつきは、ストーカーらしき男に家を突き止められた、と転校する前に友達になった、みどりに相談した。
男に覗かれていた家は、以前尾行された時にさつきは『まいた』のだが、咄嗟に入った家だった。
さつきも、『住居侵入』していたので、警察官である両親に言いづらかった。
そこで、みどり経由で、ミラクル9が乗り出すことになった。
藤井のスマホが鳴動した。警察無線ではないから、私用だ。
電話の相手は、言った。
「おさむ君に替わってくれ。」藤井がスマホをおさむに差し出した。
「シナリオ書いたのは、おさむか。高遠の息子だけあって、小回りが利くな。あの男は前科3犯。再発しやすいからな、こういうのは。よく『逮捕』した。さつきに言ってくれ。親が警察官だから、といちいち気にして行動しなくていい。本当は早く話してくれれば良かったんだが。実は、君たちの噂を聞いたのか、地元でも『ガールズ8』っていう『少年探偵団』がある。さつきも誘われているらしいが、言い出せないでいるらしい。大いに歓迎するさ。友達は、色んな影響を与えてくれる。大文字を見れば分かるだろ?ずっと仲間を大切にしているのがお前の母親だ。そして、お前の父親だ。さつきに、『夕飯はオムレツ』って言っておいてくれ。」
おさむは、途中から、スピーカーをオンにしていた。
みどりは、さつきの肩を抱いた。
「ミラクル9でなくて残念だけど、ガールズ8で頑張って。」「うん。」
「じゃ、みんな、ご苦労様。僕は任務に戻るよ。」
そう言って、藤井は去って行った。
10人は、オムレツの話をしながら、夕焼けの下を歩いて帰った。
―完―
======== この物語はあくまでもフィクションです =========
============== 主な登場人物 ================
物部満百合(まゆり)・・・物部一朗太と栞(しおり)の娘。
久保田健太郎・・・久保田誠とあつこの息子。
大文字おさむ・・・大文字伝子と学の息子。
福本めぐみ・・・福本英二と祥子の娘。
依田悦子・・・依田俊介と慶子の娘。
服部千香乃(ちかの)・・・服部源一郎とコウの娘。
南原未玖(みく)・・・南原龍之介と文子(ふみこ)の娘。
山城みどり・・・山城順と蘭の娘。
愛宕悦司・・・愛宕寛治とみちるの息子。
筒井さつき・・・筒井と新里の娘。
藤井進・・・伝子の仕切り隣の藤井の孫。大学卒業後、サラリーマンをしていたが、警察官になった。巡査部長。
筒井隆昭・・・おさむの母、大文字伝子の同級生で、警視庁テロ対策室からの出向で、EITOで一緒に働いている。
筒井(新里)あやめ・・・警視庁テロ対策室勤務。
==============================
==ミラクル9とは、大文字伝子達の子供達が作った、サークルのことである。==
==EITOとは、Emergency Information Against Terrorism Organizationを指す==
※【認知】とは、「ある事柄をはっきりと認めること」である。
【認知症】とは、様々な脳の病気により、脳の神経細胞の働きが徐々に低下し、認知機能(記憶、判断力など)が低下して、社会生活に支障をきたした状態を言う。即ち、「認知機能低下症」のことである。
午後6時。小学校校庭。
大文字綾子は、コンパクトを広げて、身分証を見せた。
介護職員達は、「ゲ、桜の代紋!!」と叫んだ。
そのコンパクトには、警察のシンボルマークの桜と地球、そして、鳩が合わさった画が描かれており、「I.N.I」の文字が刻まれていた。
「アイ・エヌ・アイ、International Nursing care Instructor。国際介護指導員のことよ。簡単に言うと、介護警察ね。まだ、世間には『認知』されていないけど。虐待や無謀な行いをした介護施設職員は、法律によって裁かれます。2人以上の証人がいれば逮捕する権限があります。但し、司法権はありませんから、後は警察・検察の仕事。」と、横から久保田あつこ警視正が言った。
「警視正。私が証人になります。確かに、この二人は、ご婦人に暴力を振るい、連れ去ろうとしました。」と、鈴木校長は言った。
「私も証人です。では、連行します。」愛宕警部は、部下の警察官に命じて介護職員達を連行して行った。
遡ること3時間前。午後3時。小学校のプール。
みどりは、プールにたたずむ、老婦人をみかけた。
今日は、プールの授業があったため、フェンスの鍵はかかっていなかった。
警備員は常駐しているが、見咎められなかったのだろうか?
みどりは、ベンチに腰掛け、その老婦人と話し込んだ。
老婦人は、介護施設から逃げ出してきた。
老婦人は、家庭で虐待された挙げ句、重度の介護度ではないにも関わらず、介護施設に入居させられた。
徘徊の事実がないにも関わらず、行動は制限だらけだった。通院していた診療所への通院も、「提携している医療施設や薬局以外は認めない」と閉ざされてしまった。
そして、隙を見て『脱走』した。みどりは、黙って、Linenのトーク画面を開いて、皆に聞かせていた。
やがて、鈴木校長が現れて、みどりと一緒に老婦人の話を聞いた。
そこへ、警備員が報せた、介護施設の職員が現れた。
「乱暴はいけませんよ。」と言う鈴木校長を無視し、「脱走したんです。この人は認知症なんです。」
校庭に止めた介護施設のバンの前で、校長と職員の押し問答が始まった。
1時間後。パトカーがやってきて、マイクロバスがやって来た。
「いいところへ、お巡りさん。」と、介護施設は、連れ去る理由を言い募った。
マイクロバスから降りてきた、白衣の女性が、老婦人に尋ねた。
「あなたの息子さんの名前は?生年月日は?」
老婦人は、すらすらと応えた。
「では、あなたの娘さんの名前は?生年月日は?」
これにも、女性はすらすらと応えた。
「詳しい事は、かかりつけ医師にも診察して頂きますが、あなた方の言う『認知症』ではありませんね。私は、池上と申します。病院を経営しています。」
そう言って、池上医師は名刺を出した。
そして、隣の女性が、バッグから、コンパクトを出して、披露した。
「大文字綾子です。」
現在。小学校校庭。
マイクロバスから、男女が降りて来た。
「私達が間違っていました。訪問介護に切り替えます。母さん、帰ろう、『イエ』に。」
あつこが運転するマイクロバスに、綾子と老婦人親子は乗り込んで、帰って行った。
「ミラクル9には、呆れるね。よく短時間で用意したね。愛宕警部。この悪戯は、大丈夫なのかな?」
スズキ校長の言葉に、愛宕警部は「さあ、何のことですかね?」と、惚けた。
ミラクル9と校長は爆笑した。
―完―